第1話 工房の前に女の子が倒れていました
はじめまして、またはお久しぶりです。
今回は ハイ・ファンタジー/スローライフ寄りのお話になります。
戦いやざまぁよりも、
「拾った縁を大事にして暮らす日常」を中心に描いています。
幼い女の子、モフモフ、そしてなぜかついてきた聖騎士と、
少しずつ増えていく“家族のような関係”を楽しんでもらえたら嬉しいです。
ゆったり進む作品なので、
肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。
錬金術士の朝は早い。
まだ朝日が出たばかりだ。
なんて――たまたま朝早く目が覚めただけだけど。
工房へ向かおうと、扉を開くと、コツン――と何かが扉に引っかかっている。
(またご近所さんのお裾分けかな?)
そう思ってそっと扉を押し開いてみると……。
「お、女の子……!?」
幼い女の子が、家の前で行き倒れている。
「ちょっと大丈夫!?」
慌てて抱き起こすと、その体温にほっとする。
良かった。
いや良くないわ。
「ようやく……見つけた」
少女は私を見て、微かに笑った。
「え?ようやく?」
それきり、目を閉じて答えなくなってしまった。
色々と聞きたいことも多いけれど、この子を早く休ませてあげないと。
私は抱き上げて、部屋の中へ運んだ。
ベッドに寝かせると、淡い金髪が布団に広がった。
とても綺麗な子だ。
村では見たこともない。
――どこの子だろう。
親御さんは心配してるんじゃないだろうか。
あの子が起きたら、名前を聞いて……。それから――。
お昼過ぎになって、ようやく目を覚ました女の子。
「喉乾いてる?お水飲める?」
コップに水を注ぎ、彼女に手渡す。
「ありがとう」
ゆっくりと飲み干していく。
カタリ。空になったコップをサイドテーブルに置く。
「お腹は空いてない?スープを作ってあるの。温め直してくるから、食べられるなら食べて」
階下に降りながら、どうやって聞き出そうか考える。
家出少女かな。
犯罪に巻き込まれてたら大変だ。
隣街の詰め所に幼い子供の捜索願いが出てないか確認しなければ。
ほどほどに温まったスープを持って、部屋に戻ると、モフたんが女の子にピッタリとくっついていた。
モフたんは白い毛玉のような体に小さな耳と、くりくりの目がついている。
手足が圧倒的に短くて、子猫……には見えない不思議な生き物だ。
珍しい。
他の子どもからは全力で逃げるのに。
「はい、スープ。一人で食べられる?」
「うん、だいじょうぶ」
受け答えはしっかりしている。
「じゃあ、食べながらでいいからさ。名前教えてくれる?」
「リリ、だよ」
「わかった。リリね。お家はどこかな?街の名前がわからなかったら目立つ建物でもいいんだけど……」
そこでピタリと動作を止めて、リリは困ったように首を振る。
覚えてない?それとも言いたくない?
「じゃあ、リリを探してる人とか……」
「リリはここで待ってるの……」
「ここ?」
お手上げだ。
何もわからない。
明日の朝、隣街へ行ってリリの特徴と、保護した経緯を伝えてこよう。
「まぁ、いいや!今日はゆっくり休んでて。それから、リリの周りをウロウロしてるのはモフたん。仲良くしてあげてね」
――そして、届け出を出しても、リリの身元は分からないまま時間が過ぎていった。
その日から、私とリリとモフたんの、村での緩い生活が始まった。
一ヶ月後、聖騎士を名乗る銀髪碧眼の長髪美形(属性盛りすぎ)が現れるまでは。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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