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12話 ビックな冷蔵庫

 アダルトグッズ店に到着するとダンプは店の斜向かいに止まっていた。ダンプは急いで停車させた様で長いブレーキ痕がアスファルトに残っていた。

 

 「よしよし雄二のやつちゃんとエンジン止めてたな。エンジン掛けっぱなしだったら今頃燃料切れおこしてたな。厄介な問題が2つ減った。」

 「社長さん、1つじゃないんですか?」

 「軽油で動くエンジンは燃料切れ起こすと燃料のラインに空気が噛み込んでしまう。その空気を手動のポンプで追い出さないとエンジンが掛からない。ひどい時は30分近くポンプをシコシコしないとイケない。遅漏エンジンだ。だから燃料の問題と手動ポンプの問題の2つだな。」

 「社長さん、時折下ネタ挟むの止めましょうよ。それがなかったらいい男なのに。」

 「ん?最後の方あまり聞こえなかったからもっかい言って。」

 「もぅ、早く行きますよ。」

 

 ダンプに乗り換え街を走っているとリンダが急に大きな声を出した。

 

 「社長さんストップ!」

 「どうした?」

 「あの倉庫、屋根にソーラーパネルが付いてる。」

 「あれは、良いかもしれないな。」

 

 丘の下に見える倉庫の壁には全国展開している冷凍食品のロゴが描かれている。

 

 「レッツショッピングだな。」

 

 丘の下は倉庫街になっているためか、住宅街程にゾンビの数もなく、目的の倉庫に問題なく到着する。

 竹槍と鉄筋を手に二人は入り口に立つ。

 

 「こーんーちわー!!」

 「社長さん、挨拶の意味を聞く前に雄二さん亡くなったんだけど、それの意味を教えて下さい。」

 「あぁ、これはな、ほら来たぞ。」

 

 奥から数体のゾンビがゆっくりこちらへ向かってきた。

 

 「広い外で竹槍のリーチを活かして頭を刺せ!」

 

 二人はバックステップを繰り返し次々とゾンビを倒していく。5分と経たず全てのゾンビを処理した。

 

 「挨拶の理由の1つはこれだ。逃げ道が限定される室内で戦うよりも、広い外で戦った方が選択肢が多い。だから入り口で大きな声で挨拶する。もう一つは生存者と要らないトラブルを回避するためだ。よし、ソーラーのおかげで倉庫内の電気は生きてるみたいだな。一部屋ずつゾンビのチェックをして安全を確かめるぞ!」

 

 たっぷり時間をかけ全ての安全を確かめた。倉庫は広すぎて完璧に隅から隅までとはいかなかったが、ジャンケンで負けたリンダが大きな声で歌いながら歩いても出てこないため、ゾンビはいないようだ。

 

 「巨大な冷蔵庫を手に入れたな。あとリンダは若干音痴っぽいな。」

 「夜は発電出来ないのになんで温度を保ってるんでしょう?」

 「俺もそこまで分からないけど、仕事してない事が大きな要因じゃないか?人や荷物の出入りが無いから倉庫内の温度が上がりにくいんじゃないか?だから無用な電気を使わないで済む。それか巨大なバッテリーに電気を蓄えているとかか?まぁ、細けぇ事は良いんだよ。

 ここで選択肢が出てくるんだが、拠点を移すか?今の所に居続けるか?リンダはどう思う。」

 「あたしはS県に行くからどっちでも良いけど、同じ立場で考えると移った方が良いと思う。」

 「俺は逆だな。強奪者に狙われかねないし、おれのモビルスーツ(ユンボ)を持ってくるには回送車を何処かで見つけてこないといけない。」

 「ユンボは置いてけば良いんじゃ無いですか?」

 「切り札は手元に置いておきたい。それにここは水があるのか?だからここは大きな冷蔵庫として使うのが良い。」

 「まぁ、社長さんがそう言うんだったらそれで良いよ。社長の所はお風呂もあるしね。」

 「それじゃ、ホームセンターでクーラーボックスとサイクルロックを手に入れて冷食持って帰ろう。」

 「サイクルロック?」

 「あぁ、ゾンビに扉を開けるとか知能があるかどうか知らんが、冷蔵庫に来るたびにいちいち確認するのも面倒だから、入り口扉を外から施錠するためにな。」

 「さすが社長さん。」

 

 

 ホームセンターに到着すると、社長の顔が険しくなる。

 

 「どうしたんですか?」

 「いや、前にここに来た時に強奪者に襲われかけて反撃したんだが、その時入り口のバリケードをこのダンプでぶっ壊したんだ。そのバリケードが復活してやがる。どうするかなぁ。」

 「こんにちわ?!は、しないんですか?」

 「それ、もうやった。もしも前と同じ人物が生き延びてて、また立て籠もってたら間違いなく殺されるだろうな。」

 

 しばらく悩んでると、フロントガラス前の装甲からチュィーンと音が聞こえた。

 

 「「撃たれた?」」

 

 フロントガラス前の装甲は25mm厚の敷鉄板を視界確保のためにスリット状に取り付けてある。ここを通り抜けて狙撃するのはプロのスナイパーでも至難の技だと思われる。

 

 「あちゃー、悪い方の予想が当たったな、しかも前回なかった銃を装備してバージョンアップしてやがる。まぁた面倒な事しないとイケないのか。はぁぁ面倒くせーな。」

 

 ダンプの中でリンダに、これまでの経緯を詳しく話した。

 

 「俺をヒドイ奴と思うか?」

 「他の方法があったかもしれないけど、ちょっとやり過ぎかも。」

 「悪い奴を見逃して、巡り巡って自分や身内に被害が出て後悔するなら、先に潰して後悔しない方が俺は精神衛生上良いと思うけどな。身内ってのは、今はリンダやカズミ、あとマイロだな。」

 

 突然自分の名前呼ばれずっと膝の上で寝てたマイロが『呼んだ?』とばかりに立ち上がり社長のアゴを舐め回す。

 

 「食物連鎖の頂点から我々は突然引き摺り降ろされてしまった。強い奴が生き残る。それは自然の中で当たり前の事だ。

 でもそれだけで良いのか?とも思う。突然それまで経験した事のない世界に投げ出され、適応出来ない弱い連中は切り捨てて良いのか?会社でもそうだ。それまで学生だった新人が生き馬の目を抜く社会に放り出された時に適用出来ないからって、解雇するか?適用できるよう教育するだろ?それをホームセンターの奴らはしない。むしろ食い物にしようとした。そんな奴らに生きる価値無いだろう?

 これが以前までなら逮捕して投獄、教育・矯正されてたが今は囚人を養うだけで莫大なリスクを背負わなければいけない。となると、叩き潰す!って答えに辿り着くわけだ。」

 「でも、前回の人と同じ人かどうかは、まだ分からないですよ。ただこのダンプに怯えて先に攻撃したのかも知れませんよ。」

 「そうだな、それじゃぁこちらの要求を伝えよう。っとなると住宅街に行こうか!」

 「社長さん、理由を言わない事が多いから聞いてると?マークが浮かぶ事がよくありますよ。」

 「まぁ、行けば分かるよ。」

 

 ダンプを近くの住宅街に向け走らせる。

 

 「ここでは探し物だ。公民館にあると思うけどな。ホラあった!」

 「あぁ、そう言う事ね。」

 

 二人が見つけたのは地域のパトロールカー、青い回転灯が付いた警察のパトカーのカラーと同じ様なツートンの軽自動車だ。屋根に声かけ用の外部スピーカーが付いている。

 

 「リンダはダンプの後ろをコイツでついてきてくれ。」

 「はーい、了解です。」

 

 再びホームセンター駐車場にて、ダンプから地域巡回パトカーに乗り移った社長が外部スピーカーを使って話しかける。

 

 「あー、テステス。こんにちわ?!ホームセンターの中の人、こちらから危害を加える気は無いのでいきなり打たないで下さい。出来れば話し合いで解決しましょう!こちらは食料を大量に持っています。話し合いに応じてくれれば、それを分け合う事もできます。攻撃してくれば相応の報復を与えますので、そのつもりでよろしくお願い致します。」

 

 パトカーをその場で乗り捨てダンプに乗り込みバリケードギリギリまで近づくとバリケードの向こうから若い男の声が聞こえる。以前の奴らでは無い様だ。

 

 「先程はすまない。こっちの奴が誤って銃を撃ってしまった。怪我は無いか?」

 「怪我は無いです。いつからここに立てこもってるんですか?」

 「夜通し移動して今朝ここにたどり着いた。前に立てこもった連中はバリケードを破壊されて全滅した様だ。」

 「そうですか、そちらにクーラーボックスと発泡スチロールの箱が大量にあると思いますけど、それを譲ってもらえませんか?それからいくつかのサイクルロックも頂きたいのですが。」

 「何に使うんだ?」

 「先程も言いましたが大量の食料を持っていますが、それを運ぶ手段として欲しいのです。もし良ければ食料を分け合う事もできますよ。こちらの人数ではとても食べきれ無い量があるので。」

 「あんた、こんな世の中だって言うのにかなり太っ腹だな。」

 

 そう言うと声の主が離れていく気配があった。

 

 「リンダどう思う?」

 「なんだか偉そうに喋る人でしたね。」

 「これは俺の勝手な予想なんだが、昨日電気が止まったよな?それから奴らは銃を持っている。夜通し移動したとも言ってる。一般人はヤクザでも無い限り銃持つ事も無いし、手に入れたとしてもどう使えば良いのか分からない。ミリタリーオタクなら扱えるのだろうが、訓練もしていない一般人は当てる事さえ難しいと思う。

 最初に打たれた時、ホームセンターからは結構離れていた。誤って撃ったにしてはきちんとこちらに当たっている。ここまで全部繋げて考えると発電所を守ってた自衛隊の可能性が高い。」

 「それが何か引っかかります?」

 「勝手に発砲するほど統制が取れて居ない。多分上官がいない離脱兵じゃないか?

 日本で銃を手にしている事、これは大きな力を持つ事と同じだ。大きな力を持っている人間が抑えられる事なく自由にしてる。そこが問題だ!トラブルの匂いしかしない。

 ここは下手に出て極力トラブルを回避しよう。」

 

 そこまで話した時にバリケードの隙間からオリーブ色の戦闘服を着た自衛官が5名がそれぞれクーラーボックスを持って現れた。小銃をスリングで肩から掛け、腰の拳銃が入っているホルスターはいつでも取り出せる様にストラップが外されている。

 

 「改めましてこんにちは、私はワタナベです。皆は社長と呼びます。気軽に社長と呼んでください。」

 「社長さん、ワタナベって言うの?」

 「ワタナベは偽名だ。」

 

 小声でやり取りする。

 

 「俺はヤマダ、こいつらは同じ隊の同僚で向こうからコジマ、ヨドバシ、ノジマ、ケーズだ。」

 「皆さん初めまして、コッチはリンダ、私の家内です。」

 

 社長は目を片目をシパシパさせリンダに合図を送る。

 軍人なんて、万年女に飢えているだろうから、嫁設定の方がトラブルを少しは回避できるだろう。そんな思いだった。

 

 「はーい、リンダデェス。」

 

 急に片言っぽく喋るリンダに、やりすぎだと口パクと表情で社長はリンダに伝え、自衛隊員達に見えない様にリンダの尻をギューっとつねり、注意した。

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