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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
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23 買い物(武器屋編)

 

【カール視点】


 武器屋に入るとずらりと片手剣が並んでいた。


 この国では兵士や冒険者は片手剣を両手で持つか、右手に片手剣、左手に盾というのが一般的だ。戦場へ行くと槍を使う者がほとんどだが…


 売れ筋の品は店の前に置いておくのだろう。


 その隣には、皮鎧や籠手等の防具類も陳列されている。


 右へ進むと武器、左へ進むと防具という風に陳列されているみたいだ。


 店の隅の樽の中には、中古品だろう安い武器が雑多に掘り込まれており、駆け出しの冒険者はこの中から状態の良いものを選んでいく。


 ユリウスは興味深そうにその樽を見つめ剣を取り出そうと柄を握るが重くて取り出せない様子だ。


 なんだか微笑ましい。もう少し大きくなれば俺が選んだ質のいいものを使わせてやるから我慢しろ。声に出さないが心の中で呟いた。


 短剣やショートソード、斧やハンマーが並んだ先に槍と両手剣が陳列されている。


 俺の目当てはもちろん両手剣だ。


 先のレッドグリズリーとの戦い。初撃で奴の右腕を切り落とせなかったのはショックだった。


 あそこで右腕を叩き落せていれば余計な傷を負うこともなく楽に討伐できたいたものを…悔しさが隠せない。


 魔力で強化することを覚えたので魔鋼かミスリルあたりのものであれば…


 そう思って武器屋に来たのだが中々掘り出し物はないな。


 そう思っていると店主が声をかけてきた。


「両手剣をお探しですか?気に入ったものはございましたか?」


「うむ。ここにはないな。」


「そうですか。よろしければ奥からお持ちしますが…」


「大きさはこの程度のもので魔鋼製があれば…」


 背中の大剣を指して店主に注文を付ける。


 一度店の奥に消えて行った店主が二振りの大剣を抱えて戻ってきた。


 包んでいる布を取ってみると一つはミスリル製で装飾も煌びやか、見た目も美しく光り輝き、見る者を魅了するようなすばらしい両手剣だった。


 軽く握ってみると両手剣とは思えない軽さで片手でも振り回せそうだ。力ではなく速さで斬る剣だな。


 もう一つの布を取ってみると武骨で何の飾りっ気もない大剣だが、魔鋼製でかなりの業物だ。握るとずっしりとした重さが手に伝わり心地いい。


「店主、剣を振れるところはないか?」


「裏手にございます。」と言って裏庭に案内された。


 剣を構え一振りする。素晴らしい。重さといい、バランスといい、誂えた様にぴったりとくる。


「あの立木を試し切りに使って頂いて結構です。」


 店主の言葉に頷いて立木の前に行き魔力を通して袈裟切りに切りつける。


 何の抵抗もなく剣が振り下ろされ、斬撃が飛び後ろの岩をガシュッと抉ってしまった。


 その後立ち木が切断面もきれいなまま倒れてゆく。


「父上凄いのです。」「パパかっこいいの。」後ろで子供達のはしゃぐ声が聞こえた。


 店主も目を見開いて驚いている。


「いくらだ?」


「金貨五十枚です。」


「もう少し安くならんのか?」


「では、四十五枚で」


「帰る。」


「四十二枚で何とかご勘弁を」


「四十枚だ!後柄に皮を巻いてもう少し太くしてくれ!」


「それでは赤字です。ご勘弁を…」


「いや無理だ。この剣は俺のことが気に入っている。あきらめろ。」殺し文句を言って決まったなと店主を見る。


「分りました。」と店主は俯きながらニヤリと笑った。


「ん?」もしやと思った瞬間、ユリウスが刃引きの短剣をビアンカは木剣を持ってこちらを窺っている


「二人ともこっちに来て、それを持て構えて見なさい。」


「「はい」」


 ユリウスはたったったと、ビアンカはトテトテトテと走ってきて言われた通り構える。


「振ってみなさい。」


「「えい!やっ!」」


 いつもの型を披露する二人だが二人とも武器に振り回されている。


 それでも必死で頑張る二人がいじらしく。


「店主あれもサービスしてくれ。」


「仕方ありませんね。今後ともご贔屓にお願いしますよ。」


 結局金貨四十枚を支払って俺のヘソクリが全て無くなってしまった。


「父上ありがとうございます。」「ぱぱ、ありがとなの。」


 嬉しそうな二人の笑顔を見るだけでまあいいかと思うことが出来た。


 ◇◇◇


【ジーク視点】


 本屋で買ったのは魔法、錬金術、薬学、スキルの入門書と初級書八冊と珍しい魔法が載った魔導書、魔術の術式集の十冊だった。


 魔法の入門書、初級書は家にも有るらしいのだが一刻も早く俺に理解させるために買うことにしたらしい。


 錬金術と薬学、スキルの本はリーゼ姉が抱きしめており、魔導書と術式集はママンが抱きしめていた。俺はいつものベビー籠だ。


 次に武器屋の前に行きしばらく待っていると親子三人が布に包まれた細長い物を抱きかかえて馬車の中に入ってきた。


 父さんは新しく剣を、ユリウス兄は刃引きの短剣を、ビアンカ姉は木剣を買ったらしい。


 五人とも買ったものを大事そうに抱えているところがなんだか微笑ましい。


 ギルドによって王都までの護衛を確認する。


 見つかったらしく、明日にも出発することになった。


 王都までの準備品を買って、最後に昨日お願いした木工所にリバーシを取りに行った。


 盤はきれいな白木をきちんと鉋掛けされたつるんとした表面に八×八の六十四の升目が彫り込まれ、掘り込みに黒い塗料が塗り込まれて見た目も美しい。


 石の方もきれいに角を鑢掛けし、両面を白と黒に塗り分けた持った感触も気持ちの良い出来である。


 さらに石を入れて置く用に木箱二個も作ってくれていた。


 非常に満足のいくできなのだがお金がいくら掛かったのかは聞けなかった。


 みんな興味津々だったがそれぞれ大事なものを抱えていたのですんなり宿に帰ることになった。


 ◇◇◇


 宿に帰りつくと爛々と目を輝かせたメリザとニーナが駆け寄ってきて、ママンと俺はすぐ厨房に連れて行かれた。


 湯せんに掛けられた鍋の中には飴色になった糖蜜が入っていた。


 もう少し煮詰めたいが焦げるのが怖いので小壷に移すことにする。小壷は昼過ぎにメリザがちょうどいい大きさの物を買ってきておりヘラでしっかり移しきった。


 どうしても鍋の表面に残るのでパンにつけることを提案する。すぐパンを持ってきて拭ってきれいに食べてしまった。


 いつの間にか姉兄に従士もやってきて、みんなで幸せそうに顔をほころばせて食べているのを見ると俺も食べたくなったのだがまだ駄目と止められた。


 従士たちは帰るときに甜菜を買えるだけ買って帰って奥様方に伝授すると言い始める始末だ。


 一応煮出した後の搾りかすは家畜の餌になると言うとぜひ栽培したいと言っていた。


 これは村で普及するのも早いかなとほくそ笑むのだった。


 ◇◇◇


 夕食まで少し時間があったのでリバーシの説明をした。


 まず、ママンとメリザに説明し対戦して貰った。あまりにも白熱し、二戦目を続けようとする。


 盤が一つしかないので次はリーゼ姉とユリウス兄、次に父さんとオットー、次に従士と順番を決めてやってもらう。


 やはり大人の方が嵌っていた。「村に帰って作って良いですか?」と従士達に聞かれたのでOKを出しておいた。


 ママンに王都で商人にアイデアを売れないかと言ったら驚いていた。


 その辺のことは追々馬車の中で相談することになり、同行する冒険者にアイデアを盗まれない様にと言ったら「大丈夫だ」と教えてくれた。


 冒険者には守秘義務があるらしくランクを上げるのにも信用が大事なのだとか、強くても顧客の利益を損ねたとなるとかなりなペナルティになるそうだ。


 あと、神殿に新しい物を納めるとしばらくの間(一~三年位)真似て作ることが出来なくなるそうだ。特許権を保護するような魔法があるらしい。


 王都に行ったら早速リバーシと糖蜜は神殿に奉納することになった。


 食事を終え本日の余にも濃い過ぎる予定が終わりほっとしていると、ママンに辺境伯での行動をくどくどお説教された。


 明日は王都に向けて出発するので、馬車の中で本でも読んで常識を身につけるようにと釘をさされた。


 こんなことなら領内に祖母ちゃんやメリザと一緒に残っていればよかったと思ったのだが、その時は家族と魔物の遭遇戦で…


 考えるのも嫌なので『まーいっか』と納得するのだった。


『結局、人生はままならないのだ。』


読んでくださってありがとうございます。

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