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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
6章 王都に行くのに戦の準備?
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61 いきなり過ぎですよ!



 辺境伯邸で一泊し、次の日に出発するのかと思っていたら、ある人も一緒に王都に行くのだという。


 朝の鍛錬を終えてママンのお乳を飲んで朝ご飯を食べたときにその話を聞いた。


 なんかいつもの流れでミュラー家の訓練が中庭で始まり、型稽古をしているとヒルデ小母さんとティーナも加わった。イザベルはさすがに侍女と一緒に見学している。


 うちほど武闘派ではないが、『いざとゆう時のために訓練はしている。』そう云う動きだった。


 今日もビアンカ姉の猛攻をしのぎっ切って、弓の練習をしているとヒルデ小母さんに来客を告げるお知らせが来た。


 客室で応対したヒルデ小母さんが一時間後、リビングでくつろいでいたミュラー家の所に来て祖母ちゃんとママンに声をかける。


 来客は西派閥でも帝国と国境を接する子爵家だったらしい。別室で相談事をするみたいだ。


 俺は聞き耳を立てながら召喚魔法の本を読んでいたのだが、後ろからママンに抱きかかえられて、驚く暇もなく強制連行された。


 別室に入り三人がソファーに腰を掛けたとたんヒルデ小母さんが本題を話し始める。


「帝国領と国境を接するメンフィス子爵が王都に向かう前に挨拶に来てくれたんだけど、子爵の話では帝国の動きがきな臭いそうよ。」


 ママンは驚いているようだが祖母ちゃんは平常運転で質問した。


「どんな根拠があるんだい?穀物の価格と飼葉の価格、あと鉄や武器防具の類が値上がりしているのかい?」


「さすが小母様ね。その通りよ。その辺までは内もつかんでいたんだけど兵員の移動もあるみたい。ノイントシュタット要塞を攻撃するのでしょう。帝国中央から二個師団、四万人が動いているらしいわ。」


 祖母ちゃんは別段焦った様子もなく感想を述べる。


「かなりの大軍だね。進軍してくるとしたら年明け早々だね。さすがは帝国、好機は見逃さないってことだわね。」


「兵力五千位で強襲偵察辺りを行ってくるかと踏んでいたんだったけど、甘かったみたい。これから本格的に戦準備を始めるわ。シュタート家も領地に連絡を入れておいた方がいいんじゃなくて?」


 ヒルデ小母さんは自分の算段が甘かったことに顔を顰めた。


 それでも、うちを気遣ってくれるところはさすがだ。


「ヒルデ先輩ありがとうございます。そうさせていただきます。」


「国境守備隊と要塞の第三師団は動いているでしょうけど第二師団の動きが心配ね。スタンピートで兵団の半分を派遣していたから、連戦になるし補給も間に合うかどうか?」


 今後のことを心配するヒルデ小母さん。


「その辺は私たちが考える事じゃないよ。抜け目のない、いたずら娘と北の爺が手を打っているわよ!」


 祖母ちゃんがぴしゃりと言い切った。


「問題は南ね!」


 それでも心配そうにママンが呟く。


「怪しいわねぇ~」


 ヒルデ小母さんも心配そうにつぶやく。


「帝国と繋がっているのかしら?」


 ママンがしっかりと言葉にしてヒルデ小母さんと祖母ちゃんの顔を交互に見た。


「どう思うジーク?」


 ヒルデ小母さんがずっと黙秘を貫いていた俺にいきなり振る。


「なんで僕に振るんですか?」


「あなたの考えに興味があってね。」


「ところで父さんは呼ばなくていいのですか?」


「カールにはちょっとね。下手するとこのまま北に行きかねないし、余り対策には向いてないのよ。前線で活躍するタイプ?」


「それに明日にでもローデリヒに合流して魔物退治をするみたいよ。剣の腕を上げたいみたい。」


「どの途この後に話すことになるんだけど、あの子は戦術家だからねぇ~戦略には興味ないのよ。ふー」


 ヒルデ小母さん、ママン、祖母ちゃんの順に理由をあげる。単純に脳筋だからとは言わない訳ね。


「解りました。それで僕の意見ですが…ところでガイエス辺境伯領でスタンピートが起こったことの本質はなんだと思いますか?」


「帝国を利するため?」


 ママンが問いかける。


「自領に多大な犠牲を出す必要はないわね。」


 領主としての正論を祖母ちゃんが呟く。


「それじゃあなんなの?」


 ヒルデ小母さんが答えを急かしてきた。


「バカ息子をリーッゼロッテ王女の王配にするための功績づくりです。狙いは王室の専横でしょう。ならば北の力を削ぐために帝国が動きやすい様に仕向けただけでしょう。というよりも、共和国に載せられたのでしょうね。」


「帝国と共和国が繋がっているの?」


 ママンが呆れたように聞いてきた。


「繋がっているでしょうね。共和国は商人の国なんですよね?武器や食料を買ってくれるお得意さんなのでしょう?さらに戦が起きれば王国とも大きな商談が始まる。両方共を潰さないように富を吸い上げるのが目的でしょう。」


「帝国と共和国は接してないけど貿易が出来るの?」


 ヒルデ小母さんが小首を傾げながら聞いてきた。


「教国があるじゃないですか?お布施だけで神殿は維持できますか?さらに教国は盆地で鉱物資源しかないんですよね?その鉱物資源を使ってモノを作っているのは?作ったものを買っているのは?私たちが知らないところで商人は動いているものですよ!」


「ジークは見てきたように話すわね。」


 祖母ちゃんがぼやく。


「メリザとニーナが溢していましたよ。『教会は何でもお布施で動いている。お布施が少ない貧乏人は治療も碌に行ってもらえない。』教会内部の腐敗も深刻そうですからね。教国の上層部にも問題ありと見といたほうがいいでしょう。」


「ふぅ~ジークは何でもお見通しね。たぶんあなたが考えている通りよ。だから打つ手がないの。まず帝国に最小限の犠牲で勝つことが大事なんだけどそれが難しのよね。」


 ヒルデ小母さんが、得心の言った顔で俺の意見を採用してくれたみたいだ。しかし難問は続くと、しかめっ面だ。


「僕に戦へ行けなんて言わないでしょうね?嫌ですよ。人死には…殺すのも殺されるのも真っ平です。」


 念のため釘を刺しておく。


「そうよ。さすがにジークに戦は早すぎるわよ!」


 ママンが声を荒げて同意してくれた。他の二人も同意見みたいでコクコクと頷く。なので安心して次の言葉を紡ぐ。


「と言っても女王陛下辺りはそんなことお構いなしでしょうね。仕方ありません。策を練るにも現場が分からないとどうしようもありません。馬で北の要塞を見てきますよ。」


 折角庇ってくれたママンには、悪いけど為政者と言う者は自己中だ。対策を練るに越したことはない。


『また、厄介ごとですね。人生ままなりません。』


読んでくださってありがとうございます。

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