私といない間の・・・・・・ワンちゃんと!?
叶恵が変態紳士に連れ去られた頃、大神一和は昨日拾った子犬の散歩をしていた。
「晴れて良かったな」
返事をするように子犬が「きゃん!」と可愛らしい鳴き声を上げる。リードに繋がれた子犬に、一和は笑いかけた。鬼の目にも涙、ではなく、鬼神の顔にも笑顔だ。
しかし、彼の笑顔もあっさりと無くなった。
「大変だ大変だ大変だ~~~!!!」
つい昨日初めて聞いたけれど、これからも忘れられない特徴的な声が聞こえた。前方に人影。それが声の主だった。茶髪のマッシュルームヘアーに眼鏡、背の小さい全く年上とは思えないあの、河村、と言った男だ。
「ちっ、一人で会うような人間じゃねぇな」
くい、とリードを引っ張って、一和は道を変えようとした。場所は町中、否が応でも小道がたくさんある。そこを通って行けば河村に顔を合わせなくても済むルートはいくらでもあるだろうと踏んでのことだった。
子犬も一和の指示に従って彼の後に付いて行く。しかし、着いて来たのは子犬だけではなかった。
「おーい!! 待ってくれよ~、大変だ、大変なんだよ~」
道を変えて歩いているのに、河村はあろうことか彼を追いかけて来ていた。
「……くぅん?」
どうやら子犬は気になるようで追いかけてくる声に時折後ろを振り向いていた。
「見るな。あんまりいい人間じゃない」
一和は河村のことが嫌いだった。理由は分かっている。それを認めるのも、なんだか癪なのだが。
「待ってくれって~! ワンちゃ~~~~ん!!!!」
河村の一言に、即座に一和は後ろを向き、河村に狙いを定めて走り出した。そして、彼のキノコ頭を握りつぶすように大きな手で掴む。
「や、やっと、振り向いてくれたのに……またこうなるのね……いだだだだだだだ!!!!!」
「テメェ、良くも俺のことをワンちゃんって呼びやがったなぁあああ!!!!」
一和の怒りのボルテージは最高潮だった。握力が一気にフルパワーになる。メキメキと木が折れるときのような音がしていた。
「ぎゃあああっ!! し、死ぬっ!!! 死ぬぅううううううう!!!!!!」
今まさに白目を剥かんとする河村。そんな河村に見かねたのか、一和の全力疾走になんなく付いて来た子犬が「きゃん」と一和をなだめるように鳴いた。
「……ちっ、すまねぇ」
河村が解放される。
「ふぅ、いやいや、謝らなくたっていいよ~、なんせ君が呼ばれたくない名前を呼んでしまったみたいだし」
大人の余裕を見せようと、謝る一和を寛大な心で許す河村。しかし、
「こんな情けないところ見せちまって。散歩の続き、やるぞ」
謝っているのは犬に対してだった。
「俺は!? アイアンクローされて三途の川まで見えちゃった俺に対する謝罪は!!???」
「あ!!!?」
三白眼で睨みつける一和を前に、河村は蛇に睨まれた蛙でしかなかった。
「……ごめんなさい」
一和、他人に厳しく、動物に優しい男。
「は!! 謝ってる場合じゃなかったんだ!! 大変だ、大変なんだよ!!!!!」
河村が、先ほどまで騒いでいた様子に戻った。事態は急を要する、見てそれが分かるような慌てぶりだった。
「るっせぇ、俺にはカンケーないだろ」
一和はやはり他人には厳しいようで、河村が慌てふためくのを放っておいて、散歩に戻るつもりらしい。
「お願いだ! 聞いてくれよ!!!」
それでも一和に付きまとおうと追いかける河村。
「だから、煩いっつってんだろ! テメェが大変だろうが、なんだろうが俺には関係ないっつの!!!」
怒鳴る一和。これぐらいすれば、普通の人なら怖気づいて逃げ出すなり、その場にへたりこむなりするはずだ。だか、河村は突然の怒鳴り声に戦々恐々としていながらも、一和に話しかける。
「た、確かに、君個人には関係ないかもしれない。そもそも、君に直接害が及ぶことはない」
「そりゃそうだろ、テメェのことが俺に関係するわけ……」
「違う! 大変なのは叶恵ちゃんなんだ!!!!」
一和が、河村の胸ぐらを掴んで、ぐっ!! と持ち上げた。
「ぎゃああああああああっ!!!! なんでまたこうなんのおおおおお!!??」
「テメェ!!! なぜそれを早く言わなかった……!!!」
片手で持ち上げた河村をひたすらに揺すぶる。
「やめっ!!! 苦しいっ!!! 言わなかったっていうか、言えなかったんだよおおお!!!! 死ぬっ!!! ぐえっ!! 息できなっ!!!? 死ぬから、離してえええ えええっ!!!!!」
一和が河村から手を離す。ぽすんと河村は尻餅を付いた。
「で……どう大変なんだ?」
「こ、こいつ……ちょっとくらいは非を認めてくれたって……」
咳をしながら、河村がぼそぼそと呟くと、一和がガンを飛ばす。
「あ、なんか言ったか?」
猛禽の眼光。震えあがった河村は「ひぃいいいいいいいい!!!?」と声を上げて、正座した。
「なんでもないですうううううう!!!!」
「じゃあ、さっさと言え」
年下に命令されるなんて……とほほ、と思いながら、河村は彼を見上げるとすぐに命令されたとおりに事の顛末を話した。話さないと、殺されそうだった。
「俺、見ちまったんだよ。叶恵ちゃんが、おっさんに連れられてラブホに裏口から入って行くの」
「なん……だと!? 見間違いじゃねえのか!?」
「そんなわけあるもんか!! 未来の彼女のことを見間違えるなんて絶対にないよ~……ぐえっ!!!?」
ごすん、と踵落としがキノコの頂点に振り下ろされた。
「ごめんなさい。言い過ぎました。でも! 見間違いじゃないってのはほんとなんだ!!! 連絡しても全然つながらないんだ! 疑うんだったら君も電話かけてみろよ!!」
一和がスマホを取り出して電話をしようと操作する。しかし、すぐに彼の手が止まった。
「……どした~?」
「おい、お前のスマホ貸せ!!!」
「え!? あ、はい……」
おずおずと鞄からスマホを差し出した河村。ロックを解除して、一和は叶恵のアドレスを探し出してすぐに電話を掛けた。
「もしかして~、叶恵ちゃんのアドレス、知らないの~?」
もう一発、余計なひと言を挟んだ河村の頭に踵が落とされた。
連れ去られた部屋の隅で、私の鞄の中のスマホが鳴っていた。けれど、取りに行くことができない。誰からかは分からないけど、今すぐにでも助けを呼びたいから出たい。何度も何度も鳴っているんだけど、取ろうとすると変態紳士たちに妨げられる。私は、何もできないまま、ベッドの上に座っていた。
まだ、何もされていないし、何かをしろと強要されてはいなかった。その訳は……。
「俺がここまで連れて来たんですよ!! まず最初にきがえてもらうのは俺の持ってきた制服に決まってるでしょ!!!」
「そ、それは卑怯なんだな。そ、それに、制服よりもブルマの方が興奮するんだな」
「ブルマのどこがいいんだよ! ここはもっとも裸に近いスク水の方がなぁ……」
変態紳士のみなさんが、絶賛口論中だからだ。
い、今のうちに逃げるか、スマホを取るかできないかな……でも、ちょっとでもベッドから降りようとすると、全員が私の方を見て、
「「「そこを動くんじゃねぇ!!!!」」」
と息の合った一言を言ってくる。……仲良いじゃん、あんたら。
このまま、延々と言い争いをしててくれると助かるんだけど……。
「仕方ない、ここは……」
スク水紳士がまとめ始めた。私の願い、神様はちっとも聞いてくれないよぉ……。
「野球拳で決めようじゃないか」
「なんでそうなるの!!!?」
い、嫌だよ、男の、おっさんが目の前で野球拳をする姿なんて私みたくないよ!! って言うか、そんなことしてる間に私逃げるよ!!! って、あれ? つまり、私にとって最大のチャンス!?
「おいおいおい! そんなことする意味が分かんないですよ。あの子が脱ぐなら話は分かるんスけど」
あー!!! 私について何も言わないでー!!
「そ、そうなんだな、もし僕達が夢中になっている間に逃げられでもしたら、大変なんだな」
うぅ……希望、潰えたり……。
「その点は考えとるわい! あの子も参加させるんだ」
いやああああ!!! 脱がされたくないぃいいいいいい!!! 自分で脱ぐんだけどね、野球拳は。
「それじゃあ、勝敗はどうやって決めるんですか?」
「もちろん、一番最後まで服を一枚でも着ていたものの勝利。勝った人が好みの服を着せられる」
「は、裸になったら、負けということは分かったんだな。でも、もしもこの子が一番最初に裸になったら、どうするんだな?」
「その時は、一番服が残っている奴のを着せるということでどうだろう」
「へぇー、そいつはいいですねぇ……というわけだ、お前にも参加してもらうぜ?」
制服紳士が私の方を見つめて言った。さ、参加するしかない。でも、でも……。
「そ、それじゃあ、私が全員にかったらどうするの?」
その問いついて、彼らは全く考えていなかったらしい、「どうする」「どうしようかななんだな」「どーするんすか」とこそこそと話し合う声が聞こえる。
こ、ここでこのまま黙ってたら、ダメだ。ここは思い切って……。
「私が勝ったら、あなたたちは何一つ妨害もせずに、私がここから出ることを許可する、という条件でお願いします。それだったら、私も野球拳……やっても……い、いい、です」
さ、さすがに恥ずかしいよぉ、まさか、まだ恋の一つも知らないうちに、こんなことを言わなければならない羽目になるなんて。
「こ、この子も乗り気だし、他に案もないから野球拳をするんだな」
「仕方ないですね……いいでしょう、その条件、飲みましょう」
「よっしゃ!! じゃあ、早速始めるぞ! や~きゅ~う~す~るなら~」
陽気に歌い始めるスク水紳士。
よし、何とかうまくいった。このまま、勝ち抜けば、何とか脱出することができる。よぉし! 絶対に負けない! みんなに全戦全勝で勝ってやる!!!!!
……あれ? よーく考えてみれば、私が勝てば服を脱がなくていい。でも、負ければ脱ぐ。それは、変態紳士のみんなも、同じ……ってことは、私が部屋を脱出するためには、全員を全裸にさせなくちゃいけないってことおおおおおおお!!!!!!!!?
やだあああああああ!!! おっさんの全裸いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
「くそっ、全然出ねぇ」
「ほーら、言った通りだろう~?」
ラブホテル内で混沌とした宴が繰り広げられようとしている最中、一和は悔しそうに電話を切った。
「くそったれ!!!!」
そして、スマホを地面にたたきつける。
「俺のスマホが何をしたって言うんだあああああああああああああ!!!!!!!!!?」
粉々に砕け散る液晶、飛び散るマイクロチップ。駆け寄る河村。まるで愛しい我が子を抱きしめるかのように、スマホを手に取る。
「うぅ……」
「おい! 泣いてねぇで、さっさとアイツのいるラブホを教えやがれ!!!」
「スマホについても謝罪なし!? 血も涙もないのかお前はあああああああ!!???」
「……早く、言え」
一和は一気に声のトーンを落とす。そうすると余計に怒って聞こえることが良くあるように、河村もちびりそうなくらいの恐怖を感じていた。
「あ、はい、すみません」
涙を堪えて、河村は説明を開始した。ここから大通りを挟んで、向かい側の裏通り方面にあるいくつかさびれたビルが並ぶ人気の無いところに、そのラブホテル「学習の部屋」があるらしい。
「ちっ、あの辺は全然行った事ねぇからな」
さすがに十六年間この町にいても、一和の年齢でラブホなんて縁遠い場所に行くはずもない。地理感を掴むのも難しかった。だが、場所は聞いた。後は全力でそこを目指すだけだ。
「……ところでよ、お前」
「あ、はい、なんでしょうか?」
「なんであいつが連れ去られたホテルまで突きとめといて、自分は何もせずにのこのこ俺を探しに戻ってきやがったんだ?」
ははは、と河村は笑いながら頭を掻いた。
「いやぁ~、俺喧嘩全然強くないもんで~、昨日会ったワンちゃん様なら~、喧嘩強そうだし~、叶恵ちゃんのこと好きそうだったから助けに行ってくれるかな~って思って~」
「ふん!!!!」
本日三度目の踵落としが河村の頭に落雷のように落ちた。
「ぎゃぶっ!!!!!!!?」
「ったく、なんて情けねぇ野郎だ。お前はそこノビといて、カルボナーラの面倒でも見とけ!!! ちょっと待ってろよ、カルボナーラ!!」
「きゃん!! きゃん!!!」
子犬のカルボナーラは、行儀よく座って尻尾を振っていた。
「か、カルボナーラって、何よ~」
頭をくらくらさせながら、一和の後姿を見送りながら、河村はつぶやいた。
一和は大通りまでは一気に駆け抜けた。だがさすがに夕方と言うこともあってか、人が多く、うまく走り抜けようにも、信号などに妨げられてしまう。
このままじゃ、間に合わないかもしれない。
一和の頭の中に一抹の不安がよぎる。だが、なんとしてでも叶恵になにかある前には絶対に間に合わないといけない。
「……他の足がありゃ、もっと早くに着けるってのに……」
さらに、走るだけでは自身の体力もどんどん消費してしまう。現に、ここに来るまででも結構な距離を走ってきた。このままのペースでラブホまで行くのはほぼ不可能だ。
しかし、不安にさいなまれながらも、彼は走った。大通りの人がたまっている場所を避けて、人の少ない弁当屋の前を走っていたとき、歩道に寄せて停められていたバイクが彼の視界に入った。
見覚えのあるバイクだった。
「……こいつは、懸の……!」
つい昨日に見たばかりの懸が乗っていたバイクだった。バイクがあれば、時間は一気に短縮できる。
「よし、パクるぞ」
免許はない。だが、これを使わない手は考えられなかった。一和はバイクに跨る。
「お前! 俺のバイクになにしてんだ!!!?」
丁度その時、弁当屋から袋を引っ提げて出てきた懸に見つかった。
「って、お前、一和かよ!!! なに俺のバイク泥棒しようとしてんだ!!」
懸が怒るのももっともだった。
「悪い、ちょっと借りるぞ」
「借りるじゃねえ!! どうしようってんだよ、俺のバイクを!!」
ちっ、と一和は舌打ちをした。説明をすれば貸してくれるのは間違いないけれど、そんな時間も惜しい。端的に言ってしまい、すぐにでも出発したいと一和は思っていた。
「叶恵のためだ。ちょっと借りていく」
「なにぃ!!? お前、俺の叶恵ちゃんのためだってええええ!? な、何をする気なんだ!! バイクに乗ってボーイミーツガールするつもりかああああ!?」
一和は目算を誤った。懸がもうすでにバイクに手を掛けている。もう、パクって行くのは難しそうだった。
「ちっ、しゃーねぇ……急がなくちゃならねぇんだ。叶恵が変態どもにラブホへ連れてかれたらしい。助けに行くために、こいつを借りるぞ」
時間のロスでしかない。だが、懸を納得させるには今ここで説明をするより他は無かった。
「なにぃいいいいいいいい!? そいつは本当か!!?」
大げさに驚いた懸。
「ちょっとどけ!!!」
彼はそのまま、一和を押しのけて、バイクに乗り込んだ。
「何しやがる!!?」
「決まってんだろ! 助けに行かねーと!!」
「それは俺の役目だ!!」
「お前の役目って言ってもよ、お前バイク運転できねーだろ。それに、キーは俺が持ってるから、運転できんのは俺だけだろ?」
一和はすっかりキーのことを失念していた。くっ、と声を洩らす。走って行くよりほかはなさそうだった。一和はまた、走り出そうとバイクの脇を通り過ぎようとした。
「おい、どこに行く気だ?」
そんな一和に懸がヘルメットをかぶりながら声を掛けた。
「どこって、そりゃ……って、うわっ!?」
懸が一和に向かって何かを投げた。それは黒光りして夕陽を照り返していたヘルメットだった。
「乗れよ。俺はどこのラブホに行けばいいのかわかんねぇ、お前はそれを知ってるんだろ?」
「ああ」
「だったら、一緒に行こうぜ。ホテルの名前さえ教えてくれりゃ、大体は分かる。乗りながら教えてくれや」
「くそっ、仕方ねえ」
今は、少しでも早く叶恵のもとに行かなくてはならない。背に腹は代えられない。
「貸一だからな。恋敵に貸を作れるなんて、うーん! 青春だああああああ!!!」
「誰が恋敵だ!!」
「なぁに照れてやがんだよ……まぁいい、さっさと行くぞ!」
キーが回され、バイクにエンジンがかかった。
「で、どこに行けばいいんだ?」
「『学習の部屋』ってとこだ」
「了解。『学習の部屋』だな。じゃあ、トップスピードで行くからよ! しっかり捕まってろよ!!!!」
バイクが、快速で走り始めた。
二人を乗せて走るバイクが、怪しい夕闇が忍び込んだ裏通りを進む。
「なぁ、一和」
「……なんだ?」
「叶恵ちゃんがラブホに連れてかれる様子って詳しく聞いたか?」
「聞いてない。それがどうかしたのか?」
「暴れてたりしてりゃ、無理やり連れられたと思うんだ。でも、暴れてなかったら……」
「同意の上とでも言いたいのか?」
風を切る音でさえ無視して耳に飛び込んでくるような、一和の低い声を懸は聞いた。間相当怒っているのが容易に想像できる。
「そんな同意してエンコーするような女の子じゃないって、お前が一番わかってるだろ?」
「……そう、だな」
「多分、誰かに騙されでもしたんだろ」
「誰かって……まさか!?」
「想像に任せるよ。多分、俺も同じ人を想像している。ったく、まぁ、アイツがどうしようが俺は別に咎めるつもりはないけど……この件は俺の仲間が深くかかわってるって考えて間違いなさそうだし……オトシマエは、俺に付けさせてくれ」
「オトシマエって、俺も我慢でき……」
「お前は叶恵ちゃんを守ることに集中してくれよ、ワンちゃん!」
ごっ、懸の後頭部に頭突きが決まり、バイクがふらふらと蛇行した。
「あぶねーだろコラ!」
「そう呼ぶなつったろうが!!! ったく、分かった。ホテルに着いたら、俺はまずあいつを守る」
「いてて……ああ、頼んだぜ」
そうこう言っているうちに、目的地のホテル『学習の部屋』が見えてきた。
「よっしゃ! このまま突っ切るぜえええええ!!!!!」
「……はあ!?」
懸の運転するバイクは、全速前進しながら歩道を乗り越え、そのまま正面のガラス戸へと突っ走る。
「おまっ! 何する気だ!?」
「青春爆走おおおおおおおおおお!!!!!」
前輪が持ち上がり、後輪だけのウィリー状態になる。それから、自動ドアのガラス戸に、思いっきり、バイクの前輪を叩きつけた。
パリーンとガラス戸を破壊して、バイクはラブホに突入して停止した。
「ふぅ、突入完了!」
一息吐く懸。
「ふぅ、じゃねーよ!!! なんでこんなバカみたいなことしやがんだ! 普通に入れば良かっただろうが!!」
「えー、それじゃあ、ちっとも青春! って感じしないじゃんか」
「バイクで突入しても青春はちっとも感じねーよ!!!!」
「あ、あんたらは何者ですか! 警察呼びますよ!!」
二人に向かって、一人のスーツを着た男がやって来た。細身の、喧嘩もちっともつよそうではない普通の男。どうやら、受付の人らしい。
「お、ちょうどいいぜ。一つ聞きたいんだがよ、ここに女子高生を連れて入って来た男を知らねーか?」
懸はマイペースにバイクから降りて男の問いかけていた。
「はぁ!? 知らないですよそんなの。それに、うちの店は未成年はお断……」
「じゃあ、ちょっと中入らせてもらうぜ」
懸は返答をちょっと聞くやいなや、受付のルームに入って行った。
「何があるんだ?」
「受付には、マスターキーと監視カメラがあるはずだ。これで、どこの部屋に叶恵ちゃんがいるか分かるし、入るための鍵も手に入るって訳だ」
「あーーーー!!!? 君たち何をしてるんですかあああ!!!?」
「るっせぇ、ちょっと黙ってろ」
ルームに入って来た受付の男をとりあえず、一和は一発顔面にパンチを入れて伸しておいた。
「あ!! おい、一和、あれ見てみろよ!!!」
「ん?」
ルームの片隅を懸は指さした。そこには、何台ものモニターがあって、そのうちの一台の中に阿鼻叫喚の光景が映し出されていた。
上半身裸で、パンツ一丁になった三人の男達が、ベッドに座った叶恵を取り囲んでいた。
「くっ、さっさと行くぞ!! 部屋はどこだ!!」
「えーと、八階の810だ」
「よし、行くぞ!!!」
一和がルームから飛び出していく。
「あ! 待てよ! まだマスターキーが見つかってない!!!」
しかし、聞く耳を持たない一和は階段を駆け上って八階のへ向かった。
「ったく、マスターキーを探してる暇もなさそうだし……しゃーねーなあ!!!」
懸は、バイクに跨ってエンジンをかける。そして、
「階段だって登ってやるぜええええ!!!!」
バイクが階段を駆け上がって行った。
「あ! テメェ!!! 俺も乗せろ!!!」
受け付けは、階段の上の方から聞こえてくる一和の声を聞いた。
「はぁ、はぁ、マスターキーは僕が持ってるんですよぉ……今の内、通報です」
ども、作者です。就寝してから今日の更新を忘れていたことを思いだして起きざまに投稿しています。もう二話終わりますね……三話はできているのですが、まだ四話がプロット段階です。間に合うかな?




