エピローグ
「私、波人さんに謝らなければならないことがあるんです」
「いいよ……なんだって許す。なんだって受け入れるよ」
「……一年前、波人さんに偉そうなことを言っちゃいましたが、本当は……喜多島先生に、ずっと迷惑をかけてました。移植用の臓器や治療法の確立が間に合わないことを、先生や回りに八つ当たりばっかり。いつでも全力を尽くしてくれて、最後にはこうして生かしてもらえたのに」
「愛美は俺の目の前で、今こうして生きていてくれている。他の何を、俺が許さないって?」
「先程お話いただいた、柳沢さんのこと」
「………………」
「きっと、せめてものイタズラだったんだと思います。元を正せば、私が柳沢さんを許せなかったのがいけなかったんです。ですから、もし怒るなら、私を……」
「いいって言ってる」
「キャッ。あ、あの波人さん、ちょっと痛い……」
「でも、愛美はもう、誰にも渡さない。柳沢に謝るのはいいけど、柳沢の元に戻るのは絶対に許さない。俺の心は、もう愛美のものだ。その責任を取ってもらう」
「……波人さん、とっても恥ずかしいこと言ってます」
「構わない。てか愛美だって人のこと言えないだろ」
「だってあの時は余裕なかったですから。だから後できっと後悔しますよ、恥ずかしくって。――私みたいに」
「ありがとう、愛美」
「え?」
「後悔も、恥ずかしがることも、騙されることも。生きているからできるんだ」
「………………」
「愛美が、いてくれたからできるんだ。約束する、もう二度と自殺しようなんてしない、最後まで生きることから逃げない。だから、この後も人生が続くようになった今も、俺を愛美の側にいさせてほしい。……ダメか?」
「……そんな言い方、イヤです」
「え?」
「もっと、強く……ちゃんと、求めて欲しい……です」
「……えっと」
「それとも……ダメ、ですか。会ったその日にいきなり告白するような、変な女――」
「め、愛美。その……お、俺の側に……いて、ほしい」
「…………」
「――愛美、大好きだ! 側にいてくれ!」
「――はい。私も、私もあなたが、波人さんが一目見た時から大好きです。ふつつか者ですが、どうかいつまでも、波人さんのお側に置いてください……」
「必死物語」・了




