第22話 フードの少女
光が収まると、リリスとラヴィエンヌは目を開いた。
そこは先ほどまでとは異なり、ごつごつとした岩壁の薄暗い空間。
肌寒い風が通り抜け、髪を揺らす。
「まずい。ここどこだろ。」
ラヴィエンヌはきょろきょろと周囲を見回し、赤髪の教官を振り向く。
しかし、そこに彼女の姿はなかった。
「ラヴィエンヌ、あっちに誰かいる。」
リリスは魔力探知を展開し、3つの魔力がこちらに近づいてきているのに気が付いた。
2人はその瞬間身構え、魔力を練る。
張りつめた空気がその場を満たした次の瞬間、曲がり角の奥からそっと顔を出したのは見覚えのない少女。
「誰、ですか?」
少女は怯えたように震えた声を出し、こちらの様子をうかがう。
リリスたちは敵意がないことを確認し、構えを解いた。
「あんたこそ、誰よ?私たちは試験中にここに飛ばされたばっか。状況も分かってない。」
「あ、そう、なんですね。」
少女は少し安心したようにつぶやき、姿を現す。
彼女はまっすぐこちらに歩いてくる。
その後ろからひょこっと小柄な少女2人が顔を出し、不安そうな表情でこちらを見つめていた。
軽い足音が響き、リリスたちの2mほど手前で立ち止まる。
フードで表情はよく見えなかった。
「マルグリット・デシャンです。よろしくお願いします。」
「ふーん。」
ラヴィエンヌは信用できない、という風に腕を組んでマルグリットをじろじろと見る。
マルグリットは声音を変えず、そのまま言葉を続けた。
「突然、申し訳ないです。お二方はまだ状況が分かっていないのですよね?」
未だに無言で腕を組んでいるラヴィエンヌに代わり、リリスは頷く。
「まず、ここは中層から深層部です。」
「はぁっ!?そんなこと信じられるわけないじゃない。そんなとこに飛ばす罠が1層にあるはずないんだから。」
「私たちも、もちろんそう思っていました。でも・・・。」
マルグリットがそっと差し出したのは、低層で手に入れることができない牙。
――夜狼の牙である。
ラヴィエンヌは眉を寄せ、険しい顔を向ける。
2人が会話を続けようとした瞬間、
ウォォォォォォォン!!!
という鳴き声が背後から響く。
角から顔だけをのぞかせていた2人の少女はこちらに駆け寄ってきた。
そして、マルゴットの服の袖を引き、焦ったように声を上げる。
「マルゴ、マルゴ!夜狼の群れだよ!」
「危ないよ!」
マルグリットは「ついてきてください!」と告げ、踵を返すと同時に駆けだした。
リリスとラヴィエンヌはちらりと視線を交わし、迷わずその後に続いた。




