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13話 懲役刑?

 「さっき社長さんが言ってた大量の食料ってのはどこにあるだい?」

 

 ヤマダが聞いてくる。

 

 「倉庫街にあります。ここから車で20分も行けば到着します。クーラーボックスを荷台に積んで早速出発しましょう。」

 「こちらも携帯食料が尽きてきたところだったから助かる」

 「私たちはダンプで行きますので、ヤマダさん達は少し狭いでしょうが、あの軽自動車でついてきて下さい。」

 

 二台に分乗し出発する。

 

 「なぁ、リンダどう思う?今のところ害は無さそうだが、食料の在り処がわかると、アバヨ!ズドン!ってならないかな。」

 「社長さん考え過ぎじゃない?」

 「そうかな?アイツラも全員偽名っぽかったし、最後の奴なんてケーズって名前だぞ。そんな名字があるか!ってんだ。家電量販店か!他店より\1でも高ければ値引きしますってか?」

 「まぁまぁ、社長さんも偽名だったじゃん。」

 「杞憂に終わるといいんだけどなぁ。マイロどう思う?」

 

 僕?僕わかん無いけど社長スキっと言わんばかりに社長のアゴをペロペロ舐めている。

 

 冷蔵倉庫に到着すると、自衛官達はサッと散開し安全を確認する。

 さすが本職!隙がない。

 周囲の安全が確認されたのか、ヤマダがダンプから降りてこいという仕草をする。

 

 「屋上のソーラーが電気を供給しているらしく、電気が止まった今でも保冷能力を失わずにいるみたいです。」

 

 倉庫内に入ると自衛官達は口々に、おぉ!とか寒ッ!とか、腹一杯食えるッ!とかそれぞれ好き勝手に話してるなかでヤマダだけが冷静に周りを見渡し、突然に宣言した。

 

 「この倉庫は我々が摂取するッ!」

 やっぱそうなったか。

 

 「そんな!これだけあるんですよ。ウチにはすぐにゲロ吐く子とかわいいマイロが居るんです。発見したのはウチの家内ですし、共同利用しませんか?私たちは必要なときに食料を取りに来るだけですから、この倉庫に居座ったりしませんのでお願いします。」

 「ダメだ。」

 

 そう言い放ち銃口をこちらに向けてくる。ヤマダが小銃を構えると残りの隊員が一斉にガチャガチャと音をたてながらこちらに小銃を向けて来た。

 ぉぉ、銃口を向けられるって経験は無いが、背筋にゾクリと来るなぁ。

 

 「はぁ?、こうなる事はちょこっと予想してたんだよなぁ。しょうがねーな。ここで死んだらつまらん。おい、帰るぞリンダ。」

 

 二人はおとなしくダンプに戻り、倉庫の敷地を後にした。

 

 「くっそー、アイツラただじゃおかん。」

 「社長さん、どうするの?」

 「今日はとりあえずコンビニで食料漁って、ホームセンターで今後必要になりそうな物を全部回収して帰ろう。リンダ、巻き込んで悪いな。気分転換に明日S県へ行くか?」

 「そうしてくれるとありがたいけど、アイツラ放ったらかしにして大丈夫?」

 「あんなならず者、放置するわけないじゃないか?本当はすぐに報復したいが、やるにはもう1日か2日は時間がかかる。リンダのS県行きはそれだけ伸びるが良いか?」

 「本当は一刻も早く出発したいけど、アイツラ野放しにしてると、帰ってくる場所が無くなる可能性もあるでしょ?だから社長さんに協力するよ。」

 「そう言ってくれるとありがたい。明日から材料集めだ。かなりハードになるが、よろしく頼むよ。ところでリンダはマニュアル車の運転は出来るか?ウチにあるのはマニュアル車ばかりだから。」

 「一応免許はマニュアルでとったけど、車はオートマしか乗ってないよ。」

 「じゃぁ、今から練習がてらリンダが運転してくれ。」

 

 拠点に戻るとカズミに一部始終を話した。

 

 「それって、倉庫街のイチレイでしょ?昔、事務のバイトした事ある。

 あぁぁ食べたいのあったのにぃ。食べ物の恨みは怖いよ。社長、アタシも報復作戦に参加するッ!」

 「それはありがたいが、雄二の代わりにゲロ子にはユンボに乗れる様になってもらいたい。もしも、俺に何かあった場合に生き延びれる様にな。練習がてら外の残土をキレイに盛土してほしい。出来るだけ高く盛ってくれ。メシの後、運転の仕方を教える。」

 

 一夜明け、日の出と共に出発する。

 

 「社長さん、今日はどこ行くの?」

 「採石場だ。もう一台ダンプを手に入れて、このダンプと合わせて2台でアイツラを閉じ込める。作戦はこうだ!あの倉庫はメインの入り口と裏口通用口の2カ所以外に人の出入り口は無かった。窓も無い。搬入出のゲートは外から南京錠で鍵がかかってたから、出入り口と通用口を土砂で埋めてしまえば、アイツラは出てこれなくなる。その後で丘の上から倉庫屋上に向かってユンボで土砂を撒いてソーラーパネルをダメにしてやる。電力が無くなると倉庫の荷物は腐るだろう。兵糧攻めだ。さすがに銃に真正面から勝負は挑みたく無いからな。」

 「社長さんって、意地悪って言われた事無い?」

 「人の嫌がる事がわかるから勝負に勝てるんだよ。そしてそれは意地悪ではない天邪鬼だ。」

 

 採石場に到着し事務所を覗く。

 もちろんゾンビのチェックは怠ら無い。

 採石場のユンボとダンプの鍵を見つけ出し作業開始。

 

 途中ゾンビが数体出現するも社長のイライラユンボアタックで事も無げに、30分程で積み込み作業終了。

 

 「よく考えると、ゾンビが出始めて初めての懲役刑じゃ無いかコレ?釈放なしの終身刑だ!他の被害が増えるよりマシだろう。リンダ、事務所でトランシーバー見つけたからこれで連絡取り合おう。」

 「アイアイサー!」

 「めっちゃカタカナ英語をありがとう。さぁ、悪い奴を懲らしめに行くか!荷台に土砂が満載されたダンプはブレーキの効きが悪いくなる。排気ブレーキを併用して安全運転に心がけてくれ。車間距離は大きくとって、"急"が付く運転は慎む事!"急"が付く運転は何だ?答えてみてくれ!」

 「ブレーキ、ハンドル、それから発進かな?」

 「素晴らしい。さすが俺の家内だ!」

 「まだその設定続いてるんですか?」

 「まぁ、寂しい事言うな。では気を引き締めて出発だッ!マイロはおいちゃんとこにおいでぇ。」

 「そっちにデレるんかい!」

 

 道中、先導は社長の運転する装甲ダンプと、採掘場で手に入れたダンプそれぞれに、10t近い土砂を抱えたダンプは道にウロつくゾンビを全く影響無く跳ね飛ばし、突き進む。

 

 「そろそろ倉庫が近い。ここからはスピードを落として近ずくぞ!」

 

 トランシーバーに怒鳴る。

 

 「社長さん、どうやって荷下ろしするのか聞いてなかったけどどうすれば良い?」

 「あちゃー、肝心な事を言い忘れてた。とりあえず、バックでダンプのケツを正面入り口ギリギリに付けてくれ。

 少しぐらい建物に接触しても構わん。」

 「はぁーい、りょーかーい。」

 

 撃たれる可能性がある事を言ってなかったけど、判ってるのかな?

 緊張感のない返事がトランシーバーから聴こえる。

 

 「気合い入れてけよ!」

 「はぁーい。」

 

 大丈夫かな?

 

 二台のダンプは倉庫敷地内駐車場に侵入、社長の乗るダンプは素早く裏口に周り、通用口に土砂をダンプする。

 

 ダンプするとは、ダンプトラックの荷台を傾け土砂を一気に落とす事だ。

 

 ダンプし終えた社長はダンプに乗ったまま直ぐに入り口へ周ると、やはりダンプの音に気付いた自衛官から銃撃を受けていた。

 

 「偉い!撃たれながらもちゃんと入り口にケツをつけてる」

 

 社長は装甲ダンプの運転席をリンダの乗る運転席に近づけ停車。ちょうど2台のダンプがすれ違う形で停車させ、窓を開け地面に降りず直接運転席の窓からリンダの運転するダンプへ滑り込む。

 

 「よくやったリンダ、大丈夫か?」

 「入り口に停車して直ぐに撃たれ始めた。怖かったよぉ?。」

 「それは済まなかった。ダンプはこのPTOって書いてあるスイッチを押してサイドブレーキと反対側にあるレバーを引けばホラっ、バンザイ開始だ。エンジンの回転数に応じて荷台が傾斜していく。エンジンを吹かせばそれだけ傾斜するスピードが速くなる。」

 

 全ての土砂をダンプすると銃撃は止んだ。

 

 「怖かったろうが、念のためあと2回は土砂をダンプしに来よう」

 

 2往復し、入り口が完全に封鎖さた。

 

 「3杯分の土砂だ、約30tくらいあるから脱出は諦めるだろう。中には売るほど食料があるから、ギリギリになるまでアイツラはのほほんとしてるはずだ。最後に回送車を探しに行か無いとな。当てはあるが、仕事で置き場から出動して無い事を祈ろう。」

 「了解しました。ところで気になってたんですがPTOって何の略ですか?」

 「俺も知らん。ひょっとしてあれか?その場その場で雰囲気に合わせた服を着るってやつ。」

 「それTPOね。」

 「保護者の会合か?」

 「それPTAね。」

 「環太平洋・・・」

 「それTPPね。」

 「未確認飛行・・・」

 「UFO!」

 「すまん、学がない俺を許してくれ。おっ!そろそろ目的地だ!」

 

 土木の仕事場は同じ現場で長く働く事はない。ダム等の大型構造物であれば同じ場所で2年とかはあるが、基本的に長くとも2ヶ月位で次の現場へと重機と供に移動する。だから必ず運送会社と契約を結んで、いつでも直ぐに動けるようにしているのが普通だ。

 

 「回送車はここにあるはずだが・・・。あった!事務所に鍵があるはずだから取ってこよう。」

 

 事務所の入り口でいつもの挨拶をする。すると奥からゆっくりと何体かのゾンビが現れた。

 

 「あれれぇ?配車係りのパンチのおっさん、成仏しろよ!

 オールバックダンディ専務、お世話になりました!

 イケメン崩れの運転手、合コンはいつ開くんだよ!

 お前はシラネっ!お前もシラネっ、逝ってヨシ!」

 

 1人1人、卒業式の様に生前の特徴や思い出を言いながら社長は鉄筋を頭に叩き込む。

 ある意味卒業式だ。

 

 「知り合いをゾンビとはいえ、手にかけるのはちょっと心が痛いなぁ。あの自衛官達の様にムカつく奴の時はスッキリするんだろうな。正月に新品のパンツを履いた時の様にな。」

 倒したゾンビを前に少しだけやるせない気持ちになる社長だった。


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