ラギレス。
美味しいお食事をいただいて、次はお風呂。
ミーシャは一緒に入るつもりかな? あたしにくっついてくる。
ノワのマクギリウス様は、ギディオン様と一緒?
ソファーに腰掛けワインを飲むギディオン様のすぐ横にはノワ。
ギディオン様のことだから、ノワが普通の猫じゃないっていうのはわかってると思うけど、それでも流石に大精霊マクギリウス様その人だなんて気づいたわけじゃないだろう。
でも。
色々お話しして、仲良くしてくれるといいな。
そんなふうに感じていた。
「セリーヌ。わたくしと一緒に入りましょう」
ニーアお姉様がそうおっしゃって。
一緒にお風呂に向かって。更衣室? お風呂の隣のお着替えスペースについた時、だった。
「にゃぁ。あたしもどうせなら人間の姿でお風呂に入りたいなぁ」
と、ミーシャ。
え?
いいの? ミーシャ?
「ハルカに、なる?」
「ううん。どうせなら今日はラギレスになろうかな」
「え? ラギレスさん? あたしまだみたことない、よね?」
「ふふふ。そうだね。初めてかも」
「ええ? ミーシャちゃん、人の言葉話せるの?」
驚いた表情のニーアお姉様。だけど、そのお顔は何か面白いものでも見つけたような、そんな笑みで溢れていた。
「うん。あたし元々人間だったの。今はねこだけど」
「転生者、なの?」
「ふふふ。まあそんなもの。じゃぁ、人間になるね」
ふわっとミーシャから金色の粒子が溢れる。
白猫のミーシャから溢れたその金色は、彼女の周囲に繭のようにかたまり、そして。
ふわっとその繭が弾けた
黄金の髪、白磁の肌。
すらっとした手足は細く、とても闘うなんてできないようにも見える、けど。
切れ長の青い瞳は、その意思の強靭さを表しているようで……。
凛々しく見えた。
っていうか、ラギレスさん、ニーアお姉様に、にてる?
「セリーヌ・マギレイス・ラギレス、よ。よろしくね、ニーア」
「え、あ、うん、よろしく、ニーア・カッサンドラ・ベルクマール、よ。ラギレス? それともセリーヌってお呼びすればいいのかしら?」
やっぱり似てる。背格好も、髪も、瞳も、顔立ちも。
まるで双子のよう……。
「ふふふ。ラギレスでいいわ。セリーヌじゃ、セリナとかぶるものね」
「そうね。じゃぁラギレスさんね。わたくしはニーアで大丈夫よ。そもそもカッサンドラは帝国皇女が聖女となるときに代々襲名している名前だし、ベルクマールは家名だものね。あなたのラギレスは、家名じゃ、ないわよね?」
「ええ。あたしのラギレスは、あたしのアイデンティティよ。家名で名のるなら、セリーヌ・ヴァインシュタインという名だったわ。マギレイスっていう名前はあなたのカッサンドラに近いかしら。魔道王国マギレイスにちなんでつけられた大賢者の称号よ」
「そうなのね。魔道王国マギレイスの話はわたくしも存じてますわ。ふふふ。ありがとうラギレスさん、おはなししてくれて」
「ラギレス、でいいわ。さんはいらないから。それより、お風呂入りましょう? せっかくここまで来てお預けは悲しいわ」
「そうね。ラギレス。わたくしたち、いいおともだちになれそうね」
「ええ、ニーア。セリナ、さあお風呂に入りましょ」
ハルカ、ううん、今はラギレス、かぁ。
ふたりの会話を聞きながら黙ってしまっていたあたしの背中をぽんと押して、お風呂に促すラギレス。
うん。
むずかしいことを考えるのはやめ。
今はお風呂を楽しもうと、二人のあとを追った。




