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コワモテ!  作者: リソタソ
誰がための
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32/105

前を向く・・・・・・あきらめない!

「よぉし!! 俺はあっちを探すから、叶恵ちゃんは向うを探してくれ!!」

「あ……うん」

 私は、懸さんのバイクに乗せられて、一旦駅前の繁華街まで出た。学校に来ていないワンちゃんを捜しにという訳だけど、懸さんは大丈夫なのだろうか。出席日数的な意味で。

探すのなら二手に分かれて方がいいってことで、私はバイクを下ろされたところだ。……それならなおのこと私だけでもいいような気がするんだけどなぁ。だって、私、ワンちゃんの家の場所知っているし。休んでいるなら、家にいるんじゃないかな? と、懸さんに言えばよかったんだけど、そんな間もなくって、さっさと黒煙をまき散らしながらバイクで突き進んで行っちゃった。ワンちゃんの家とは逆の方向にだ。

 みるみる遠くなっていく懸さんのバイクを見送る。さて、どうしようか。でも、ワンちゃんに会わなくっちゃ意味がないから、ワンちゃんの家に向かってみようかな。

 懸さんがこのみちゃんに電話を掛けたのは、ワンちゃんがいるかどうかを確かめるためだった。授業中なのに電話を掛けてしまったものだから、このみちゃんはカンカンだったみたい。メールの文面でも怒っているのがよく分かったって懸さんが言っていた。それと、きちんと返信してくれたのは、私のためだとも言ってくれた。自惚れじゃないけど、多分、本当に言う通りだと思う。今回もまた、いろいろな人に助けられちゃったな。

 今だってそう。こうやって学校の外に出て、町を歩きながらワンちゃんを探しているのも、懸さんのおかげだ。でも、最後の最後位は、自分の手で決着を付けなくちゃいけないと思う。頑張れ、私。すれ違う町の人達の眼がなんだか痛いような気がするけど、そんなこと気にしちゃダメ! ……え?

 私はもう一度あたりを見回した。町の繁華街は、ほんの少しだけ人が少ない。それでも、おばさんや若い主婦、平日に休みを貰える仕事をしているのであろう、若いカップルが一組二組いるだけ。そんな中に私はぽつん、と制服姿で立っているという状況だ。平日の、朝も朝。ちょうど九時半だ。

 そりゃあ、みんな私を見る目が冷たいに決まってるよ!! 私学生だもん! JKだよ、JK! それなのにこんなところで普通に歩いていたら浮きまくるに決まってるじゃん! ど、どう見えているんだろう。やっぱり不良高校生?

 さっきは気にしないってドヤ顔でもしそうなくらいな勢いで思っていたけれど、やっぱだめだぁ……私みたいな度胸の無さすぎる人間に、こんなとこにいるのなんて……うぅ、懸さんが羨ましい……。一目見たら高校生だなんて信じられないし、その上バイクだし、滅多に高校生だなんてバレることないんだろうなぁ。

 とりあえずここを抜け出さないと、もうちょっと先に行けば、人の少ない通りに出るはずだから、その先に行けばワンちゃんの家だ。

 人ごみ、と言うほどにたくさん人がいる訳じゃないから、そこまで人とすれ違う訳でもない。おかげで大通りを抜けて、人気の少ない住宅街の路地に出るのはあっという間だった。よし、抜けた。後はワンちゃんの家に向かうだけ。

 道なりに歩みを進める。道の両脇は石塀や住宅の門が並ぶんでいる。道先を左に折った曲がり角が見える。そこを曲がれば、ワンちゃんの家までの道のりだ。

「キャン! キャン!」

 曲がり角の向こうから、子犬の鳴き声が聞こえる。石塀に反響しているのか、やけに音声が大きかった。

 曲がった直後にぶつかってしまわないように、私は道の右側に寄ってから、壁伝いに歩く。ちょっと距離は伸びてしまうけれど、突然私が目の前に現れたら、仔犬も驚いてしまう。軽い事故も起こさないように、用心位はしないとね。

 そして、角に差し掛かろうとした時だ。

 子犬が飛び出してきた。突然のことで、横目でその仔犬の姿と、仔犬の後ろにぷらぷらと所在無げについてくる赤いリールだけしか確認できなかった。だけど、それだけでも私はかなり驚いて、身動きが取れなかった。

「キャン、キャン!!」

 子犬は、私の腰のあたりにしがみ付くように飛びついた。一応、腰に手は届いたのだけど、足が短くって、すとん、と降下する。けれど、その子は器用に二本の後ろ足で立って、私のスカートの端に両前足を当てていた。舌を出して、ふわふわの尻尾を振りながら、つぶらな真っ黒な目で私を見上げてくれている。

「カルボナーラ、ちゃん?」

 見覚えのあるその顔に、私はその子のヘンテコな名前をつぶやいた。

「きゃん!」

 答えるように、カルボナーラちゃんが鳴いた。ワンちゃんが飼っているはずの仔犬。私が、海浜公園で見つけた、あの子だ。

 ざっ、と足音がして、その方をぱっ、と見上げる。

「ワンちゃん……」

 ワンちゃんがいた。きっとカルボナーラちゃんのお散歩の途中なんだろう。Vネックの紺色のシャツに、ジーンズ姿の簡素な私服姿だ。

「……」

「……」

 いざ対面すると、何を口にすればいいのやら……。はっはっはっ、とカルボナーラちゃんの荒い息遣いだけが聞こえる。

「……学校、抜け出して来ちゃった」

「そうだな」

 もうすっかり授業は始まってしまっている時間だろう。平日に、こんなところに高校生が二人いるのも、おかしな状態だ。

「失敗しちゃったの、私」

 それに、こんなことを急に口走ってしまうのも、おかしな話だ。

「やっぱり、間違ってたみたいだね、私。自分だけじゃ、あんなやり方じゃ、真虎君を助けられないってずっと言われてたのに」

 ワンちゃんは屈んで、カルボナーラちゃんのリードを取った。自然と、私の方に近づいていた。

「ごめんねワンちゃん。ずっとずっと、心配かけて。ワンちゃんの言ってたこと、やっと伝わったよ。……でも、遅いよね」

「別に……。心配なんかしてねぇよ」

「してたよ……。それは伝わってたから。それでも、一人で突っ走ってた。馬鹿みたいに、どうすればいいか分かんなかったのに、自分の気持ちを押さえて……無理、してたんだと思う。ワンちゃんは教えてくれてたのに」

「いい。気にすんな……俺も、ムキになってたから……」

「ムキに? ……なんで?」

「……いや、やっぱりムキになってない」

 ワンちゃんは拗ねたようにそっぽを向いた。ちょうどカルボナーラちゃんも私の方からはなれて、ワンちゃんに目を向ける。私と同じように、どうしてムキになったの? と言っているみたいだ。

「え~~、教えてよ~~」

「きゃん、きゃん!」

 カルボナーラちゃんも、一緒に抗議してくれるみたいだ。

「そこ、気にすんなよ……」

 口を尖らせながらも、目は笑っていた。ワンちゃんとの仲直りは一応終わったかな? それが一番の目的だった。ワンちゃんとの仲直り。まずはそこから済ませてしまおう、と言ってくれたのは懸さんだった。それを言ったら、驚かれるかな?

「……で、これからどうするんだ?」

 これから、と、私はワンちゃんの聞きたいことを即座に理解した。

「私、失敗したけど、諦めないよ」

 彼が聞きたいのは、真虎君のことだ。私が彼を救うことをあきらめるかどうかだ。

「やっぱり諦められない。頼まれたからとか、そういうのじゃなくって、私がそうしたいって気持ちも……否定はできないけど……やっぱり、あのまま見棄てることなんてできないよ。見棄てちゃったら、真虎君、一生あのままだから」

「……そう」

「ダメ……かな?」

 自信なく苦笑いを浮かべると、ふん、とワンちゃんが鼻で笑った。

「いいんじゃないか? 止めろとはもう言わない」

「ありがと……交渉とかは絶対にしないから、安心してよ」

「……分かった」

「それと……もしも私一人でどうしようもなくなったら、手伝ってもらってもいいかな? 私一人で全部できるなんて、やっぱり思えなくって……」

「分かった。手伝えたら手伝う」

 そう言うと、ワンちゃんは私頭を撫でてくれた。乗せられた掌が、ちょっと重たくって、うつむき加減になる。足元で、羨ましそうな目でカルボナーラちゃんが見上げていた。

 ほんのり、目に涙が浮かぶ。さっき、あれだけ涙を流したのに、まだ残ってたみたい。でも、哀しい涙じゃない、悔しい気持ちもない。ただ、許してもらえて、手伝ってくれるって言ってくれて、優しく受け入れてくれたワンちゃんの懐の温かさに、涙を流さずにはいられなかっただけだ。

「……どうした?」

 ワンちゃんの手が離れる。

「ううん……、なんでもないよ!」

 目元を拭うと泣いてしまったことがバレちゃうから、そのままで、だけど、目じりに堪った涙がこぼれないように、目じりの皺を思いっきり強く寄せて、精一杯できる私の嬉しい気持ちを、とびっきりの笑顔を作って見せる。

「……そうか。なら、良かった」

 ワンちゃんも私の顔につられてなのか、それとも安心したからなのか、そっと、微笑み返してくれ……。

「あああああああああああああ!!!! ワン公!! こんなところにいやがったのかあああああああああ!!!!」

 耳がキーンとなる。ばたばたと、近くの家の屋根から雀やムクドリなどの小鳥が何事かと驚いて、飛びさって行く。カルボナーラちゃんなんか、怯えて地面に伏せてしまった。

 懸さんが、私の来た方向から、走って来ていた。

「懸さん……バイクは?」

「叶恵ちゃ~~ん! 適当にその辺の駐輪場に停めて来たぜ! 商店街はバイクじゃ通れねーからな……」

 懸さんは嬉しそうに話す。やっぱり、この人はいつでも楽しそうだ。だけど、できればまだ来てもらいたくはなかったんだけどなぁ……。そんなことを言っちゃうと、恩をあだで返してるみたいだけど、もうちょっとワンちゃんと二人きりで……。

「なんでお前がいるんだ」

ワンちゃんは睨みつけていた。

「〝あ~~~~!? テメェを捜しに来てやってたんだろうが!」

負けじと、懸さんも睨み返した。

「誰も頼んでねぇっつの」

「俺も好きでお前を捜しゃーしねぇよ。お前の為でも、俺のためでもねぇからな!」

この二人、本当に犬猿の仲だよ……。あー、なんだかすぐに喧嘩しそうな雰囲気。

「つーか、そんなフリーターみてぇな格好で町を歩いてんじゃねぇ! 俺達高校生の、青春の本分は学ランだああああああああああ!!!」

 がしり、と懸さんがワンちゃんの腕を掴んだ。

「んなっ!?」

 その拍子に、ワンちゃんは手に持っていたカルボナーラちゃんのリードを離してしまう。けれど、カルボナーラちゃんは逃げることなく、その場に臥せていただけだった。

「つーわけで、お前の家に行って、学ラン着せるぞ!! うおおおおおおおおおおおお!!! 青春だああああああああああ!!!」

 ずるずると、ワンちゃんが引きずられていく。

「待て!! おい! どこに行くんだ!」

 しかも、ワンちゃんの家とは全く逆の方向に。そして、商店街の方に進んで行くと、きっと駐輪場がその方向にあるのだろう、途中で右に曲がってしまった。

「……はは、残されちゃったね」

 私はしゃがんで、カルボナーラちゃんの麦の穂みたいな背中の毛を撫でてあげる。

「きゃんきゃん!」

 カルボナーラちゃんは、怖かった懸さんがいなくなったせいか、元気に声を上げる。

「仕方ない。学校に戻らなくてもいっか」

 とりあえず、カルボナーラちゃんをワンちゃんの家まで連れて行こう。リードを取ると、カルボナーラちゃんは尻尾を振って立ち上がった。

「きゃん!」

 子犬の鳴き声が、黒いアスファルトと、灰色の石塀に反響して、どこまでも広い青空に解けて消えていった。



ども、作者です。この章のラストだと言うのに、また更新を忘れていました。


折角なので、あとがきっぽいことをたまに。


苦しかったね、書くの(笑) これまで、ラブコメだから遊びまくった内容にしていましたが、


ちょっとシリアス入れてみたいな、という思いがあり、


また、もともと不良とはまた違い怖いタイプのキャラクターを出すと決めていたので、


ここら辺で真虎のお話を持ってきた所存です。


本当はまだこのみが関わるお話を考えていたのですが、前の章で(読んでない人は読んでね)


もう、このみは変な事しないんじゃないか、と思ったので、急きょ変更いたしました。


ただ、書くのに非常に時間がかかってしまいました;;


真虎はある程度裏があるキャラクターですし、背景設定はきちんと作っておかないと、と思い、


かなり作り込んで、わざわざ裏に関わるストーリーまで考え、含みを持たせるのに数か月、


書いてみたら叶恵がどんな行動をすべきなのかに悩んで数か月、


もろもろの事情で書くのが遅れて数か月、


と、大変時間をかけて、真虎編第一章のこのお話が出来ました。


この真虎というキャラクターが今後どうかかわってくるのか、気になっているとうれしいな、と思っています。


この章を投稿し始めてからも、読んでいただける方がちょこっと増えているようで、非常に嬉しく思います。


なにぶんまだまだ稚拙で、なおかつこの作品の方向性とはどこに向かっているのか、というのが作者自身もイマイチ分かっていないという体たらくです。


ですが、今後も楽しんで読んでいただけたら光栄です。


その出鼻をくじくようでなんですが、実は次のお話が、


カケテイマセン


ですので、もしかしたら来週はお休みになるかもしれません。


何とかこの土日で、挽回できるところまでは挽回するつもりですが、平日はどうも書く時間を取れなくて、歯が擦り切れるほど歯ぎしりをしたくなるくらい悔しい思いをしています。


間に合うように、善処します。


次回は完全に雰囲気を変えたお話にするつもりですので、首を麒麟みたいに長くして待っていてください。


ではまた、この作品、または別の作品で、お会いできたら嬉しいです。

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