10
バイトが終わった後、着替えて店の外に出るとツカサさんが居た。
そのまま手首を掴まれてどこへ行くのかと思ったら辿り着いた先は、ツカサさんの家だった。
ちゃんと話し合いをするのだろう、と思っているとエレベーターの中で抱きしめられて。
本当に今日のツカサさんはどうしてしまったのだろう、と思いながらも嬉しくて。
俺は警戒することなくツカサさんの家に入った。
そして、ドアが閉まったと思うとキスをされて。
今日はものすごく積極的だな、なんて思いながら俺はツカサさんのキスに応えた。
もう息継ぎが必要なキスを覚えたし……ツカサさんには秘密だが男同士のあれこれも調べて、準備くらいはできるようになった。
そう考えてから、そういえば自分はツカサさんの家に泊まったことがなかったことを、思い出す。
いまから話し合っているときっと終電を逃す。
二駅離れた場所だから歩いて帰っても知れているのでまぁ良いか、なんて思っていると。ツカサさんが首筋を唇で咬んでくる。
そんなことをされたのは初めてで声が漏れて……漸く、いまが『そういう空気』になっていることに気づく。
「今日、俺……泊まってもいいんですか?」
精一杯、大人ぶったことを訊くと胸板を重ねるような体勢のまま、ツカサさんが笑う。
「君を頑なに泊めなかったのは……僕に余裕がなかったからだよ」
後ろ首を撫でられ、ぞくりとしたものが首筋から背骨を伝って腹の奥で蟠る。
「いまだって、余裕がない。初めてだよ、こんなに恋をして、失敗したくない、嫌われたくないと思いながら……触るのは」
ぼやくような口調なのに、滴るような甘さを感じてしまうのは……俺がツカサさんを好きだからだ。
「嬉しいです、同じ気持ちがあるのは……でもいつも、ツカサさんは格好良くて……でも失敗しても俺、可愛いとか思っちゃいそうです。あと、嫌うわけないです……ねぇ、だから……もっと触ってください、俺もツカサさんに触りたいし、恋人として気持ちいことしたいです」
抱きしめられる幸福のまま、気持ちを声に出すと抱きしめてくれるツカサさんの身体が熱くなった。
「やっぱり敵わないよ、直哉君……」
ツカサさんは真っ赤な顔をしていて。
可愛い、なんて思う前に軽々と抱き上げられて……俺は包み込まれる体温と腕の強さにこれから何が起こるのかを察して、期待と不安と嬉しさのままにツカサさんにぎゅっと抱き着いた。
長い夜を過ごした後の目覚めは思いのほか、穏やかだった。
ツカサさんのベッドが上質だからだろうか。
そう思いながら俺は目を開け……当然、隣に横たわっているツカサさんと目が合って、微笑んだ。
けれどツカサさんは大切なものを見つめる眼差しを向けていたのに俺の顔を見た途端、罪悪感を持て余したような顔をする。
「ごめん、昨日は本当に……めちゃくちゃにしちゃって……どこか辛くない?」
「いえ、強請ったのは俺なので……」
謝ってくれるのも予想通りだけれど、体は思ったより楽だ。
きっとツカサさんのことだから後始末も完璧にしてくれたのだろう。
でもきっと大変だっただろう。
そう思ってから俺は急に恥ずかしくなってタオルケットを引き寄せると中に籠った。
ぐるぐる考えているとツカサさんがタオルケット越しに頭にキスをしてくれる。
「大好きだよ、直哉君」
この時になって、ツカサさんは……悪い大人かもしれない、と思った。
「俺だって大好きです、ツカサさん」
だって。俺が返さずにはいられない言葉を、絶対に顔を見たいと思ってしまう顔をして言うから……優しくて格好いいけれど、ズルくてたまに怖い大人なんだと思った。
俺は二十歳、ツカサさんは二十七歳。
その差は埋まることはないし。出会う前の事を俺が本当の意味で知ることはないけれど。
これからのツカサさんを誰より知っているのは俺でありたい、と思った。
そしてきっと、それはツカサさんも同じように望んでくれていることがわかるから……俺は世界で一番幸せだと思った。
そんな気持ちのまま微笑んで。
俺はタオルケットから顔を出して微笑んでいる綺麗な恋人に割と深めなキスを仕掛けた。
【終】
最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました!
実はこの物語、DLsiteにあるものでして
がっつり18禁なので興味のある十八歳以上の方は探していただけると嬉しいです




