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転生錬金術士のほのぼのスローライフ ――拾った少女とモフモフと、なぜか聖騎士もついてきました  作者: しぃ太郎


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第3話 村のおばちゃんと目立つ人


 朝日が、柔らかく部屋を照らしていた。

 鳥の声が耳に心地よい。素晴らしい目覚め――、

 とはいかず。


 ちょっと昨日は眠れなかった。

 何故かって?

 いきなり銀髪長髪イケメンが私に詰め寄ってきたからだ。

 愛の告白ならぬ、罪の摘発だ。


 いやいや。こんな田舎に住んでる一般人に起こってはいけないイベントだ。

 いきなり誘拐犯扱いしてきたと思えば、すぐには帰れないと、森で野宿するとか言い出すし。あの顔面で。


 主に野盗とか、不埒な輩に襲われたらどうする。

 後味が悪すぎるわ。まったく。


 なので、今は工房に泊めている。

 大仰な騎士の誓いも立ててくれたし、まぁ大丈夫だと思うことにする。


「リリ!おはよう。モフたんもおはよう〜」


 目を擦りながら小さな小動物を連れているリリに挨拶して、そのまま朝食の支度を続ける。


 ベーコンと卵を焼きながら、少し考える。

 昨日のリリの様子は明らかに拒絶を示していた。


 これは、しっかりと話を聞かなければいけないだろう。


 テーブルに料理を置きながらリリに聞いた。

 湯気がたつ料理に目を輝かせている所で申し訳ないが、大人としての責任だ。


「リリは、あの人が怖いの?」


 すると、こちらを見上げてブンブンと首を降った。


「……ちがうの。みてない人だったから」

「知らない人だったから怖いのね。じゃあ、何で帰りたくないの?」


 一瞬考え込むように黙った後、リリは硬い声で答えた。


「リリは、ここで人を待ってるの……。もう少しでくるはず……」


 要領を得ないけれど、とりあえず彼が怖いわけではないらしい。


「そっか。じゃあ、それをあの人に伝えて帰ってもらおうか?」

「ながれが変わっちゃうから……ダメ」


 相変わらず不思議な子だ。

 私と初めて会った時も、『ようやく見つけた』だった。

 聖女と言われると、頷ける部分も多い。

 けれど――。

 嫌がる子どもを無視できない。


 なんとかするしかないか。あっちのイケメンさんにも納得してもらわなければ。


「じゃあ、冷めちゃうからご飯にしようか。私は、騎士さんにご飯を渡してくるから、先に食べててね」

「うん」

「キュイ」


 リリとモフたんが返事するのを待ってから、私はトレーに朝食を乗せて、庭の片隅の工房へ向かった。




「……とりあえず、リリは帰りたくないみたいだし、帰ってくれないかな?えーと、……エルさん」


 工房をノックするまでもなく、彼は既に起きていて、剣を振っていた。

 ――いや、うちの庭でやめて欲しい。ご近所に何事かと思われる。しかし、昨日乗っていた馬が居ないな。


「中に、朝食置いておいたんで、休憩がてらにどうぞ」

「ありがとうございます。……ですが、先日言った通り、こちらも任務ですので。昨夜、神官長に一報を入れておきました」


「……仕事が早い。じゃあ、馬も一緒に返しちゃったと?」

「はい。近くに居た部下と共に帰還しているはずです」


 ではどうすればいいだろう。

 追い出そうにも、既に上司へ報告済みだという。

 このまま、穏やかな村が聖騎士の一団に囲まれたりしないだろうか……。

 そんな光景を見たら、近所のお年寄りが腰を抜かしてしまう。


「……ご心配には及びません。聖騎士とは本来、神に仕え、人々を守る存在です。……リリアーヌに対しても、同様にするつもりです」


 彼はまっすぐにこちらを見つめて言い切った。

 その言葉にも瞳にも一切の迷いがない。


 そうだとしても。そうだとしても――!?


「何でここで脱ぐんですか!?うわ……!腹筋……!」

「いえ、少し汗をかいたので、軽く身体を拭こうかと……」


 エルは少し戸惑いながら、返答する。

 わかる。

 汗は流したいよね。

 でも!


「やめてーー!!おばちゃんの噂の速度を知らないから、うちの庭でそんな事をするのよ……!明日の朝には、私に旦那ができている事になるわ!」


「――へ!?旦那!?」


 彼の白い肌が一気に赤く染まった。

 イケメンが赤くなるなんて、実際に見ると破壊力抜群だな。


「早く、工房へ!それと朝食を用意してますから、とっとと食べちゃってください」


 無理やり扉に押し込み、朝食の前に座らせる。

 そして、エルと向き合って話をするために、私も席に着いた。

 工房の小さなテーブルだ。

 少し狭いけれど仕方がない。


「リリに関しては、私は何の権限もないんだけど。ただのお節介として聞いてちょうだい。あの子、まだあなたを怖がってるみたいだし、いきなり接触したら嫌われちゃうからね?」


「それは……。わかりました」

「うん、素直。好感度プラス」

「……はい?」


 ――はっ!効果音が声に出てた。


「何でもない、気にしないで!それで……いつまでもここに居るなら、少しは役に立ってもらわないと。薪割りとか、やったことある?」

「ええ。……昔はよく」


 へえ。聖騎士さまって生まれも立派なのかと思ってたけど、予想外の返答だった。

 まあ、こちらとしてはありがたい。


「じゃあ、その目立つ服装やら食材を買い出しに行ってくるから、薪割りして待っててね。えーと、あなた、だいぶ身長高いわね……」


 村一番大きい……といったら鍛冶屋の親方かしら?

 とりあえず、お古を貰ってこよう。


 リリも連れ出して、幼馴染たちに会いに行こうかな。

 事情を説明したら、フォローしてくれそうだ。


「あ、斧は物置、薪は裏にあるから。よろしくね!うーん、何かお土産いる?」

「いえ。私はここにお邪魔している身なのでお気になさらず」


 ――真面目だ。私が悪者なら、搾取されてしまうわ。

 筋肉は凄かったけれど、この美貌が人を心配させるのよねぇ。本当に騎士なんて務まっているのかしら。


 いまいち安心できないながらも、私はリリを連れて村へ繰り出した。

 あ、モフたんも一緒だ。



「あ、エラ!おはよう」


 鍛冶屋に行く途中、幼馴染のエラと鉢合わせた。

 私を見ると、彼女は手招きをしてパン屋の裏口へ連れ込んでいく。慌ててリリとモフたんもついてくる。


「ちょっと、ミーナ!あんた、銀髪のいい男を家に連れ込んだって本当!?朝、おばちゃんたちが騒いでたよ!どこで知り合うのよ、それ。かなりの遭遇率の低さじゃない??」

「うわー。予想どおりすぎる……」


 彼女はパン屋のエラ。私の親友だ。

 好奇心旺盛な彼女の瞳は期待で輝いている。

 開き直って真っ赤な嘘をつくか一瞬迷ったけれど、ここは正直に言ったほうがいい。


 彼がいなくなった時にもっと噂が広がってしまう……。

 しかも、不名誉な方へ。


「あ〜、違うのよ。勝手に押しかけてきて、あの顔で野宿するっていうからお節介焼いただけなのよ……。だって、銀髪の美人さんよ!それが野宿なんて……拐われちゃうわ」


 私は理解してもらおうと、大振りな仕草で説明した。


「え?女性だったの?」

「いや、胸筋も腹筋もバキバキだったけど」


 今朝バッチリ見たから間違いはない。

 しかし、いきなり脱ぎ出すとか……。村のおばちゃんが大歓喜してしまうではないか。


「いや、男じゃん!相変わらずお人好しねぇ」


 モフたんの耳がピクりと動いた。


「お前、危機感無さすぎだろ……」

「「うわ!」」


 私とエラは突然降ってきた声に飛び跳ねた。


「トーマ」

「こら!人の店の裏に勝手に入るな!もう」


 エラが注意するが、トーマは聞いていない。

 私の幼馴染その二だ。不器用だけれど責任感は強い、鍛冶師見習いだ。


「ミーナの家なんて男手ないし、まだ小さなリリだっているだろ……。何やってんだよ」

「いや〜。悪い人じゃないんだよ。大層な感じの騎士の誓いも立ててくれたし」

「え!見たい!」


 エラが両手を組んで声をあげる。


「エラは黙ってろ……。頭痛いわ」

「あ、トーマ。それで親方の服を譲って貰いたいなぁ〜なんて……」


 肩を落として、溜め息をつかれてしまった。

 いや、まぁ……。ごめんよ。君の恋路の邪魔だけはさせないから安心してくれ。



 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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