五年前の今日
その日は朝から雨が降っていた。
せっかくの休暇だというのに、美和は暇を持て余していた。
つまんないな。
そんなとき、美和のもとに一通の封筒が届いた。
差出人は村上と恵理だ。
急いで封筒を開けてみる。
やっぱり。
結婚式の招待状だ。
「おかあさん見て。恵理と村上くん結婚するんだって」
「あらそう。よかったわね」
「いいなぁ、恵理」
「美和もしちゃったら?」
「えー?だって相手いないもん」
「まぁ、淋しいわね」
「うるさいなぁ」
美和は嬉しかった。
恵理が結婚することはもちろんだが、おそらく、いや、絶対にカズも結婚式によばれているはずだからだ。
十年ぶりに、カズに会える。
「おかあさん。今から招待状の返事出してくるね」
「雨降ってるわよ。明日にしたら?」
「こういうのは早い方がいいのよ」
「大丈夫?気をつけるのよ」
「大丈夫だよ」
美和は返事を出すことで、どこかでカズと繋がるような気がしていた。
だから、どうしてもはやる気持ちを抑えきれなかった。
雨が降っているにもかかわらず、お気に入りのブルーのワンピースに着替えて、いつもより念入りに化粧をした。
そして招待状の返事が濡れないように、大切にバッグの奥に入れた。
よし。準備完了。
雨の日にお洒落をして出かけるのも悪くないな。
美和はなんだかワクワクしていた。
「じゃあ行ってくるね」
それが美和の最後の言葉だった。
美和がバス通りにあるポストまで返事を出しに行ったその日、雨のために運転操作を誤った車が歩道に突っ込み、歩行者が犠牲になるという痛ましい事故があった。
車は次々と歩行者をはね、横転し、炎上した。運転していたサラリーマン風の男も亡くなったのだが、遺体の損傷も酷く、顔もわからないくらいの激しい事故だったという。
事故の犠牲者は、二人の女性、小さな女の子とその母親。
そして美和も―
美和は招待状の返事を出した直後、その事故に巻き込まれたのだ。
五年前の今日、午後二時十四分の出来事だった。




