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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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63 北を目指す前に



 ヒルデ小母さんは王都へ、祖母ちゃんはシュタート領の屋敷へ、ママンはキュプフェルトのオイゲン祖父ちゃんの所へ出かけている。


 その間、俺は地図と睨めっこしていた。


 帝国の進行ルートを検討するためだ。


 大きな町と街道、あと山や川、森が簡単に書かれた地図である。


 因みに帝国側の地図もあるのはさすが辺境伯の一言に尽きる。


 しかし、等高線が入ってないので地形を読み取るなんてこともできないし、どうしようと思ってふと壁際の本棚を見てみると戦史書なんて本が目に入る。


 えっちらおっちら椅子を移動して一番新しいモノを読んでみると十年前の帝国との戦の状況がつぶさに記載されていた。


 両軍の動員人員や参加諸侯、帝国の進軍ルートに戦術まで模式図で書かれて非常に分かり易い。


 俺は夢中になってその戦史書を新しい順から読み耽った。


 気がつくとママン達三人はそれぞれの準備を済ませて帰ってきていた。


 中央のソファーに座り報告と今後の方針を話し合っているみたいだ。


 祖母ちゃんは領内の従士五十人を従軍する方向で動いている。王都には精鋭五人と優秀な若手五人を連れて行き、今後の伝令なども含めて王都で待機。その時に移住者の募集も行うそうだ。


 残り四十人はケルンブルグに待機して、辺境伯軍と行動を共にする。


 ママンはオイゲン祖父ちゃんに会いに行って情報交換を行ってきた。


 軍を通して祖父ちゃんも動きはつかんでいたようだが二個師団と聞いて慌てていたそうだ。


 キュプナー子爵家ではスタンピートの被害が大きすぎて戦どころではないらしい。


 食料の確保に戦々恐々としているそうだ。ママンの食料の売り込みは喜ばれ、すぐにでも持って来て欲しいそうだ。


 俺が明日の出発前にサクッと持っていくことなった。


 ヒルデ小母さんの王都での情報収集の結果、帝国進軍の裏付けがとれたそうだ。


 北派閥と王家、軍部では対応策が話し合われているが、貴族全体としてはどこか他人事のような雰囲気が蔓延しているそうだ。


 進行ルートとして一番有力なのが大軍で要塞都市を包囲殲滅し直接王都を目指すルートが有力なようだ。


 今現在迎撃部隊の編成をどうするかで勢力争いが激化しているそうだ。


 有事でも権力争いとはさすがにお貴族様と言ったところか…


 ◇◇◇


 ケルンブルグ出発を後らせているのはママンの妹のクリスティーネ叔母さん夫妻を待っているからだそうだ。


「折角ティーネにもジークを会わせることが出来ると思ったんだけど、王都までお預けね。」


 ノーラ姉さんが気楽に言ってくれる。


「ノーラ姉さんも一緒に来る?」


 嫌味半分で誘ってみる。


「あぁ~面白そうだなぁ~普通に王都まで行っても暇なだけだからね。私も行く。行く。」


「嫌味で言ったんだけど…」


「あっはっはっは。嫌味にもなってないよ。ジークに貴族の社交はまだ無理だなぁ~言質は取ったから明日出発なぁ~母さんと姉さんにも言って置くから安心していいよ。さ~て楽しくなりそうだ。」


 何処まで本気なのか分らないけれど、現役の近衛騎士がいるのは心強い。


「ノーラ姉さんありがと。」


 御礼を言ったらノーラ姉さんは照れてそっぽを向いてしまった。


 意外とかわいいんだよなぁ~


 ◇◇◇


 俺はモース達と、明日一路北の国境を目指して出発する。


 国境近くの街で東に向かいノルトシュタット要塞都市周辺の地形を調査する。


 当然、帝国内には入らないが、補給路を潰せないか?現場の地形を観察してマーキングしておきたい。


 モース達、五人には正午前に呼び出して話をつけた。


「へいへい、分っていますよ。ジークの足ですね。畏まりました。ただ、戦に参加するのは勘弁して下さい。俺たちゃ、傭兵じゃ無くあくまで冒険者ですから…」


「僕も戦は嫌だよぉ~人殺しなんて滅相もない。」


「でも、今からノルトシュタットまで行くと新年に王都に着きませんぜ。」


「それは、大丈夫。僕が居れば転移で王都まですぐ着くから。」


 絶句するモース達、本当に言葉が出ないみたいだ。


 ちなみに、代表でモースが話をしているが冒険者パーティメンバー全員この場所にいる。


 やっと、再起動したのはエリザで質問してきた。


「転移魔法って一人で転移するんじゃないの?それにノルトシュタットまでの距離だと途轍もない魔力を消費すると思うんだけど大丈夫なの?」


 うんうん、気にしている事は分るのでママン達にした説明と同じことを言う。


「収納魔法に必要な魔力だけで可?」


 ピルネが極端に端折って聞いてきた。うん、理解してくれたみたいだ。


「そうだよ。ほぼ収納魔法を使う時の魔力に少しプラスした位かなぁ」


 そう俺が答えると、不満げにピルネが言う。


「ジークの少しはあてにならない!」


 エリザも頷いている。


 心外だけど納得する部分もあるので黙っている。


 ピルネがなんだかウズウズしている


「空間魔法と転移魔法の本見る。」


 聞いてみるとコクン、コクンと頷くのでその場で写本を渡しておいた。


「詳しくはママンとヒルデ小母さんが説明してくれると思うから準備をお願いします。転移門を馬が通れたら、馬で進めるだけ進んで転移門を通ってここまで帰り、宿泊と馬替えをして進んだとこまで転移する、を数日繰り返します。それをヒルデ小母さん達が出発するまで続けようと思っています。手荷物以外は収納できますので出発前に預けてください。よろしくお願いします。」


「分かった。大きな町や国境周辺は情報収集で宿に泊まった方がいいかもしれないが、臨機応変に話し合おうか?それじゃあ準備をして夕方にまた来ますよ。」


 そう言ってモース達は引き上げた。


 ◇◇◇


 ママン達が情報収集から帰ってきて、今現在モース達と今回の依頼について話している。


 俺は少し離れたところで、戦史書と言う帝国進行及び王国進行の記録を読み込んでいる。


 帝国が進行して来るルートは三つある。


 一、海路と西街道を使って王国西側に進行するルート。


 二、帝都から国境まで平野部を西南に進み、そこからノルトシュタットを抜いて王都に真直ぐ南進するルート。


 三、帝都を南進し教国国境の山脈沿いを進み王国東部から進行するルート。


 一は帝都から王都まで最も大回りで直接王都を攻めるには最も効率が悪い。


 逆に三は帝都から王都まで最短で攻め込めるが教国国境を掠める為、教国との間にも緊張状態を生み、さらに山岳地帯が多いため大軍の進行には不向きで迎撃され易い。


 必然と二の平野部を通り、ノルトシュタットを抜くルートに限定される。


 平野部と言っても国境沿いで開発されていない深い森も多く魔物の領域もあり、下手に森を抜けようとして魔物による損害が大きくなって退却したこともあったようだ。


 ノルトシュタットを抜かずに迂回しようとして、王都の第一師団と中間地点を守る第二師団に挟撃されて大敗北をしたこともある。


 色々試したようだが最近百年のトレンドはノルトシュタット包囲戦が主流になっている。


 戦場は間違いなくノルトシュタット周辺になるだろうと思われた。


 進行するにしても魔物対策が必要になるので並大抵の労力ではないはずだ。


 とにかく、ノルトシュタット周辺の地形を見てから判断した方が確実だと思われたが出発までに資料を頭の中に出来るだけ叩き込んで置く。


 何が生死の境界になるかわからない。出来ることは全てやって置くに限る。


 そんなことを考えていると、ママン達の話が終わったようだ。


 俺についてくるメンツは、ノーラ姉さんモース達冒険者五人で調査期間は二十日以内で基本俺が納得するまで付き合ってくれる。


 移動は昼の間移動して、夜には転移門で帰還して馬を替える。


 ママン達は王都までキュプナー子爵領経由で二週間かけて行くそうだ。


 なので、ママン達が辺境伯邸を出発したらオイゲン祖父ちゃんの所に転移して、次にキュプフェルトを出発したら王都に転移する。


 確実に安否と情報が伝わる体制をとることになった。


 ちょっと面倒くさいが大事な事なのでしたがった。


 準備も打ち合わせも終わったので夕食を食べて寝ることにする。


 ママンがいない旅は始めてなので少し不安もあるが、知らない土地を見るのも、馬車に揺られて退屈するよりも自由でいいかもしれない。


 そんなことを考えながら就寝するのだった。










読んでくださってありがとうございます。

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