第14話 筆記試験
ざわざわしている広場に手をたたく音が響く。
その瞬間、水を打ったように静まり返った。
「皆さん、これから筆記試験の会場へ向かいます。先ほどと同じように、私の後ろをついてきてください。」
そう言った教官は、再び踵を返して歩き出す。
私たちは何も言わずにその後ろ姿について行くのだった。
魔法学校の大きな門をくぐり、中へと足を踏み入れる。
「わぁ・・・!」
どこからか、そんな声がこぼれる。
門を通った先には広い広場があり、奥に赤茶色の、落ち着いた雰囲気を醸し出す建造物が建っている。
そのさらに奥には、中庭のようなものがあることが分かった。
右手には広い訓練場、左手には正面の建物よりも派手な雰囲気を醸し出す建物。
他にも大小さまざまな建物が建ち並ぶ。
1つの街のような場所だ。
教官が向かったのは、右手にある訓練場。
そこで立ち止まった彼女は、不意に呪文を唱えた。
「『石障』。」
流れるような、きれいな詠唱。
土壁を作る、中級の土属性魔法だ。
詠唱が終わると同時に、地面が少し揺れ、椅子と机のようなものが作り出される。
またしても、周囲から歓声が上がる中、教官が落ち着いた声で座るように促す。
しかし、興奮したままの受験者たちの耳にはその声が届いていないようだった。
「はあ。」
そんな中、先ほどの少女が作られたそこに座る。
そして、面倒くさそうな顔をしながら他の受験生たちをにらみつけた。
ちなみに、私もすでに座っている。
ざわざわしていた生徒たちも、少し落ち着き、席に座り始めた。
全員が席に着くと、教官が口を開く。
「それでは、この問題を解いてもらいます。」
その言葉と同時に、かすかな風が通り抜ける。
数秒後には、全員に問題が配られていた。
「それでは・・・始め!」
こうして、筆記試験が始まった。
筆記試験は合計50問ほど。
内容は語学や歴史などから、魔術についてまで。
実に広い範囲の知識を求められる。
魔術については、魔法学校の教員でも、解くのがなかなか難しいものもあった。
それにもかかわらず、開始から30分で教官の前に立つ者が2人。
リリスと赤い瞳の少女。
「終わった。」
「終わりました。」
そう言って同時に回答用紙を差し出す2人。
頬を引きつらせながらそれを受け取った教官はそれをちらりと見てから彼女らに向き直る。
「本当に、これで終わりでいいのですか?」
その問いに頷く。
1人は自信ありげに、もう1人は無表情で。
「それでは、控室に向かってください。あの者に案内させます。」
少女たちはすぐに、教官が示した人物へと歩き出した。
その背後では、教官が眉間に眉を寄せ、回答用紙を眺める。
・・・さて、この2人は、どうなんでしょう。
筆記試験は基本的に、制限時間いっぱいまでに解ききれるかどうか、というものだ。
それにもかかわらず、このように早く終わる者は大まかに分けて3種類。
分からずに諦めた者。
解けた気になっている者。
そして、本当に解き終えた者。
リリスと少女はどうなのか。
基本的に、3つ目のような者はいない。
しかし、2人の回答用紙は全部埋められており、教官が覚えている限りの問題は全問正解。
彼女は期待しながら採点係に2枚の回答用紙を手渡したのだった。




