62 あぁ~また…
「嫌ですよ。人死には…殺すのも殺されるのも真っ平です。と言っても女王陛下辺りはそんなことお構いなしでしょうね。仕方ありません。策を練るにも現場が分からないとどうしようもありません。時間もないですし、馬で北の要塞を見てきますよ。」
俺も嫌だが対策を練る必要はある。
「「そんなこと許せるわけがないでしょう!」」
祖母ちゃんとママンがハモった。
「そうして貰えると助かるわ。」
ヒルデ小母さんは、僕の意見に賛成のようだ。
「早速モース達に準備をお願いしてもらえますか?」
祖母ちゃんとママンを無視すると、
「「ちょっと、あなた達話を聞いているの?」」
すごい剣幕で怒ってきた。
「祖母ちゃん、ママン、今回のスタンピートの手柄でうちは王国中の貴族からやっかみを受けていると考えた方がいいんだよ。いつ無理難題が降りかかってくるかわからない。こっそり準備しといたほうがいいと思う。そしてそれが出来るのは赤ん坊の俺だけなの。」
感情面ではわかるけど結局俺が蒔いた種だ。自分で刈るしかない。
「そうは言っても…様子見にはオットーとかに行かせればどう?」
祖母ちゃんが妥協案を投げかける。でも、それは無理だよ。
「オットーで策が練れますか?それに秘密にしていることがあるんですが仕方ないですね。ちょと待ってもらえますか?」
そして、秘密にしていたジョーカーのカードを切ることにした。
転移門をシュタート領の屋敷に繋いだのだ。
いきなり現れた門に驚いている大人たちを尻目に声を掛けて転移門をくぐる。
「魔力はそんなにいらないんですけど、直ぐに門を閉めますから早くついて来てください。」
恐る恐るついてきた三人は開いた口が塞がらない。言葉も出ないようだ。
転移先がシュタート領の屋敷なのを確認して、すぐさま相談していた部屋に戻り転移門を閉めた。
「「「ジーク。今のまさか…」」」
三人とも声をそろえて聞いてきた。
「はい、シュタート領の屋敷との間に転移門を開きました。大人数での移動だとと危険が少ないですからね。」
「「ちょっと、ジークいつの間に伝説の魔法を使えるようになっていたの?聞いてないわよ!」」
祖母ちゃんとママンが興奮している。
「モース達が来てくれたおかげで開墾するのに思いのほか余裕が出来まして…その時に王都で写本した魔導書に、アレンジを加えました。もちろん言ったら怒られるので今まで誰にも言わずに隠していましたよ。しかし、こと此処に至っては、戦略的優位を無駄にする訳にはいきませんので。三人にお話しすることにしたんですがいけませんでしたか?」
「しれっとしてるわね。悪びれもせずにこの言葉が出てくるところがジークらしいと言えばらしいのだけど…」
祖母ちゃんが俺のことを酷評する。
ちょっとショックだが気にしない様にあえて無視して言葉を続けた。
「王都にも行けますよ。屋敷の座標は分りますので。しかし僕が行ったことがない所は座標が分らないので繋ぐことはできません。その為に、北の要塞と戦場になりそうな場所や、伏兵に向いていそうな場所、相手の兵糧の集積場所など、座標と転移できる所を確保しときたいんですよ。」
「はぁ~参ったわ!もうお手上げよ!」
ママンが万歳した。
「ジークに常識は不要だわね。もうあきらめた方がよさそうだわ。」
祖母ちゃんに匙を投げられた。
「重要な局面での判断力もありますし、ジークの判断に任せましょう。それが一番良さそうに思います。本人も危険性は十分理解してそうですし…」
ヒルデ小母さんが何とかフォローをしようとしてくれている。
顔は引き攣っているけど…
あぁ~また呆れられたorz
普通の赤ん坊に戻りたい。グスン。
愚痴っても仕方ないので、今後のことを確認する。
「それでは、僕は北へ向かうことにするけど準備はどうします?祖母ちゃんとママンはシュタート領にいったん帰りたいでしょう?ヒルデ小母さんは王都で情報取集したいんじゃないですか?ついでにキュプフェルトで穀物の現金化もしといた方がいいと思うけど…」
「どれくらい、魔力使うんだい?」
祖母ちゃんが転移魔法発動の魔力量を聞いてきた。
「魔力は殆ど使わないよ。門を繋げるだけだからね。普通に人を転移さすのは距離と質量によってかなり魔力を使うけど、門を繋げるのは収納魔法の延長だと考えて貰えれば分り易いかも、部屋の二か所に出入口を作って自分で出入りして貰っているようなものだからね。繋ぎっぱなしで自由に行き来して貰ってもいいんだけど、どうする?」
心配ないよと言ったつもりが三人は呆れた顔をしている。
それでも祖母ちゃんが何とか言葉を続けてくれた。
「じゃあ、まず、王都の屋敷に繋いでくれるかい?セバスに指示を出してヒルデが動きやすいように段取りをつけるよ。次にシュタート領の屋敷だね。従士に指示を出すから二か所を繋ぎっぱなしってできるのかい?」
「できるよ。じゃあこの部屋暫く誰も入れない様にして貰える。さすがにヒルデ小母さん以外には知られたくないからね。」
ヒルデ小母さんが了承してくれて自分の予定を告げてくれる。
「分ったわ。私は王都の執事に手紙を書いて、昼過ぎにミュラー邸に迎えに来させるから夕食前まで時間を貰えるかしら?」
ヒルデ小母さんにコクンと頷いて、祖母ちゃんとママンに予定を聞く。
「ママンと祖母ちゃん役割分担どうする?」
「シュタート領には私が行くよ。マリーはセバスに連絡を取って、時間があればキュプフェルトに行っておくれ。」
「わかったわ。母さん。それじゃ先にシュタート領に繋いでくれる?」
「はーい。両方一遍に繋ぐよ。しばらく繋ぎっぱなしにしとくから安心してね。」
そう言って王都とシュタート領の二か所同時に門を繋げた。
ヒルデ小母さんが呆れた顔でつぶやいた。
「ジークは何でもアリね。」
うん、自分でもそう思うよ。チートすぎて…
『でも、ままならないこともいっぱいあるんだよ。たとえばビアンカ姉の剣の相手とか…』
読んでくださってありがとうございます。




