第40話 「教室の人気者」
「二人してなんの話してるんですか~? 私、気になります!」
表情をキラキラと輝かせて、芽依が俺と美佐を見つめてくる。
「別に、なんでもねえよ」
「絶対嘘じゃないですか!? ちなみに私は嘘を見抜くアイテムも持ってるので嘘をついても意味がないですよ」
「マジかよ」
「まじです。まじまじ」
「そんなんあるなら俺が欲しいな」
「残念ですが、サンタアイテムは一般の方には使えないので~……って、そういう話はいいんですよ! なにを話してたんですか!」
「……美佐、言うか?」
「でも、これ以上芽依ちゃんの負担を増やすのは……」
「え、私に関してのことなんですか? ならなおさら聞きたいですよ! 二人の秘密なんてずるいです~!」
俺と美佐が互いに見つめ合っているところに芽依が割り込んでくる。その勢いに押されて、美佐が折れた。
「芽依ちゃんに演劇のヒロイン役を任せようと思ってたの。主役を蒼樹にお願いするつもりだったから、芽依ちゃんが相性いいかなって思って」
「……なるほど、そういうことでしたか」
芽依の表情から、真剣に悩んでいるのが分かる。
「ぜひやりたいです! 私に任せてください!」
「本当に大丈夫か?」
「いけますよ! 無理は絶対にしないですから」
芽依はそう言い切った直後、俯いた。
「舞台の上でくらい……私も……」
「え、なにか言ったか?」
「いいえ、なにも」
顔を上げた芽依はさっきまでの元気な表情が戻っていた。
「それなら演技も頑張らなきゃですね。モチベが上がってきました!」
「芽依の仕事はできる限り手伝うから、なんでも言ってくれよ」
「じゃあ、とりあえず蒼樹さんにはこれを手伝ってほしいですね」
そう言って、段ボールや折り紙を手渡される。どうやら芽依は舞台に置くための家を作っている最中だったようだ。屋根の部分が途中までになっていて、そこを手伝うという話なのだろう。
「おう、任せろ」
俺の言葉に芽依がほほ笑む。直後、教室の端から女子生徒の声が聞こえてくる。
「芽依ちゃん! こっちの仕事も手伝ってくれないかな! さっきみたいな便利な道具って他にない?」
「ありますよ! すぐ行きますー!」
「ユールラッズみたいな芽依の負担にならない道具はないのか? ああいうの全部引き受けてたら体力持たないだろ」
「サンタアイテムは身に着けて使うものが多いので、基本的には私自身が動かないと駄目ですね。ユールラッズさんがちょっと特別なんです。ということで、行ってきますね!」
芽依はそう言って俺たちの元を離れていく。
「芽依、大丈夫なのか……」
「でも、あたしたちがなにか言っても聞かなさそうだし、無理しすぎないかあたしたちで見張っとかないと危なさそう」
「俺達もできる限り協力して、芽依の負担を減らさないとな」
屋根を作りつつ、美佐と話す。美佐も美佐でソリを作っているようだ。手先が器用でスムーズに仕上がっていく。俺たちは芽依とは違って色んなことを同時に進めることはできないけど、少しずつでも力になろう。そうして、決意を固めた。