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空を飛ぶ夢

短編

※微ホラー

 

 他の人の夢っていうのはどんなものか私は知らないけど、私の場合は同じ夢ばかり見る。

 ただ空を飛んでる。下に広がる景色は私が住んでいる辺りの団地だったり、学校の付近だったり、前日行った旅行先だったり、とにかく変化がある。でも大体現実での自分の活動範囲内。おかげで地図には強い。

 何処から飛んで、何処へ降り立つっていう始めと終わりはない。気がついたら空を飛んでいて、気がついたら目が覚めている。だから私はなんで飛んでるのか、そもそもどうやって飛んでいるのか全く分からない。


 けれど昨日の夢は違った。始めこそ一緒だったけど、だんだんと下界は見知らぬ場所になっていった。

 どんなところかというと、とにかく暗い。黒い。禍々しい。無論恐怖を煽られないわけはなく、背筋に冷たいものが走りながら私は尚先へ進んでいた。

 ああでも、思い返すと私が住んでいた団地にそっくりだったな。あんまりにも様子が違うから、知らない場所に思えただけかもしれない。

 そういえばそこには誰もいなかった。いつもの夢には、誰かしら人がいる。当たり前のように歩いていたり、止まって携帯をいじっていたり、カラオケに入って行ったり、迎えにきた車に乗り込んだりしている。だけどその夢には誰もいない。

 私は不安になって人を呼んだのを覚えている。「みなさん、みなさん」何故“みなさん”なんて呼び掛けたのかは分からない。結局誰も出てこなかった。

 もう少し行くと団地は正体不明の穴がいたるところに開いている状態になった。ほらあれ、パソコンのお絵かきツールで塗りつぶしの丸を作ったかんじ。もう綺麗に真っ黒だった。


(ああ、あそこに落ちたら死ぬな、)


 どうしてかそう確信した私は、その穴に吸い込まれないように上昇しようとした。

 そしたら目の前に、その夢で初めて人を見た。そして、今までの夢もあわせて初めて私と同じように飛んでいる人を見た。


「    」


 その人は何か喋った。夢の中ではちゃんと聞き取れたんだけど、今はもう何をいっていたのかさっぱり思い出せない。

 ただ怖いことを言っていたのは覚えている。


「   、  」

「やめて」


 怖くなって私はそう言った。その人は無表情だった。無表情で、ぴっ、と自分の真下を指差した。


「  」


 彼がもう一度何かを言ったとたん、私の体は重力を感じた。

 真下は穴。真っ黒で、何もない、あそこに落ちたら死んでしまう、穴。

 私は悲鳴を上げながら目を瞑った。瞑ったつもりだったけど上へ遠ざかっていく彼の姿は消えてくれなかった。


 そうだ、あの人は最後に言ったんだ、




「し、ね…?」


 追想から現実へ帰って私は思わずその言葉を口にした。

 気が付くと、私はどこかのビルの屋上に立っていた。


 今なら飛べそうな気がして、

20100528

改題

原題はお題バトンよりお借りしていました

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