表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんは、異世界で貴族に転生した。属性はマザコン?(仮)  作者: 多田野風太
3章 都会は楽しい?それとも…
24/87

19 冒険者ギルド

 


 俺が目覚めるとママンは起きていた。


「おはようジーク今日は色々忙しいわよ。」と言いながら早速俺に食事をさせようとする。


 まあ、お腹が空いているので構わないのだがいきなりペースを奪われ、あたふたしてしまった。


 食べている最中に今日の予定を話された。


「朝食が終わったらすぐギルドに行くわ。

 昼食はケルナー辺境伯に御呼ばれしているからさっさと要件を済まさなきゃいけないの。

 ケルナー辺境伯邸で昼食と歓談を済ませた後は、本屋によってみましょうか?

 文字を覚えるための本や魔法の本があるかもしれないし錬金術の本や、魔道具作成の本も家にないので、もしジークが欲しいのなら買ってもいいし…

 とにかくギルドに行って魔物の素材の査定を聞かなきゃね!」


 そう言って俺の食事が終わると服を着替えて髪を梳かして食事をとりに行った。


 代わりにメリザが来ていつものごとく俺の身支度をすませてくれた。


 朝食から帰ってきたママンは、俺を抱き上げ、オットーを連れて冒険者ギルドにすぐ向かうのだった。


 父さんと、ビアンカ姉はベッドでまだよく眠っていた。


 ◇◇◇


 冒険者ギルドはケルンブルグの東門から入ってすぐの広場の一角にある。かなり大きな建物だ。


 入るとすぐに受付があり、右側に行くと買取りエリアになるらしく、魔石や小さな素材はここで買い取ってもらえるようだ。


 大きなものは裏庭に出る扉があり、裏にはかなり大きな倉庫と解体場があるのでそちらで受け渡すらしい。


 オットーは昨日、馬車で裏庭に乗り付け魔物の素材を倉庫に下ろしたそうだ。


 左側にはちょっとした売店があり、ポーションなどの薬類、堅パンや干し肉などの携帯食、ロープや松明、ちょっとした武器防具も置いてある。


 ラノベでよくあるような宿屋や酒場などはなく、待合用のテーブルとイスがいくつかあるだけだった。


 依頼を張り出してある掲示板は壁にあり、かなりの面積を占めている。


 依頼はランク別になっているみたいだ。


 受付は四つあり受付嬢が四人待機していた。


 早朝だというのにどの受付の前にも人が並んでおりギルドの中はかなり込み合っている。


 オットーは受付の奥に座る職員に直接声を掛けギルドマスターに面会の旨を伝えた。


 慌てて職員は出て行きすぐに秘書の様な女性が迎えに来て、奥にある立派な応接室にママン達を案内したのだった。


 ◇◇◇


「お久しぶりですシュタート男爵、魔物の討伐にご協力いただき感謝の言葉もありません。素材の方も精いっぱい査定させて頂きますのでよろしくお願いします。」


 入室するなり、仕事出来ます系の濃い茶髪を結上げて後ろでまとめ、眼鏡をかけた二十代後半の有能課長然とした女性が、ママンに深く頭を下げ挨拶した。


 機先を制するように感謝の辞を述べた。


「お久しぶりね。アンナ。お元気そうで何よりよ。

 魔物討伐の件なら気にしないで、降りかかった火の粉を払っただけなのですから…

 それよりも色々と内の旦那を使って印象操作をしているみたいだけど、そっちの方をやめて欲しいわ!

 ところで座っていいかしら立ち話もなんですし…」


 ママンは完全に臨戦態勢だ!


 ママンとギルマスのアンナは冒険者時代パーティを組んでいたそうで旧知の仲らしい。


 ギルドへ来る途中、馬車の中で聞いたのだが、いきなりバチバチ火花が散っている。


 小心者の俺としては気が気ではない。


「カールハインツ様のお力で大きな犠牲を出した魔物が討伐されたのですから、領民の評価もそれはもう―」


「大きな犠牲を出す前にギルドは何をやっていたの?

 私がガイエス辺境伯の所の馬鹿息子が何をやっているか知らないとでも思っているのかしら?

 情報は掴んでいたのでしょう?

 これはギルドの怠慢です。

 それをごまかすために家のカールを英雄扱いするのはやめて欲しいのだけど!」


 ママンは父さんを称賛しようとするギルマスの言葉をさえぎって一気に捲し立てた。


 そこへ扉を叩く音がし女性職員が三人の前にお茶を置いて退出していく。


 実はオットーも一緒に入室していたのだが完全に空気になっていた。


 と言うより空気になろうとしている。


「しかし、領民の声は―」


「白々しい!専攻して報告に戻った騎士や冒険者に触れて回らせたんでしょう?

 ヒルデ先輩とグルになって!

 カールは結構お調子者だからチョロイと思ったんでしょう?」


 ママンは鋭くギルマスを睨みつけて完全に喧嘩腰である。


 それを見てギルマスは両手をあげ諦めた顔をした後、うんざりとした表情で話し始める。


「あ~もう!やめやめ!

 ガイエスブルグのギルドも色々あってね。

 情報が入手しにくかったのよ。

 馬鹿息子が魔獣の森を1000人で突いたんだって!

 そっから先は魔物の大量移動でね。

 ガイエス辺境伯領の被害もかなりひどいものらしいんだけど…

 共和国との交易で儲けてるいでしょう?

 強引に兵力集めてもみ消したらしいの!

 ところが始めに山沿いに西に移動した魔物がいてね。

 一番強い魔物でもCランクのレッドベアが移動してきただけという情報だったの!

 調査に行ったらBランクのレッドグリズリーじゃない。

 調査に行った冒険者は全滅するし、挙句の果てには村を襲ってブラディーグリズリーに進化しちゃうし…!

 後はあなた達も聞いている通りの被害が出て困っている所にあなた達が討伐してくれたの。

 本当に救いの神かと思ったわ!

 そうじゃなきゃーシュタート領も危ないと思って…

 本当に急いで討伐隊組織したんだから!!

 許してよ~マリー」


「うわ~ホント酷いありさまだたんですなぁ!

 っていうか、奴はブラディーグリズリーだったんですかい!

 Aランクじゃないですかい!

 どうして俺たち倒せたんです?

 普通死んでますぜぇ!」


 アンナの話を聞いて思わずビビりながらオットーが呟いた。


「でしょでしょ!

 あなた達の実力は知ってるつもりよ!

 Aランクまじかって事も含めてね!

 でもBランク冒険者五人と村の従士数名で倒せるような魔物じゃないのよ!

 本当にどうやって倒したの?」


 何か言いたそうにオットーは俺を見るが何も言わずに黙り込み、代りにママンがのたまった。


「すごく運がよかったのよ!だって今回の旅には天使が四人もいたしね!

 かわいいでしょう?春に生まれたジークフリードよ!

 きっとこの子の幸運で助かったのよ~そうに違いないは!」


 アンナは胡乱げにママンを見たあと俺の方を見た。


 手足を振って二パっと愛想笑いをしたら満面の笑みで抱き上げてあやしてくれた。


「キャッキャ」と笑ったら「本当にかわいいわねぇー」と言ってあやし続けてくれた。


 案外チョロマスさんだった。


 ママンが引き続き質問する。


「他に魔物の移動はどうなの?」


「ゴブリン、コボルド、オークなどが確認されているけど途中の森で巣を作っている可能性があるわ。

 山岳地帯にはあまり移動していないみたいよ。

 こっちも人手を集めて調査しているのだけどね、おっつかないのよ!

 ただしシュタート領までの調査は優先さすわ!

 と言ってもケインとアナベルが帰るんでしょ?

 一緒になじみの冒険者を派遣しとくからそれで許して!」


 両手を合わせて拝み倒すようなかっこをするギルマス。


 それを見て悪い笑みを浮かべたママンがきりだした。


「あ~、いい機会だから内の領地にギルドの出張所作りなさい!

 山岳部をちょっと奥に入ればワイバーンや飛龍もいるし、竜の森は手つかずなんだから素材はすこぶる上等よ!

 竜も居るって噂だしドラゴンスレイヤー目指す冒険者が殺到するんじゃない?」


 慌てて反論するギルマス。


「ちょっと待ちなさい!あんな辺境の小さな村に出張所を置けですって?

 そんなこと無理に決まっているじゃない!

 第一冒険者が集まらないでしょう?

 冒険者が宿泊するところもなければ食べるものもないんだし…」


「冒険者が集まって活動できる環境があればいいのよね?」


「そうね。ある程度食べ物があって、拠点となれる宿泊施設があれば何とかなるかしら?」


 お惚け顔で問い返すママンを胡乱げに見ながら言葉を置くように答えるギルマス。


「言質はとったわよ!すぐにギルド出張所を作ることになるんだから!しっかり職員を増やしておくことね!」


 にやり笑ったママンに俺は戦慄を覚えたのだが…


「こちらとしても望ましい事なので精々頑張ってね!

 あっ山道の整備もした方がいいと思うわよ!人も集まらないでしょう?」


 いけしゃあしゃあと激励した上で追加の注文を出すギルマス。


「あら、ご丁寧にありがとう。よく承知しているわ。できるだけねじこんでやることにするわ!」


「ケルナー辺境伯を使うつもりね。でも難しいんじゃない?」


「ヒルデ先輩の強かさはよく知っているの。もう十四年の付き合いだしね!まーできるだけいい条件を引き出して見せるわ。」


「よっぽどあなたの方が強かじゃない!」


 想像もつかぬ所に飛び火する。それも寄り親様のとこなんて…


 俺もオットーも凍り付いていた。


「あらあら、そうかしら?只の辺境の貧乏男爵よ。うふふ。ところで魔物の素材の買い取りと討伐報酬はどうなっているの?貰って帰れるのかしら?」


「素材は全部で金貨120枚。討伐報酬が金貨50枚ね!」


「Aランクの討伐にしては報酬が少ないわね!どうゆうこと?」


「素材はブラディーグリズリーとして査定できたの、だけど報酬はレッドグリズリーのままなの。政治的なものがあってね…」


 そして話題は急転直下の魔物の素材と討伐報酬の価格交渉が始まる。


 オットーはまだ凍っている。


 いやさらに凍りついたみたいだ。


 液体窒素に浸けたバナナが木に釘を打ちこめるように、今なら木に釘を打ちこめるぐらい見開いた目が凍り付いていた。


「討伐報酬は、辺境伯にねじ込めじこめと言うことね!」


「ご理解が早くて助かるわ。申し訳ないけどよろしくね!」


 ママンが苦々しく確認すると、今にもテヘペロッしそうな軽い感じで答えるアンナ。


「本当に魔物のことと言い面倒事ばかり押し付けるんだから、わざと山岳地帯に追いやったのも分っているんですからね!」


 ママンがムッとして問いただす


 するとギルマスはあっさり認め、その後真顔で謝罪した。


「えへへ、やっぱりばれてた?

 その件は本当に申し訳ないと思っています。

 此方としてもそうするしかなかったの。

 山岳地帯の緩衝域で時間稼ぎして戦力を集めるつもりだったから…

 当然、急報も送る所でした。五人の騎士が行ったでしょう?

 でもその時には魔物が討伐されてたんだから…

 ホントどうやって倒したの?」


 最後に目を細めて『白状しなさい!』と言うように聞いてきた。


 父さんが倒したとは全く信じていないようである。


「カールの報告通りよ!あえて言うなら内の天使のお蔭かしら?」


 ママンは再度いけしゃあしゃあと答えた後、ウインクまでする始末。


 ギルマスは肩をすくめて何も言い返さなかった。


「それじゃあ、ヒルデ先輩の所に行くからこの辺で御暇するわ。

 それとカールを英雄にするのはやめて頂戴ね!

 Bランクの魔物を倒して英雄だなんて馬鹿にしているのと一緒よ!

 解っていて?」


「そうですね。此方の方は沈静化するように動きます。

 あの方にはこれから釘を刺してくださいね。

 あっ報酬どうします?用意できていますよ!」


 最後に釘を刺すママンにさらっと答えて、報酬の話を振ったギルマス。


 何、本当に怖いわ。いるだけでちびりそう。


「オットー報酬はしっかり受けとっといてね。

 あと、王都までの往復の護衛依頼も出しといてね。

 あっ!ついでにこの手紙妹に届けといて。

 これ位奢ってくれても罰は当たらないわよね!アンナ!!」


 ママンに呼びかけられたオットーがビクンッとして再起動し慌てて立ち上がる。


 さらにかぶせるようにアンナにマイスター男爵家に嫁いだ妹のクリスティーネへ宛てた手紙を渡した。


「畏まりました。」と言うが早いかオットーは部屋の外に出て行った。


 アンナは手紙を受け取り大きなため息を一つ吐いて

「はい、承知しました。」と頷いた。


 俺を抱きかかえ直して席を立ち最後の挨拶をするママン。


「今日は有意義なお話を伺えてよかったわ。今後ともよろしくお願いしますわね。」


 ギルマスのアンナもすっと席をたち答える。


「この度は魔物の脅威を取り払っていただき誠にありがとうございました。色々ご迷惑もおかけいたしましたが、今後ともよろしくお願いいたします。」


 そして深々と一礼してママンを見送った。


 無事ギルドマスターのアンナとママンの会談は終わった。


 だが、次に控えるケルナー辺境伯との昼食会を考えると血の気が引く思いがした。


『今日の空も鮮やかに青いなぁ~あっ入道雲だ!』


 馬車の窓から外を見て現実逃避するのだった。


『本当に人生はままならない。』



読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ