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No.44 僕の死神
ある時僕は公園でノートを拾った。表紙に「即死者一覧」と書かれている。ごみ箱に入れようとしたら女が出てきた。
「私は死神。それは私が造った本物だから試してみて」
迷わず中坊時代にいじめで僕の足を折ったやつの名前を書いた。大勢の目の前で今すぐ自殺しろと。その通りになった。驚く僕に死神は言う。
「もっと書いて」
僕は首を振りノートを抱きしめた。いつでも相手を殺せると思えば、誰とでも公平に優しくできる。気が付くと嫌いな人間がいない。仕事も安定した。死神は僕に憑きおいしいご飯を作ってくれる。結婚までしてくれた。式には天使も出席して本物のフラワーシャワーを降らせた。やがて子が生まれ、死神は子に乳を含ませる。
「僕は幸せだ、有難う」
「死神から貴方の妻に転職したけど私も幸せよ」
「これって転職になるの?」
「実はあれが私の婚活だった。私の目に狂いはない。こちらこそ有難う」
彼女は僕だけの女神だ。