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おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
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21 ケルナー辺境伯2

 


 顔面蒼白なんだけどにやけているママン。珍しくフリーズし掛けている。


 ママンを見てしかたなく俺は口を開いた。


「ママン辺境伯さまは一種の化け物!魔力量も多いけど、魔力感知が異常にすごい。多分心の声が何となく聞こえてるんじゃないかな?隠し事はよほどの人じゃないと出来ないよ!僕はもう降参!」


 ママンに小声で話しかける。


 そのあと辺境伯に体を向け一礼して話しかけた。


「初めましてケルナー辺境伯。ミュラー家次男のジークフリードと申します。以後お見知りおきを…如何せん赤子ですので母の腕の中から失礼します。」


「あらあらあら、びっくり!きちんとした会話までできるの?」


「ブラッディーグリズリーを倒した後から会話ができるようになりました。まだ、理解できていない事や言葉も多くありますのでご無礼は平にご容赦を…」


 ママンは俺と辺境伯の会話をハラハラしながら見守っている。


「丁寧な口上をありがとうジーク。でもそんなに畏まらなくてもいいわよ!これからは他の子供たちと同じようにヒルデ小母さんでお願いね!うふふ」


 辺境伯の雰囲気が少し緩んだので軽く突っ込んだ話をする。


「はい!ヒルデ小母様、それで言いにくいんですが婿入りの件はしばらくお待ちいただけませんか?大変僕の能力を買って頂いて嬉しいのですが、貴族と云えども当人同士の相性は大事です。まだ何をなした訳でもありませんし、生まれついての病気持ちかもわかりません。そのように慌てなくてもよろしいかと思います。今回は小母さまの観察眼に脱帽しお話をさせていただきましたが、このことを知っているのはママンだけ。薄々感づいているのは、使用人のメリザ、オットー、ケイン、アナベルとミュラー家でも信用のおける者たちです。魔物に襲われた時の様に家族に危険が及ぶような事がない限り可能な限り秘密は守りたいと思っています。できれば洗礼式までは大事にならないようお願いしたいのですがいかがでしょう。」


「ふふふ、本当に優しくて賢い子ね。私の娘たちの心配までしてくれるなんて…いいは婿入りの話は洗礼式まで置いておきましょう。でも、私の気持ちは変わらないと思うの。如何せんこの国の男共は知性が低くて、強欲すぎる帰来があるの。娘のことを思うとあなたの様な優良物件逃せるわけがありません!」


 んーやっぱりこの国の男って脳筋が多いのかぁ~


 やっぱうちの父さん、出来は悪くないんだね!と少し安心した。


「ありがとうございます。それでは先ほど仰っていた。山道の整備のお話を進めていただければ、シュタート男爵や僕に対するちょうど良い鎖になるのではないでしょうか?恩でしばり、経済で縛ればあのような小さな男爵領どのようにでもできますよ。」


 そして、婚約話をけったから開発なしは困るので山道整備の話を振っておく。


「あらあら、そこまでお見通し?本当に怖いわね!そこまで解っていて薦めるということは対応策があるということかしら?」


 少し驚いた表情の辺境伯が聞いてきたのでありのままを答えることにした。


「いえいえ、詳しく調査してみないとわかりませんが、ギラン山脈にはそれだけの価値があるというだけです。お互いに利益になることでしたら色々なしがらみも有耶無耶になってしまいますしね。」


 それを聞いてさらに驚愕する辺境伯。


『むむ!ギラン山脈の資源は認識されてないの?』少し不安になったが、男爵領が発展すれば問題ないかと改めて平気な顔を張り付ける。


 当然思考が読まれない様に頭は魔力で覆っている。


「マリーがリスクを冒して王都に連れて行くのが良く分ったわ。警戒されていない赤子のうちから貴族としての経験をつませるつもりね。本当にシュタート男爵領が大きくなりそうね!」


 あっママンが何か話しそうだ。


「ふふん、内のジークすごいでしょう?かわいいし!頭もいいし!強いのよ!ホント将来が楽しみなの!だ・か・ら!できることはしてあげたいの!そして守ってみせるわ!」


 あっ残念!ただの親バカだった!


 そして鼻高々に胸を張った!でも思考を読ませない様にしているってことはふりなわけねママン。


「そうね!楽しみだわ!それとお食事中お邪魔したみたいでごめんなさい。度々三人でお話したいわね。それじゃあ先に食堂に戻っているわ。」


 ママンの思惑をきっちり理解してすんなり退出していった辺境伯を確認して。


「「ふぅー」」


 ユニゾンのため息が部屋に響きわたった。


「ばればれだったわねぇ~」


「うん、多分魔力感知で心の声が聞こえているんじゃないかな?聞こえやすい人もいるし…ママンが最後にやったように防止することもできるけど…昨日の父さんの報告の時に情報はダダ漏れだったみたいだね。殺気で起こされた時に不自然になっちゃったみたいだし…でもあそこまで人の内側の魔力の流れを追えるなんて、かなり腕のいい治療魔術師なのかな?」


 驚いた顔でママンが話してくれた。


「そうなのよ!ヒルデ先輩凄腕の治療師なの怪我だけじゃなく病気も直せる魔術師って貴重なのよ!でも、ジークそんな事まで解るの?」


「うん病気とか怪我をすると魔力の流れが歪になるんだよ!だから治療師なんかは魔力感知に敏感だし経験を積むからより上手になっていくんだ!才能もあるけど努力の賜物だよ!」


「あー納得したわ!先輩昔から治療師として努力していたもの!あと上級貴族として王都で揉まれているからね~腹の探り合いなんてあたりまえよねー」


 納得顔のママンがさらに続ける


「そういえば学園時代からなんでこの人に、心の中読まれてるのか不思議だったけど納得できたわ。いい勉強になったということにしときましょう!ちょっと悔しいけど…」


 ◇◇◇


「ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ」


 中断された食事を続け、お腹いっぱいになったのでごちそうさまする。


 それとやられっぱなしは癪に障るからちょっと意趣返し。


「ママン、ごちそうさま」


「それと辺境伯にちょっとお返しするからね!びっくりしないでね」


 俺はありったけの魔力を丹田に貯め込んで圧縮する。


 そして限界まで圧縮した魔力を一気に放出した!


「ジーク何をしたの?あなたの魔力が大きく膨れ上がって…今は魔力感知が使えない!」


「おもいっきり圧縮した魔力を一気に放出しただけだよ。特に事象変換とか悪意を持ってやったわけじゃないから魔力を感じる人には魔力の突風が吹いたように感じるかもね。あと魔力感知が少しの間使えなくなるかも?

 さあ、ママン。ヒルデ小母さんの顔を見に行くよ!あと使用人や騎士の反応もしっかり見ておいてね!慌てている人ほど魔力に長けた人だから…」


 俺を抱き上げて急いで食堂に帰ると、辺境伯が引き攣った顔でこちらを見つめてきた。


 食堂の中ではなんだか戸惑っているリーゼ姉とビアンカ姉、ローデリヒ卿とティーナも困惑している。

 イザベラはかわいそうに泣いていた。他の人は何も感じてないようだが…


「何をしたの?」引き攣った顔のまま辺境伯が聞いてきた。


「ジークがね。意趣返ししたって…」ママンも引き攣った顔で答える。


「ぶっわははははっ」


 辺境伯は男前な大笑いをして「ホント、大物ね!」とつぶやいた。


 暫くの間、家宰やら、騎士やら、メイドやらが慌ただしく辺境伯に指示を窺いに来た。


 部屋の周りにも十人位の隠行がうまい人が集まって来たけれど直ぐにいなくなった。


 心の中で『さすが辺境伯領ですね!』と呟いたら。


「うちも丸裸にされてしまったわね!」


 と辺境伯がママンに話しかけた。


「あらあら、まだまだ…鎧をちょと脱いでもらっただけですよ。うふふ」


 と返していたのでそう言うことなのだろう。


 他の人たちは何を言っているかさっぱり解らなかった見たいだけど…


 最後にやり過ぎてしまったけどローデリヒ卿が巧くまとめてくれて和やかな雰囲気になった。


 俺の中でのローデリヒ卿の株がどんどん上がっていった。


 子供たちも冬の再開を約束し、大人たちも色々と確認してお暇することになった。


 そこで、辺境伯が僕の顔を覗き込んで


「また冬に会いましょう。かわいい勇者さん!」


 と、とびっきりの笑顔でウインクしてくれた。


『あっ家族以外で一番好きかも』と素で思ったら


 辺境伯の顔が真っ赤になって照れていた。


『あっデレた!』と思ったけどこれは多分うまくごまかせたと思う。


 宿に帰ってから最後の魔力放出はやり過ぎとママンに小一時間お説教をされてしまった。


『ママンがちょっと悔しいっていうからやったんだけど…』とは言わなかったが…


「なかなか人生はままならないね」とちょっとご機嫌に思うのだった。



読んでくださってありがとうございます。


タイトルもまだ仮ですが付け足しました。

おかしかったらご指摘ください。


次話からメリザ視点を数話入れる予定です。

よろしくお願いします。

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