次世代たち
お待たせした割にはほぼ会話です!お偉いさん方の会話難しいです。
さて、ずっとシザルとの交渉成功、ゲッダ王国の世代交代が目標としてありましたが、最終目標を皆様覚えていますでしょうか!?ルキウスとシギが泉として認められることです。
「戴冠式のことですが、ゲッダの精霊教会の方々はくるのでしょうか?」
「もちろん、彼らの協力無しに機関は成り立たないからな」
「ということは本格的な交渉は戴冠式後ということになりますね。私がこちらに呼ばれた理由がいまいち分からないのですが」
手紙をテーブルに置きこちらに目線を戻すシザルに同じく真剣な目を向ける。疑問を口にしながらも表情と口調からは困惑している様子は一切ない。その様子を見るアントニオは、少しこの会談の準備中のことを思い出していた。
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ルキウスとシギの二人、アントニオは一人でそれぞれ修行をしていたため、情報と目的のすり合わせをしていた。
「一番ルキウスに近しい人たちがいる教会が味方になれば力強いって思ってたからシザルさんを味方に引き入れるのは理解できたんだけど…、ぶっちゃっけその…、信徒の人たちも立場低いんだよね?潰されない?」
執事の館で思い知った想像以上の容姿至上主義、教会がそれを跳ね除けられるのかアントニオは疑問だった。
「シザル、精霊教会は最初に、そして他に付けたい味方との縁を繋ぐ楔だ。もちろん彼らだけじゃないとも」
「シザルさんを通じて繋がりたいのは誰?」
それからルキウスとシギはゲッダ王国とのことを話した。
精霊教会を味方につけるにはゲッダ王国が、ゲッダ王国を味方につけるには精霊教会が必要。今回の茶会は、精霊教会とゲッダ王国が繋がるにはルキウスたちの協力なしでは成り立たない、ということを示すためだった。
意識を完全にとばす前に目の前の会話に集中する。
「そなたはこれからゲッダとの連帯のために忙しくなるだろう。その前に交流を深めねばと思ってな」
ルキウスも菓子と紅茶に手を伸ばす。
「確かにルキウス殿下とお会いするのは初めてですね。今までお噂一つ聞いたことが無かったので、どんなお方か楽しみにしておりました」
「それを聞けただけでも充分だ。して、最近の教会はどうだ?そなたの噂はよく聞くぞ。なんでもギルドへの供給量を減らしたとか、新しい策はいつも実行するには勇気がいるというのに。見習わなくてはと感心した」
「お恥ずかしい。ですが、守るべき下の者がいれば自然と心が奮い立つのです」
表面上は朗らかな雰囲気を醸し出していた二人、しかしルキウスの褒め言葉に返したシザルの目はお前は違うのかと責めるような目だった。
無言の主張に答えるため、ルキウスは本題に入る準備をした。
「そうか、信徒たちも心強いだろうな。それで、いつぐらい供給量を戻すか決まっているのか?」
「そうですね、まだ始まったばかりだと思っているのでせめて一月は続けたいと思っています。…そのせいで信徒たちに苦労をかけているのは心苦しいですが」
(話しやすいようにしてあげましたよ)
信徒たちの話題を何回も出すルキウスに、シザルは自分から信徒たちに関して最近の問題を話した。
「シギ、精霊との絆を深めようと伝統通り、私もギルドで少し冒険者をやっていたのだがな、そこで色んな人々と関わった」
「まぁどのような方々と?」
「この顔でも好意的に接してくれる者やそうでない者、世間的に評価が低い者がギルドではそうでないことも知ったな。そして味方になりうる者が以外なとこにいることも」
「それは興味深いですね」
「実はな、そなたの策について聞いたのは信徒ではなくFランク冒険者からなのだ。やり手だと言っていたぞ。信徒だけではなく冒険者からの人気もあるとは羨ましい」
「先ほどからお褒めの言葉ばかりで、何とも恥ずかしいです」
(へぇ、これは以外ですね。信徒たちの働きのおかげでしょうか。ギルドの依頼料といったらお金ですが、供給量を減らしている今なら…)
「話しは変わるが、私の精霊、シギは非常に魔力が多い。己の分身を作れるほどだ。ゲッダとアルガディアを気軽に行き来できる者は少ないだろう。それでシギを使者とすることを提案したい」
「確かに私も信徒たちもゲッダ王国に行ったことはありませんし、殿下のお言葉に甘えられるなら」
(ゲッダ側と第二王子は打ち合わせ済みでしょうし、ゲッダ側も人手は難しいということですか)
金はいくらあっても足りない、資金援助が叶ってもそれは変わらず、ゲッダとアルガディアを行き来する使者に関しては、人手以前にできる人、精霊が双方いない。
シザルは素直に申し入れを承諾することにした。ルキウスのことを気に食わない気持ちはあれど、それで好条件を蹴る行為はしない。
そして容姿の面で立場が弱い精霊教会だけでなく、容姿がいいセタンタが率いるゲッダ王国と他国を巻き込むことで当初の問題、ルキウスとシギが引き離されることを防ぐルキウスの計画も進行した。
-----------同時刻アルガディア王城国王執務室-----------
「なっんだこれは!?」
手紙を国王の丸い、脂肪の詰まった手がぐしゃぐしゃにした。王妃は執務室に備えられた椅子に眉間に手を抑えて座っている。
手紙の内容はゲッダは販売書の偽造には関わらないといったものだった。
「契約の儀といい、ゲッダ王国といいっ、今年はどうなってるの!」
「やはりあの醜さが災厄を招いたか…」
「悔しさは分かりますが、気になることがあります」
人目がないとはいえ焦燥感を隠さない王と嘆く女王とは反対に冷静なエバルスは静かに立っていた。
「エバルス…」
「父上、差出人をご覧ください」
一度握りつぶした手紙を広げてよく見た王はその目を見開いた。
「どういうことだ…」
差出人の名前はセタンタになっていた。だが、紋章は現国王夫妻しか使用を許されていないものだ。
「セタンタは第二王位継承権のはず…。いや、だがアイツが退いた話はきていない…」
「話がきていないということは戴冠式まで話すことは何もない、と言いたいのでしょう。どうでしょう、ここは追求せずにいくのは。もし向こうに不手際があれば動きましょう」
「そうね、それがいいわね」
「むぅ…」
王妃は早くこの問題から逃れたいように、王は渋々といった感じで頷いた。
執務室の窓から見える外は暗く、星が瞬いていた。
久しぶりのエバルスたちはどうでしょう?
なろうらしい、貴族も好きですが、お上品な敵も良くないですか?第一話あたりでエバルスが上品?となった方には申し訳ないですが、これからです。




