第1話 工房の前に女の子が倒れていました
はじめまして、またはお久しぶりです。
今回は ハイ・ファンタジー/スローライフ寄りのお話になります。
戦いやざまぁよりも、
「拾った縁を大事にして暮らす日常」を中心に描いています。
幼い女の子、モフモフ、そしてなぜかついてきた聖騎士と、
少しずつ増えていく“家族のような関係”を楽しんでもらえたら嬉しいです。
ゆったり進む作品なので、
肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。
錬金術士の朝は早い。
まだ朝日が出たばかりだ。
なんてね。
たまたま早起きをしただけだけれど。
「さて、工房へ行こうかなぁ〜」
玄関の扉を開くと、コツン――と何かが引っかかっている。
(……あれ。またご近所さんのお裾分けかな?)
食費が浮くからありがたい。
そっと扉を押し開いてみると……。
「お、女の子……!?」
幼い女の子が、家の前で行き倒れていた。
「ちょっと大丈夫!?」
慌てて抱き起こす。
温かい。
胸もしっかり上下に動いている。
よし、生きている。
良かった。
いやいや、良くないわ。
お医者さんに診てもらわないと。
早く、なんとかしなければ……。
その時、彼女の瞼がピクリと動いた。
薄っすらと開いた瞳が、真っ直ぐに私を捉えた。
幼いながらも、意志のある強い視線だ。
思わず息を呑んでしまった。
「ようやく……見つけた」
そして少女は、微かに笑った。
「え?ようやく?」
それきり、目を閉じて答えなくなってしまった。
色々と聞きたいことも多いけれど、今はそれどころじゃない。
華奢な身体を抱き上げ、部屋の中へ運んだ。
子どもとはいえ、重い。
階段がキツすぎるわ……!
なんとか二階まで辿り着き、少女をベッドへ寝かせる。
淡い金髪がシーツに広がった。
とても綺麗な子だ。
村では見たこともない。
――どこの子だろう。
親御さんは心配しているんじゃないだろうか。
あの子が起きたら、名前を聞いて……。
それから――。
こんな状況は初めてだから、さすがに混乱しちゃうわ。
これからのことを思い浮かべ、私はそっとため息をついた。
◇◇◇
女の子は、数時間後にようやく目を覚ました。
「喉乾いてる?お水飲める?」
コップに水を注ぎ、彼女に手渡す。
「ありがとう」
ゆっくりと飲み干していく。
見た目もそうだけれど、仕草も綺麗すぎる。
カタリ。
少女は、空になったコップをサイドテーブルに置いた。
「お腹は空いてない?スープを作ってあるの。温め直してくるから、食べられるなら食べて」
階下に降りながら、どうやって素性を聞き出そうか考える。
家出少女かな。
いや、犯罪に巻き込まれていたら大変だ。
隣街の詰め所へ、捜索願いが出ていないか確認しなければ。
ほどほどに温めたスープを持って部屋に戻ると、モフたんが女の子にピッタリとくっついていた。
「モフたん、ここにいたの?」
モフたんは、白い毛玉のような身体を揺らした。
小さな耳とくりくりの目。
そして圧倒的に短い手足。
子猫や子犬にも見えるような、見えないような……。
正直、私にもよくわからない生き物だ。
この田舎じゃ、生き物図鑑もないしね。
まあ、モンスターじゃなければいい。
でも、モフたんにしては珍しい。
他の子どもからは全力で逃げるのに。
「はい、スープ。一人で食べられる?」
「うん、だいじょうぶ」
受け答えはしっかりしている。
「じゃあ、食べながらでいいからさ。名前を教えてくれる?」
「リリ、だよ」
「わかった。リリね。お家はどこかな?街の名前がわからなかったら目立つ建物でもいいんだけど……」
そこでピタリと手を止めて、リリは困ったように首を振る。
これは、覚えていない?それとも言いたくない?
「じゃあ、リリを探してる人とか……」
「リリはここで待ってるの……」
「ここで?待つの?」
お手上げだ。
何もわからない。
明日の朝にでも隣街へ行って、リリの特徴と保護した経緯を伝えてこよう。
「まぁ、今日はいいや!ゆっくり休んでて。それから、リリの周りをウロウロしてるのはモフたん。仲良くしてあげてね」
――結局、リリの身元は分からなかった。
その日から、私とリリとモフたんの、村での緩い生活が始まった。
一ヶ月後、聖騎士を名乗る銀髪碧眼の長髪美形(属性盛りすぎ)が現れるまでは。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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