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おんがく

掌編

 

 朝からずうっとこんなだ。

 布団に包まっておんなじ方向しか見えない。視界は存在するのに何も見えていない。腕も足も満足に動かなくて、起きてるのに怖い夢ばかりみるんだ。

(ああ、でも、生きてるのかな)

 これが生きてるって言うのかな。僕、いま自分の体が何処にあるかすらよくわかってないけれど。


 思考が動いているようで動かない。時間の感覚もない。季節がわからないほど、日の感覚も絶望的だ。

 多分雨が降ってるから部屋は薄暗い。違うのかな。夕方かな。それとも朝かな。でも僕ひとりだ。誰もいないみたい。


 首の角度を少し変えると、敷いたタオルケットが柔らかく僕の頬を撫でた。

 くしゅくしゅ。布団の音。

 赤ちゃん? それか、繭に入った幼虫のイメージ。僕は少し目を閉じてみる。駄目だ、なまくび出てきた。また金縛り。

 呼吸すら危うくなるけどこんなんじゃ死なないって知ってる。でも、やっぱり、怖いけど。


(うう)


 呻いたつもりだけど声帯は寝たままだ。変な耳鳴りがする。後ろに気配を感じる。

 ああ嫌だ。嫌だなあ。顔をしかめるけど、僕の顔本当に歪んでるかな。


「——ぅう、」


 ようやく声が出て、体が解れる。耳鳴りも気配も、消えた、かな、

 でもまた、今度は重力に縛られるばかりだ。

 すぅ、ふぅ、と息をした。


(——、?)


 ふと遠くから流れている音楽に気付く。甘い声。優しい曲調の、明るいうた。歌詞はよく聞こえなかった。

 けどなんだか、体が軽くなった気がしたから起きてみようと思った。

 起き上がって部屋を見てはじめて窓が開いていたことに気付いた。うたはそこから聞こえてきた。

 誰かが歌っていた。僕は目を閉じた。


 優しい夢をみた。

20100712

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