浴みの戸惑いと、優しい笑顔
キラがカイルと温泉に向かった頃、ティアはゼノンの妻、ソフィアに連れられ、屋敷の奥へと案内されていた。ソフィアは優しく微笑みかけると、ティアの硬い表情に気づき、そっと彼女の手を握った。
「大変でしたね。でも、もう安心です。ここは安全な場所ですから、何も心配しなくていいのですよ。」
その柔らかな手と、心からの優しい言葉に触れ、ティアの張り詰めていた緊張の糸が、少しずつほどけていく。ソフィアは、泥や埃で汚れたティアの姿を見て、屋敷のメイドたちに湯浴みの準備と、新しい服を用意するように命じた。
「さあ、お嬢様。まずは汗と泥を洗い流しましょうね。」
メイドの一人が優しく声をかけると、ティアはきょとんとした顔で返した。
「お、お嬢様…?」
「はい。さあ、こちらへどうぞ。」
メイドたちは、戸惑うティアを抱え上げるようにして、湯気の立ち込めるバスルームへと連れて行った。ティアは、これまでの旅で慣れ親しんだ、キラから借りた男の子の服を脱がされることに、恥ずかしさと居心地の悪さを感じていた。
「えっ、あの、自分でできます…!」
慌ててそう言うティアに、メイドたちはニコニコと笑いながら答える。
「あら、ご遠慮なさらないで。私に仕事をさせてくださいね。こんな可愛らしいお嬢様のお世話ができて嬉しいんですから。」
メイドたちは慣れた手つきで、ティアの頭を優しく洗い始めた。泡立てられたシャンプーの香りが鼻腔をくすぐり、初めての感触にティアは身を硬くする。
「う、わ、わわわっ!?」
「まあ、髪が長くて大変ですね。でも、とっても綺麗なお色ですわ。」
メイドたちは、ティアのプラチナブロンドの髪を丁寧に洗いながら褒め称える。
ティアは、くすぐったさと恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、ただされるがままになっていた。その様子を部屋の入り口から見ていたソフィアは、ただただ温かい眼差しで微笑んでいた。
「ふふ、なんとも可愛らしいですわね。」
メイドたちに手伝われ、初めて入る広い湯船に身を沈めると、旅の疲れがじんわりと体から抜けていく。そして、キラから借りた男の子の服ではなく、前を重ね合わせる赤炎島独特のスタイルの、可愛らしいワンピースに着替えたティアは、鏡に映る自分を見て、ほんの少しだけ微笑んだ。




