第一話 婚約者が魔王討伐に赴くようです。
世界は私のために廻っている。
誰がそれを否定できるでしょう? 私が願い、欲したことは必ず、実現される。紛れもない事実、もはやこの世の条理。
ヴィオラ・ヴァレンティアの歩んだ道こそが、世のあるべき形なのです。
レオンハルト・アルヴェインとの婚約も然り、彼の幼馴染であったリリアから、政略によって彼を奪い勝ち取ったことも、必然の一つでしかなかった。私が望んだ道は舗装して用意される。
世界は私のために廻っている。
そう、私の世界に、ヴィオラ・ヴァレンティアが不都合を背負わされるような筋書きなど、永遠、ありはしないのです。
◇
「悪い。だが、情勢を見て、今まさに世界が滅ぶ瀬戸際にあると、私は感じている。――私は魔王討伐へ向かう、例えそれが、約束された片道切符の旅路だとしても」
あったわ。
ちょ、ちょちょちょっ、――魔王討伐???
確かに……最近、極東のほうで魔族が今までに無い支配体勢を築いて、その長が【魔王】とまでに呼ばれ始めたという情勢は聞きますが、それは私たちの住む世界からかけ離れた、遠方の話でしょう! なぜ、関係のない私たちが、その悶着に進んで志願を――?
「関係無いということはない。力を得た魔族は急速に支配地域を広げている、いずれ人の領域を全て、飲み込まん程に」
――それでも、この地にまで禍が及ぶなんて話に至るには、まだまだ遠い、一情勢の話でしょう!?
「これは世界の危機だ、他人事にはできない。私の【精霊魔法】を役立てる時だ」
――お願い、レオンハルト、行かないで。置いていかれる私はどうすればいいというの……?
「必ず帰ってくる。すまない、ヴィオラ」
――行ったぁあああああああ!!!!
行っちゃった……! 四六時中の訴えかけ、あらゆる根回しを使っての策略も空しく……魔王討伐、自分で片道切符とか比喩した旅に、レオンハルト、本当に行っちゃった……!
こ、こうなったら……生きて帰還することを願うほか、ない……。
旅立ちの時、リリアと手を取って、帰還の約束を交わしていたことにイラッときたけれど、そこに気煩いを取られている状況でもない。例え手足を捥がれてでも……生きて、帰ってきて。そうしないと私の立場はヤバいことになる、まだ婚約の身の上、アルヴェイン家に嫁ぐことを見据えた、私の完全な未来展望が崩れ去ってしまう……!
私が願い、欲したことが、実現されない。
それだけは、あり得ないことなのよ……!




