第十章 幼馴染のいない修学旅行(4)
2012年11月29日(金)おそらく昼か夕 ???
ふと気づくと、一本道の廊下。その先に教室の扉が見える。「清子」1人、他は見当たらない。
「(清子:)......。」
不可解な出来事に戸惑う余裕はない。リアクションを示さず廊下を歩き、扉を開ける。中に入ると、そこにはいつもの教室だった。
「(清子:)...いつもとは変わらない教室...わたくしは確か、修学旅行の出口を探していて技術展の扉を開き、教室らしきの部屋に入ったのは確か...。」
経緯を振り返るなか、学園のアナウンスが流れる。
「(アナウンサー:)在校生は体育館へ集合。」
「清子」はアナウンスの指示に従い、体育館へ足を運ぶ。そこには6人の生徒が集まっていた。帰宅部2人「杏璃」「健太」、新派閥「桃姫FC」トリオ「源郎」「典子」「魂二」、そして生徒会風紀委員「アーサー」。
「(アーサー:)清子様、これはいったいどういうことでしょうか?」
「(清子:)わたくしだって、知りたいですわ。どうしてこんな幻想を見せられて、学園長は何がしたいのか、不可解なことが山ほどあります。」
「(典子:)...恐れていたことが現実となったか。つまり、私らは閉じ込められているんだよ。あの学園長...。」
「(杏璃:)...理解に苦しみます。学園長の意図がわからないまま終わってたまるものですか。」
体育館に7人が集まっただけで、さらなるイベントといったものが起こらない。...かと思いきや、スピーカーから学園長「ラザール夢ノ橋」の音声が流れる。
「(音声:)私が掲示する試験に合格した者はこの空間を出られる。健闘を祈る。」
その直後、1枚の問題用紙と1枚の解答用紙が落ちてきた。
「(清子:)...つまり、試験に合格すれば出られますって言いたいのでしょうかね?」
「(アーサー:)どうやらそのようです清子様。あなたたち、ここを出たければ私に従え。」
「(源郎:)生徒会に指示されるのは癪だが仕方あるまい。抜け出すためだ、どう動く?」
「(アーサー:)簡単なことです。掲示された問題用紙を読み、解答用紙に答えを記す。それだけだ。」
「(魂二:)簡単じゃん。スラッと答えを書いて、ここを出よう。」
「(健太:)...全然わからん。でも、やるしかないか。」
「(典子:)得体のしれないイベントなんて、さっさと終わらせよう。ここに長居しては、混乱してしまいそうだ。」
満場一致、一同の考えは同じようなので、そのわけのわからない問題集を解いていく。解き終わると解答用紙は回収される。内容は生徒にとって理解できないものであったが。
「(清子:)問題用紙の内容は実は何も書かれていない白紙のようなもので、わたくしは何も書きませんでしたわ。」
「(杏璃:)内容が白紙でも、あたしはあたしの気持ちを書いたまでです。」
「(健太:)同じく。」
問題用紙の内容は白紙だった。それこそがわけのわからない、理解できないものの正体であった。「清子」以外の全員が「自分の気持ち」を解答用紙に書いたのだ。
「杏璃」と「健太」は学園長に対する「批判」。新派閥「桃姫FC」トリオ「源郎」「典子」「魂二」は学園に対する「懸念」。「アーサー」は生徒の生き方について「疑問」。さて、答えはいかに?
そして出口が開かれた。ただし、これは合格者1人だけの出口である。
「(清子:)どうやらわたくしが試験に合格したようですわ。お先に行って参りますわ。」
「(アーサー:)...清子様、それはいったい......。」
「(清子:)不合格の皆さん、ごめんあそばせ。」
「(健太:)風紀委員、もうよしな。解答欄に何も書かなかったおかっぱ風紀委員は学園長の罠にハマっていることを知らずに。」
「(アーサー:)...つまり、清子様を排除するためにわざと白紙2枚を出したと?」
「(健太:)もう知らんから。僕ら6人こそが真の合格者ともいえる。誇れよ。」
「(アーサー:)......大変なことになってしまった。」
「清子」だけが出られることから合格者は「清子」だけであることに見える。体育館を出た...と思ったら、修学旅行の終点「樋串武学園の教室」だった。机はないし、解答欄に答えを記さないまま提出したことから学園長の罠にハマったように見える。
「(清子:)...。」
彼女はこのことを理解しているのか、誰も彼女の意図が汲み取れないところで、スピーカーから学園長「ラザール夢ノ橋」の音声が流れる。
「(音声:)いやーさすがは、信頼に値する風紀委員だけあって見事だ。実に見事だ。先ほどの試験は序の口に過ぎない。最終試験といこうか。」
「(清子:)学園長...そのためにわざとわたくしだけを?」
「(音声:)白紙2枚出したのも計算のうちだよ。清子以外の全員が永遠の夢(エターナル・ソナタ/Eternal Sonata)さ。修学旅行生徒3人相手に戦ってもらう。清子、たった1人でな!!」
修学旅行最後の敵将は3人。神通力を駆使する新派閥ボディガードA「楳原志乃」、炎を操る帰宅部幹部3 フレイムガールこと「穂村アツコ」、同じく炎使いの生徒会書記「小日向晴也」。「清子」1人でどう戦うのか?
【Phase-4】
相手が主要人物3人だとすると、人数的に「清子」が不利だ。
「楳原志乃」の神通力は「他者の影を加速装置」とするもので、速度や有効時間は影の上に留まっていた時間の長さに左右され、長いほど速く長持ちする。
「穂村アツコ」の能力「焔」は拳から発する炎、口から発射する炎、周囲のありとあらゆる炎を操ることができる。
「小日向晴也」の能力「暴虐ファイア」はいわゆる焼却系で、局部・物体はもちろん広範囲にわたる焼却もできる。
「清子」は補助魔法「シールド」を張り、自身の周りに氷を纏い、守備を固める。消費の激しい究極奥義「コメットストーム」をバンバン撃つわけにはいかないのか。
「(清子:)...どう乗り切ればいいのかしら。せめてわたくしの味方3人欲しいな。」
2人の影をブーストとした「志乃」の猛攻、炎使い2人の攻撃から身を守るのが精一杯。防戦一方を強いられる「清子」。
「(清子:)かくなる上は、この学園の防衛プログラム発動するしかありませんわね。あ、これは賭けですの。ローズマリーさん、出てきて頂戴!!」
「(ローズマリー:)呼んだかい?」
この学園の防衛プログラムを逆手に取り、「ローズマリー」を召喚した。
「(清子:)説明はあとです。あの3人をなんとかしてください。」
「(ローズマリー:)よし、清子の頼みとあらば一肌脱ごう。」
「ローズマリー」は拳を構えると同時に特攻。伝説の勇者「レベッカ」のような振る舞いで3人を無力化する。
「(ローズマリー:)どんなもんだい。ちょろいぜ。ウサギの面つけたあの小童ほどじゃないな。」
「(志乃:)き、貴様ぁ...!!」
「(ローズマリー:)学園長やらよ、清子の勝ちだ。そろそろ清子を帰してやれ。」
「ローズマリー」を呼び出してまで対処したことで試験の結果はいかに?
「(音声:)清子、こんなもんを召喚してまで最終試験に合格したってどうしようもないよ。きみには失望した。永遠の夢(エターナル・ソナタ/Eternal Sonata)で一生過ごしてな!!」
「(ローズマリー:)やはり口で言っても無駄か。清子、責任をもって君を帰す。今や怪異たる私が道を開ける。...行け。」
「ローズマリー」は怪異特有の力で出口を開き、「清子」を現実に帰す。
「(清子:)ローズマリーさん、ごきげんよう...。他の皆さんを頼みますわ......。」
「(ローズマリー:)もちろん君の友を帰してみせる。」
【フロア3(4階)・コンピュータ室】
目を覚ますと、「ステイシスポッド/Stasis pod」の中。内側から出ると見覚えのある部屋、ここは学園のフロア3(4階)のコンピュータ室だ。既に夜なのか仄暗い。「清子」の周りに「ステイシスポッド」が8個置かれている。「清子」の頭につけているものは、見覚えのある機器「ネッドリームダイバー」。
*ヘッドホン型機器「ネッドリームダイバー」は「Dr.デカボット」の発明品で、ありとあらゆるWebサイトを仮想世界として、MMORPG感覚の体験ができるという代物であるもの。アバターは自分のイメージで生成される。自分の脳内世界はWebサイト作成ツールで作成できる。最初の地点は、ワープポイントが複数設置してある真っ白な世界。ワープポイントはブラウザのリンクに該当する。ワープポイントのほかに、ブックマーク機能を使えばいつでも移動できる。
「(清子:)...わたくしは仮想世界での修学旅行をさせられたのか。なんとかして皆さんを助けなきゃ。」
「清子」はなんとかして6人の解放を試みるものも...。
「(清子:)...電源を落としてまで無理やり起こしては抜け殻になりかねない。ここは退くしかない。」
賢明な判断、正しい選択、「清子」の判断は正しい。3日間食事をしていないのか、よろめきながら学園を後にした。
学園を出ると、待ち構えていた「Mr.黒澤J」に保護される。
「(Mr.黒澤J:)1人だけか...。全員救出するのは難しい。君の家まで送ろう。」
「(清子:)...うん。」
「Mr.黒澤J」は「清子」を自宅まで送り、彼女の両親に偽の事情「修学旅行」を話す。
「(Mr.黒澤J:)彼女は長旅して疲れている。食事をとらせ、寝かせておいたほうがいい。」
満身創痍な「清子」は食事をとり、そのまま就寝。その後、「Mr.黒澤J」は学園に潜入し、「杏璃」の救出を試みるも失敗に終わった。
翌日...。
メリーランド11月29日(金)22時 / 東京30日(土)12時 メリーランド E.G.本部
E.G.本部にいるアトラス兄妹「ラファエル」「ダイアナ」とその従者「ハイペリオン」、超官「エドガー」は未来人の証言をもとに整理した結果、「ラザール夢ノ橋」の正体を知らされる。
「(ラファエル:)...なに?それがラザールの正体だと!?だとすると、風紀委員の身の危険にさらされていることになる。わが妹ダイアナよ、風紀委員から連絡来てないのか?」
「(ダイアナ:)[iPhone 5でメールを見る]...来てない。でも、ひとつわかったことは、生徒の数が減っているくらい。」
「(ハイペリオン:)卒業式で見たんだけどさ、明らかに減ってね?1人ひとり消えていくってか?」
「(ラファエル:)...深刻な事態だ。超官、日本へ向かう支度をしよう。」
「(エドガー:)どうやら私の力が必要のようですね。もうすぐ第一子ができそうで手が回らない雪郎さんに代わり私が同行します。」
「(ラファエル:)ついでに雅史を連れていく。それと、ワルシャワにいる仁雄に頭下げてまでハンナを呼び出す。善は急げだ、出発準備をしなさい!!」
「(ダイアナ:)ラファ兄...学園長のことを考えると行動に出る。あたし個人として清子に会いたいし、荷物をまとめようかな。」
4人は日本へ向かうための準備を進め、翌月21日に「雅史」を含めた5人揃って東京行き便の航空機に乗り、日本へと飛んでいった。もちろんワルシャワを出る2人「ハンナ」「仁雄」も日本へと飛んで行くのであった。




