22 買い物(本屋編)
不定期ですが少しずつ書いていきます。
よろしくお願いします。
辺境伯邸を出て馬車に乗る。
父さん、リーゼ姉、ユリウス兄、ビアンカ姉は豪華な昼食の話に夢中だ。
「分厚いお肉のステーキ美味しかったの!」ビアンカ姉が涎を垂らして叫ぶと、
「うん、美味しかった!何の肉だろう?こないだ食べた猪より脂身が少なく、引き締まった赤み肉に野趣あふれる肉汁が滴り極上の味わいだったね。」ユリウス兄が頷きながら何処の芸人さん?と思うくらいの食レポを披露してくれる。
「多分レッドカリブーの肉じゃないかな?鹿肉だから引き締まった印象があるね。赤ワインに合うんだよね。」父さんが思い当たる魔物の種類をあげて思い出しながら舌なめずりをすると。
「また食べたいの!」ビアンカ姉が純粋な願望をまた叫んだ。
「私は白身魚のムニエルが美味しかったですわ。」リーゼ姉も参戦する。
「海が近いと言っても冷やして急いで運んでこないとあの美味しさは味わえないね!」父さんが白身魚の貴重性を主張するのだが、
「パンも白くて柔らかいの!」ビアンカ姉の興味は主食のパンに移ってしまった。
「小麦のパンだよ。内でも作れるけど贅沢品だからねぇ。」父さんは苦笑いしながらグルメ番組の解説者の様に一々解説して皆の尊敬の目を集めている。
「さすが辺境伯ですわ!」リーゼ姉が辺境伯のすごさを実感したみたいだが、
「僕が領地を発展させて毎日食べられる様にして見せるさ。」ユリウス兄はものすごい上昇志向だった。
そんな無邪気な話で盛り上がっている横で、僕とママンはコソコソと聞かれちゃまずい話をする。
ママン曰く。
「ジークには、少し常識を学んで欲しいわ!」
うん、確かに魔物の一件以来やり過ぎた部分はあるんだけど…。
ママンは、特に辺境伯邸で最後にやらかしたことをかなり心配していた。
帰る間際に俺がやったことが従士や騎士にばれていないか、こっそり辺境伯に確認してくれたほどだ。
「あのね、ジーク。ジークがやったことは辺境伯家に対する攻撃になるのよ。流石に男爵家一行を暗殺することはないでしょうけど、騎士長は完全に捕縛するつもりだったわね。」
従士や騎士たちはママンがやったと思い、慌てて食堂を取り囲みいつでも取り押さえる準備をしていたと笑って辺境伯に言われたらしい。
「子供の悪戯にしてもちょっと度が過ぎるわね。家臣たちが『男爵家を暗殺しましょう。』とか、『捕縛しましょう。』とか言うのを抑えるのに苦労したわ。ふふふ。まさかこんなことまでできるなんて…しかし生まれて半年の赤ん坊なら常識を知らないのも当たり前かしら…やれやれマリーも色々と教育するのが大変だわね。」
大きく溜め息を吐くしぐさをして話を続ける。
「今回のことは気にすることないわよ。家臣には『私がいじめたからマリーが意趣返しの悪戯をした。』ってことで言い含めて置いたわ。家臣達も私達が仲いいのは知っているから納得したでしょう。でーも!ジークの教育だけはしっかり頼むわね。」
辺境伯の顔真似、声真似、仕草まで真似てして事細かに教えてくれた。ママン。意外に芸達者である。
ぷんぷん怒りながら話してくれたのだが面白しぎるので我慢するのが大変だった。
色々な意味で『ごめんなさい』
◇◇◇
午後は馬車で本屋まで行くことになっている。御者はオットーだ。
「オットーも朝早くから大変だよね。」ギルドで固まっていた事を思い出しながら俺が呟くと。
「情報収取も仕事だからね。」ママンが言った。
なるほど使用人として待っている間も出先の情報収集をしいてるいのか?本当に大変だ。案外うちはブラックなのかもしれないと思っていると、
「まあ、役得もあるのよ。待っている間、相手も情報収集したいから接待してくれるのよね。ケルナー辺境伯とはかなり懇意にしているから、家臣同士も仲が良くないと困るし、結構待遇いいみたいよ。」
なるほど、馬車に乗るときオットーの機嫌がよかった意味が分った。
内がブラックじゃないのを聞いてちょっと安心した。
◇◇◇
馬車が止まったので降りる順番待ちをしていたら馬車の扉がしまった。
父さんとユリウス兄、ビアンカ姉は下りて行ったのに…
「???」コテンと首をかしげてママンを見ると
「あぁ~武器屋で皆降りて行ったの。本屋は退屈なのですって…」
「なるほど!」ぽんと両手を叩いて、つい頷いたが『それでいいのか?ミュラー家。』と思いなおした。しかしそれでいいらしい。
長女は家督を継いで領地経営や文官仕事をこなすことが多い。
しかし、男子や長女以外の女子は完全に実力主義なので戦や魔物討伐で手柄を上げやすい武官寄りになってしまう。
個人によって適正は異なるもののやはり男は脳筋まっしぐらだそうだ。
女系継承の弊害を見たような気がしたのだが、政策で功績を上げれば良いのに…と云う疑問も浮かんでくる。
成長していけば色々なことも解ってくるだろうと棚上げにすることにした。
そうこうしているうちに本屋の前に到着したらしく馬車が止まる。
なんだか珍しくリーゼ姉がソワソワしている。今にも飛び降りそうな勢いだ。
オットーが扉をあけてくれると、リーゼ姉は真っ先に降りて見えなくなってしまった。
本屋はバサーがあった東の大通りの反対側に位置する、西の大通り沿いにある大きな店だ。
西の通りは高級店が多く客層も富裕層みたいで、みんな着飾っている。村人や村娘の様な服を着た人はいなかった。
屋台なんかもなく、お洒落な洋服店や貴金属店、大きな商会が軒をならべている。
行ったことはないが東京の銀座のような感じなのだろう。
『やっぱりケルンブルグは都会なんだなぁ。』と実感する。
店の中に入ると本屋と言うより文具店?いや雑貨屋の方がしっくりするという感じだった。
ペンやインク、羊皮紙や装丁に使いそうな工具。筆や顔料、油に訳解らない道具etc
その中の奥の方に貴重品を扱うように本が置いてあった。
やはり本はかなり貴重で銀貨十枚以上は当たり前。金貨数百枚することもざらであるらしい。
今回探しに来たのは錬金術と薬学の入門書らしい。
後は魔術書の掘り出し物やユリウス兄やビアンカ姉の喰いつきがいい騎士物語とかも候補であるが、どの途王都に行くので王都で買った方が安くていいものが手に入るそうだ。
但し、入門書や初級書は領主によっては補助を出して流通させる街もあるので装丁などの質は落ちるが安くていいものが手に入ることがあるらしい。
そしてここケルンブルグはかなり書籍の流通には力を入れているらしく王都の半値で手に入る物もあるそうだ。
『さすが辺境伯!』俺の中で辺境伯の株価がストップ高である。
ということで家の書斎にある魔法入門などは買わないで書斎にない錬金術と薬学の入門書が購入されることになっている。どちらも銀貨五枚らしい。
リーゼ姉はかなり本を読んでいるらしく。魔法も初級まで進んでいるそうだ。
洗礼式も終わっているために、貴族としての振る舞いや行儀見習いが多くなり、さらに歴史や地理、算術、農業などの領地経営に必要なことも勉強しているので色々な意味で一杯一杯なのだそうだ。
それでも、弟妹の面倒をよく見てくれるリーゼ姉は俺の中では『マジ天使』なのである。
閑話休題
真っ先に姿を消したリーゼ姉は、購入するだろう二冊の本をとり、熱心に目を通している。
二冊の本にさっと目を通すと「もう二度とこの本は離しません!」というように胸元にしっかり抱え、キラキラした目で他の本を物色し始めた。
「お母様、他に気に入った本があったら買ってもよろしいの?できれば初級書も一緒に買ってしまっては如何かしら? 」
その姿をニヤニヤと見つめるママン。
「あらあら。リーゼったら。一緒に初級書まで買ってしまいましょうか?スキルの本は蔵書にあったかしら?この際だから一緒に買ってもいいんじゃなくて…うふふ」ママンがそう答えると、
「…また蔵書が増えるのですわね!ああー幸せ!」恍惚と呟くリーゼ姉が少し怖かった。
いつの間にか後ろに居たオットーに俺を預けると興味のある魔導書を手に取り確認し始めるママン。
『うん、同じ遺伝子だ。』大きさは違う者の同じ容姿で、同じ動作で本を物色する二人を見て思わず呟きそうになる。
前世日本の大型書店に二人を連れて行ったらどんな行動をとるのか想像するだけで楽しかった。
ラノベで大好きだった物語の、本好きの女の子を真似て本作りでもした方がいいのかな?と考えてしまったくらいだ。
考えているとき化学式や反応式を書くのにも紙がないと不便なことに気付き植物紙開発の優先度を上げることにした。
『あーでもホントにこの二人本好きなんだなー』とニマニマした顔でオットーと二人で見守るのだった。
読んでくださってありがとうございます。
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