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変な魔法使い、異世界に行く  作者: 八艘宗八
第1章 街での『平穏で優雅な』生活編
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7-E 窮地のカボチャ頭

「以上の観点を踏まえて、作り直せ。一度だけ見ておいてやる」

「いやぁ、まさか、そんな欠点があるとは勉強になります……」


「って違うぅ!!!!」


 カボチャ頭は手に持っていたメモを投げ捨てる。


「何を言う、この方法で作り直せば効率的に血の回収を——」

「この魔法陣は不意打ちでこそ、意味を為すものであって、この屋敷が罠だということが知られてしまった以上、今更改善方法を聞いても、もう意味がないではないか!」


 うわぁー、黒幕っぽいのがツッコミに回っちゃってるよ。

 色々裏で企んでただろうに。


「もう、良い、もう良いわ。此度は『怪血王』の復活を諦める。しかし、我が計画を知った貴様らは排除しなければなるまい。この『カボチャ子爵ジャック・オー・ランタン』の力を持って直々に血祭りにあげてやろうぞ」


 カボチャ頭は腰に下げていた剣を引き抜いた。


「なんといっても、我が剣技は、かの魔王ドリアドの前で披露したものなのだ。ここにいる雑魚共に敵うものでは——」


「ミーク」

「うん、わかった」


 ミークはミミックの口を開けると、躊躇なく腕を突っ込み杖を取り出す。


「アルカトラム、ベウレフォース、マゼンタ。神よ、彼女の祈りを聞き届け、その力を同胞に知らしめよ」

「って話を聞かんか! 何をペチャクチャと!」


 ミークの詠唱と共に現れた白い円陣は、カボチャ頭の足元に展開され、足元から天井まで徐々に白い光で包み込んでいく。


「神聖魔法、生命流轉ミル・エランデ

「うごぉぉぉぉ、これは、これは神聖魔法かぁぁぁ!」


 対モンスター特攻魔法。

 一日一回切りの神聖なる光。

 完成した詠唱はカボチャ頭を完全に白で覆い隠し、その中では痛々しい絶叫が木霊した。


「がは、は、は、は、は」


 十数秒後。カボチャ頭に亀裂が入り、服もボロボロとなった状態で出てきた。


「まだ、まだ。この我は『怪物王』に仕えし『怪物貴族テラス・オブ・ノーブル』が一人、『かぼちゃ子爵ジャック・オー・ランタン』ナンキュ=オム=ファードである! この程度の魔法で、死んでたまるものか!」


「凄い。あのレベルの神聖魔法で消滅しないんだ」

「腐っても『怪血王』の血を分け与えられた『怪物貴族』らしいですからなぁ。一筋縄では行かないようですね」


 その割には瀕死っぽいけど。


「つかれた、ねる」

「ちょ、ちょっと待って……あぁ」


 最高戦力ミークは魔法を発動し終えると、以前のように、ミミックの中に帰って行った。


「どんなにダメージを負うことになっても、我が意思が途絶える事はない!」


 カボチャ頭は自身の言葉で奮起させないと倒れそうな程。

 だが、こちらは戦闘出来るものと言うと。


「チョビ髭頭って戦えるの?」

「戦闘自体は行うことは可能ですが……なにぶん獲物の一つも無いので、頼られても困ります」

「獲物って剣とかでしょ、この屋敷のどっかに落ちてるんじゃないの? 取ってこれる?」

「それはそうですが、背を向けた途端心の臓を一突きされる気がしますので」


 チラッ、とリンドーの方を見る。

 ダメだ。ボロボロの屋敷(こんな所)で決戦兵器を放ったら、屋根が落ち全員ペシャンコになる。あー、毎度毎度使いずらい。もっと、小規模で強い魔法の一つでも使えたらいいのに。


 もちろん、私は不死身だが弱いので戦う気は一切ない。


「やばくない?」


 なんか鈍臭そうな敵だったので、油断していたが、シンプルに私達の力不足が露呈したのだった。

 最悪、チョビ髭頭を囮にして逃げたらいいか、などと思った、その時だった。


 駆け上がる階段の音、廊下を走る靴の音、そして扉を開ける音、救世主は遅れて現れた。


「そこまでダァ! お縄につきやがれぇ!」


 目に付く金の荒々しいポニーテールと、肩に担いだ大剣。

 そして身分を表す騎士装束。

 戦闘を生業とする、その人物の名は。


「ストーナ!」

「『白き星を望む鳥アナティテラ』だと、なぜウルメラの騎士団が街の外にまで来ている!」

「なんでってそりゃァ、苦情が来たんだよ。森から悲鳴が上がってるって。何か事件かと思って飛んで来たら、まさかクラリムだったとはなァ」


「えっ、なんでこんなにいっぱい候補いるのに、私限定なの?」

「…………クラリム以外、大声だす奴いねぇだろ」


 リンドー、ミーク、チョビ髭頭。

 たしかに、この面子だと私しか声上げなさそう。強いて言うなら、このカボチャ頭くらいか。

 圧倒的ツッコミ不足、どうりで喉が枯れてくるわけだ。


「念の為にウチの連中を外で待機させておいてよかったぜ。ミークの正体が街の奴に知られば面倒だかんなァ。それでカボチャ頭さんよォ、どうする? モンスターなら問答無用で切り伏せるとこだが、話し合えるってなら、騎士団に連行する。やるって言うなら、付き合うぜ」

「そうだそうだ! 騎士団長様が、そんなボロボロのアンタなんてギッタギタにするんだから、覚悟しなさい!」


「……このダメージで、この敵の量。いったい、どうすればいいと言うのだ」


 ふふ、狼狽えてる狼狽えてる。

 血迷ってこっちに来られても嫌だから、剣抜いとこ。

 前後をキョロキョロと見ながら、カボチャ頭は右手を片手に誰もいない方向へと後ずさる。


「くく、くくく。そうだ、そうだった。これがあった」


 勝ちを確信したのも束の間、カボチャ頭は笑い出し、胸ポケットから何やら小瓶を取り出した。


 入っていたのは丸い緑の粒。


「これこそは、植物型モンスターを微塵切りにし、その中でも最も魔力が濃い所だけを選別し、煮詰め乾燥させた丸薬よ。その名も『モンスター印の無敵丸』これを飲めば、滋養強壮、魔力回復、筋力百倍、知覚過敏、全知全能の優れものよ」

「何その万能薬、そんなものを隠して持ってるなんて、ずるい。後出し、してんじゃないわよ」

「何がずるいものか! 貴様こそ、何度も盤面をひっくり返しよって! 復活を果たされた怪血王様に捧げる供物であったが、仕方あるまい」


 カボチャ頭は瓶の蓋を開け、小粒の丸薬を手に乗せる。


「人間共よ、そして怪血王に従わぬモンスター共よ、恐れ慄くがいい、ハハ、ハハハハハハハハ」


「ミーク、食べて良いぞ」


 その冷静な一言は、いつの間にかカボチャ頭の足元にあった箱を動かした。


 もし彼、カボチャ頭に敗因があったとするなら。

 それは、変身中は攻撃してはいけませんとか、戦いの前に結婚を申し込んで死ぬとか、探偵が現れると必ず殺人事件が起こるとか、そういったお約束に対して、色々な制約があると思い込み、自身で何の対策もしていなかったことだろう。


「は?」


 何が起こったというと。


 ミーク(ミミック)の口が一人でに開き、中から伸びた腕がカボチャ男の腕を叩き、落下した丸薬を舌でキャッチしそのまま胃の中へと押し込んだのだった。


 ゴクリ。

 気持ちの良い飲み込む効果音はカボチャ頭の亀裂を更に悪化させた。


「吐け! 吐けぇぇぇぇぇぇ!」


 ミミックを持ち上げ、上下に振る。


 しかし、振れども振れども変化せず。それはまるで、玩具箱が開かなくなって、癇癪を起こしている子どものようだった。

 普通に重いミミックを持ち上げるのに、疲れたカボチャ頭はそっとミミックを降ろし、一言。


「あの、今からでも自首って間に合いますか?」

「すっごい、ここまで何も出来てない黒幕みたいな奴初めて見た」


 カボチャ頭の目から大量の黄色い液体を溢し、ストーナと共に騎士団の元へ歩いて行ったのだった。

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