第18話 実技試験
リリスが魔力を練ろうとしたその時、すぐ横で魔力が爆発する。
といっても、暴走した時のぐちゃぐちゃな、荒れている魔力とは別物だ。
制御された力強い魔力の流れ。
リリスは横を振り向き、かすかに目を見開く。
隣に立っていたのはラヴィエンヌ。
彼女の前にあった的と訓練場の壁は巨大な2本の氷の槍に貫かれていた。
周囲がざわめく中で教官たちは平静を保ち、記録をつけていた。
リリスは気付かなかったが、その場にいた教官全員がラヴィの魔力制御の美しさに魅了され、記録していたのだった。
「それでは、改めてどうぞ。」
リリスはしばらくの間、ラヴィエンヌの魔法を見つめていたが、担当の教官に促されて練習通りに魔力を練り始める。
初めに『草生』でアイビーを生み出し、『草操』でリリスのイメージ通りに動くようにする。
ここまでで1秒未満かつ無詠唱である。
リリスは周囲の感嘆の声を背に、アイビーに手を軽く触れて詠唱した。
「『付与・火』。」
リリスが触れた部分を中心にして、アイビーを炎が包む。
本来なら、燃え尽きてしまうであろう組み合わせ。
しかし、リリスはそのまま的に向けて鞭のように振り下ろした。
的はぐしゃりと押しつぶすと同時に燃え尽きる。
さらに、後ろの壁も余波で崩れ去っていった。
教官たちはその様子を見て、ラヴィエンヌの時と同じように記録する。
リリスが『付与』を解除すると同時に炎が完全に消える。
その場に残ったアイビーに焦げは一切なかった。
お母様とマノンさんに言われていたのはここまで。
リリスは教官を振り向き、かすかに首を傾げる。
彼女はぼんやりと的の方向を見て固まっていたからだ。
「あの・・・。」
声をかけると、ハッとしてリリスに視線を戻す。
「実技試験は終了です。あちらで待っていてください。」
教官はラヴィエンヌが立っているスペースを示し、次の受験者の名前を呼ぶのだった。
「お疲れ。」
「お疲れ様。」
2人は自然と言葉を交わす。
リリスがラヴィエンヌの隣に並ぶと、彼女は口を開いた。
「さすが。あんな使い方するなんてね。今度教えてよ。」
ラヴィエンヌはにっと楽し気な笑みを浮かべる。
リリスは少しの間逡巡し、やがてゆっくりと口を開いた。
「あなたも、魔力の流れがきれいだったわ。」
彼女は嬉しそうに笑みをこぼし、「ありがとう。」と答えたのだった。




