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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
2章最終編 華麗なる推理劇
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第80話 彼らの旅の終焉

 ふっと一息つき、皆を見回す。ライン騎士の男がこれでいいなら、私は構わない。その点を確かめる為じっと見つめていると、彼は反応した。


「非常に残念だ。陛下から貴様に回った役割であるなら、それは陛下のご意思。私とエルカ嬢だけが蚊帳の外となったこの屈辱、いずれ晴らす時がこよう」

「相分かった」


 殿下の返答に、


「よって陛下に直接お伝えする。相応の覚悟をしておけ。ライン騎士団を愚弄したその罪、とくと味わうがいい」


 ライン騎士の男は付け加え一歩下がった。場に妙な空気が流れ、ライン騎士の発言の意味するところを皆噛み締めているのだろう。貴様、陛下に直接、か。意味深なことを言う。

 では仕上げだ。背後関係を暴けばこうなることは分かっていた。だから整理せねば。


「殿下、これより更なる調査報告を行います。追加とお思い下さい」


 ゲッツア殿下に疲労の色が見て取れる。だが、追加報告をせねば陛下にも伝わるまい。


「まず今回の件、ゲッツア殿下のご指示通り遂行されたものであります。こちらのライン騎士が言うよう、私と彼だけが知らされず終始蚊帳の外でした」


 ラムダの視線が冷たいものへと移ろう。一方、ロイドとヴィクトルは真摯な眼差しでこちらを見ていた。


「ではその指示とは何か。アウグス大公閣下の意思を尊重せよ、これに尽きます。ではこの指示を受けたのは誰か。それはラムダ・フィン・クラウザーその人です」


 一目確認するが、名指しされてもラムダは微動だにしない。


「ラムダはご指示通り閣下に書簡を渡した。その内容は以下のようなものでしょう」


 少しの間を置き、


「アウグス・グランバッハ大公に引退を勧告する」


 言葉とする。そして、


「よってグランバッハ大公家当主の座は代替わりの措置となるゆえ、早急に登城せよ。これに際し、エルカ・ライン・アールブルトを護衛として遣わせる。必要に応じ判断されよ」


 私は書簡の中身を説明してみせた。ゲッツア殿下の疲労度は濃い。ラムダは冷徹な程揺るぎないのに。


「書簡を見た大公閣下は、私を必要としない選択を取りました。ご身内の始末は自ら解決するという意思を表明したのです。会談の際、ラムダが愕然としていたのはこれが理由になります」


 殿下に一瞥されても、ラムダは痛痒を感じないかのようだ。


「しかし大公閣下はミゲル氏だけは助けたかった。グランバッハの血が流れないミゲル氏が、今後どうなるか懸念されたのでしょう。だから先に王都へ逃がしたいと、迂遠ながらラムダに伝えました。ラムダは思ったでしょう、このお方は死ぬつもりなのかと」


 誰しもがその覚悟を重く受け止める中、ラムダだけは遠い過去の出来事のように泰然としている。


「ライン騎士、犯行時刻を教えて欲しい」

「深夜一時過ぎ」


 背後から一言聴こえ、感謝の意を込め頷く。


「ありがとう。夜間、私の部屋の前には常に三人の護衛がついておりました。ゲストハウスの裏手にも三名。残る四名の中には常にライン騎士がいた。つまり彼はこの夜、一度も警護しておりません。そしてライン騎士と裏手を守る三名を除く護衛の彼らは、犯行現場に向かう犯人と大公閣下、また犯行後遺体を運ぶ犯人を見ている。彼らは私に嘘をついた。ですが今更責めるつもりはありません」


 ロイドはかぶりを振り、その無念さを示した。ヴィクトルは沈痛な面持ちだ。気に留めても仕方ない。


「大公閣下とそのご子息ご息女は、議事堂での話し合いの末戦闘となった。端から殺すつもりだったかは定かではありません。必要ならば関係者を王都に召喚されればよいと考えます」


 殿下は微かに頷き、物思いに耽るかのようだ。視線が合うまで私は待ち、殿下がこちらを確かめたので再開する。


「翌朝になります。全ての話は通っていると考えたグスタフ氏は、私の実況見分を必要としないのかという言葉に、無用だ、もう済んだと応じました。この時点で彼は自白しております」

「そうだな」

「実況見分は当事者、犯人立会いの下行われるもの。もう済んだとはどういうつもりか。被害者である大公閣下はお亡くなりになっている。ならば犯人立会いの下既に行われた、もしくは話が違うとグスタフ氏は言っていたのです」


 そう、実況見分を口頭で済ませることなど不可能なのだ。


「以上が追加になります。残るは……」


 全て話し終えた。もし言い残しがあるとしたら、


「大公閣下殺害の件。実行犯の名は必要でしょうか」


 あえて殿下に確かめる。

 闇夜の中の一室で、全ての終わりが迫ろうとしている。

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