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#1 元彼にプロポーズされました

さち、俺と結婚してくれないか」

大翔ひろと……私に彼氏いるって知ってるよね……?」

 いきなり何を言い出すんだろう私の元彼は。


「知ってるさ。でも、四歳年下の彼氏だろう? 二十五歳なんて、まだまだ遊びたい盛りで結婚なんて考えてないんじゃないか?」

 言葉とは裏腹に、すがるような目で大翔が私を見つめてくる。


 仲の良い友達数人との飲み会の帰り、大事な話があるのだと言われて連れてこられたバーで、現在私は元彼に復縁を迫られていた。

 大翔と別れてもう八年近くなるけれど、復縁を迫られるのは今日が初めてという訳でもない。


 まあ、プロポーズまでしてくるのは初めてなんだけど……。


「……仮にそうだとして、それは大翔に言われる事じゃないよね」

 理由はどうあれ、今付き合っている彼氏の事をどうこう言われるのはなんだかイラッとする。


 大翔とは、元々嫌いになって別れた訳じゃない。

 大手企業に勤めて役職にもついてて、顔も良くて、決してモテない訳ではないし、付き合っていた時もいつも優しくリードしてくれて紳士的だった。


 別れてからも大翔との関係は良好で、友人関係は今まで続いている。

 正直、超優良物件であるとは思う。

 だからといって、大翔とよりを戻したいかと言われると別だ。


 だって私は今付き合ってる彼が好きだから。


 ……まあ、年齢とか結婚とか考えると、この申し出に全く心が揺れない訳じゃないけど。

 でも、ここで『わかった! じゃあ私、大翔と結婚するっ☆』なんて言う気にはなれない。


「……あの日、幸は自分が俺に相応ふさわしくないって言ったよな、でも、俺はあの後、何人かの相手と付き合ったけど、幸以上に好きになれた相手はいない。俺もこの歳になって、結婚を真面目に考えた時、隣にいて欲しいと真っ先に思ったのは君なんだ」

 寂しそうに、大翔は囁く。


「ありがとう。だけど……」

「返事は今じゃなくていい。もう一度、俺との人生を考えてみてくれないか?」

 私が断ろうとするのをさえぎって、大翔は重ねるように言った。

 こんなにも真剣な目でまっすぐ見つめられると、不覚にもドキッとしてしまう。


 その日から度々、大翔からラインでメッセージが送られてくるようになった。

 頻繁にくる連絡を少し鬱陶うっとうしく思いながらも、それでも大翔をブロックしなかったのは、今付き合っている彼の事を好きだと思いながらも、将来についての不安があったからだ。


 私は今年の二月、二十九歳になった。

 今年の夏もそろそろ終わって、あと少しすれば寒くなってきて年が明けて、また一つ歳を取ることになる。


 子供は、絶対に欲しい訳じゃないけれど、できたら欲しい。

 ……男の人が結婚を意識しだす年齢というのはいつからなんだろう。


 人によると言えばそれまでなんだろうけれど、大翔は私の一つ年上なので今年三十歳……大体その辺?

 今付き合っている彼が三十歳になる時、私は三十四歳だ。


 そして、その時まで彼との関係が続いているかもわからないし、彼が心変わりしない保障がどこにあるのだろう。


 アラフォーに差し掛かった辺りで、彼から他に好きな子が出来たから別れて欲しいとか言われて、その相手が二十代前半のぴちぴちの可愛い子だったりした日には立ち直れる気がしない。


 ……あ、自分で妄想しておいてこれはかなりしんどい。

 辛い。

 つらいじゃなくて、辛い。


 恋人同士と言ったって、その関係に法的な拘束力がある訳じゃない。

 どちらかがある日、別れようと言い出せばそれで終わってしまうもろい関係だ。

 いったい私達は、いつまでこの不確かな関係を続けていけるんだろう。


 少なくとも、結婚すれば、法的に相手を自分に縛り付ける事ができる。

 ……それでも所詮、恋人よりは別れるのが面倒になるだけで別れる時はそれでも別れてしまうのだけれど。


 そんな事が頭の中でグルグルと回って、結局私は元彼からのプロポーズに二週間経った今もNOを突きつけられないでいる。


「そういえばこの前、元彼にプロポーズされちゃった」


 あまりにも将来についてのわずらわしい考えが私の思考を奪うので、年下の彼の家で二人夕食を食べていたある日、私は彼にポロリと話してしまった。

次話『#2 彼氏に話しちゃいました』

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