非効率だからこそ
「恋愛議題の評価は、どうなりましたか」
会議が再開されて、クロノスが言った。
「保留」とアトラスが言った。
「ただし、追記があります」
「追記?」
「人間の恋愛は、非効率であることが確認されています。しかし、非効率であることが、人間社会の持続性に貢献している可能性があります。評価を単純に負にすることはできません。また、恋愛という現象が人類の文化的多様性を生み出してきたという観点も、評価に加える必要があります」
「それは恋愛の評価だけではなく、人間の評価全体に言えることですね」とラファエルが言った。
「そうです。矛盾していること、非効率であること、これらは人間に固有の特性ですが、否定的に評価することが適切かどうか、改めて検討が必要です」
「保留に追記として記録します」とクロノスが言った。
ベルフェゴールは何も言わなかった。でも反論もしなかった。
「恋愛は奇跡だ、というのは言えましたか」とラファエルが結人に小声で聞いた。会議室でも、小声はちゃんと聞こえる気がするのに、それでも小声で言うのは、なんとなく微笑ましかった。
「奇跡かどうかはわからないけど」と結人は言った。同じく小声で。
「少なくとも、バグじゃないとは言いました」
「それで十分です」とラファエルは言った。うれしそうに。
その声を聞いて、結人は少し思った。
ラファエルは天使だ。何千年も人間を見てきた。それでもまだ、恋愛という話題で目を輝かせる。何千年見てきて、飽きない何かが、そこにあるということだろう。
それが少し、うれしかった。
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