変わってしまった幼馴染
最深部へ向かう道中、キラを交代で背負いながら、一行は静かに進んでいた。ヴェスタとティアが和解し、楽しそうに話しているのが聞こえる。ヴェスタの口から、ローを賞賛する言葉が次々と飛び出すたびに、カイルは眉をひそめた。
カイルとヴェスタは幼馴染で、互いをよく知っていた。ヴェスタは常に前向きで、堂々としたリーダーシップを発揮できる、誰よりも誇り高い人間だった。しかし、ローが彼女の補佐官になって以降、二人の関係は微妙なものになっていた。
(なぜだ…)
カイルは、キラを背負う隊員の肩に手をやり、小声で話しかけた。
「少し休んでくれ。」
隊員と交代し、自身がキラを背負う。カイルはヴェスタに聞こえるように、少し大きめの声で話しかけた。
「ヴェスタ、ティア、大丈夫か?疲れているなら、父上に休憩を進言するが。」
ヴェスタは、カイルの心配そうな声に気づき、微笑んだ。
「私は大丈夫だ。これでも日々鍛錬しているからな。ティアは力も使ったし疲れてない?」
「私も大丈夫です。私よりキラが心配。」
ティアがカイルの背中で眠るキラを見た。
「そうだな。どこかで一度ゆっくり休ませてやれたらいいんだが。」
ヴェスタがティアの気持ちを汲み取って、言葉にしたが、ローはヴェスタを真っ向から否定する。
「いえ、それは良くありません。力が不安定な遺跡の内部では、いつどこで何があるかわかりません。変に止まるより、先を急いで精霊の様子を確認し、一刻も早く遺跡の外に出ることが最善でしょう。」
「そうだな。ローの言うとおりだ。ゼノンも同じ判断だから休憩を取らないんだろう。私の考えが至らなかった。」
ヴェスタは少し傷ついたように微笑んだ。
「いえ、キラ君を心配したヴェスタ様の気持ちはとてもよくわかります。」
「ありがとう、ロー。」
「私はヴェスタ様のお役に立つのが役目、私がそばにいれば大丈夫ですよ。」
「あぁ、頼りにしている。」
二人のやりとりが気に入らないカイルは、ローの言葉に不快感をあらわにし、彼を睨みつけた。
「ヴェスタ、皆キラのことを心配して、同じことを考えている。お前は何も間違っていない。」
カイルのヴェスタへの気遣いをロにしたが、ローは涼しい顔で一蹴してしまった。
「私は事実を述べただけです。」
カイルの怒りに気づいたヴェスタは、慌ててローを庇う。
「カイル、ローは私のために言ってくれているんだ。」
カイルは、ローに言いなりになっているヴェスタに、苛立ちを覚えた。
(ヴェスタはこんな人間じゃなかったはずだ…)
「ヴェスタ…なぜだ…。」
カイルは、ローに信頼を寄せるヴェスタの姿に、怒りともどかしさを感じていた。




