37)挨拶は基本
忘れていた訳じゃないんです。いろいろありまして(泣)
例え幽霊な私の『挨拶』がパパさんには聞こえなくても見えなくてもこれ大事なことです! 居候ですもん私。
最低限の礼儀は必要だと思います。
ここは一応、家族の一員に入れて下さいませ。パパさんお願いします。ぺこり。
じっ、とお顔を覗き。おおうっ! 失礼しました。
ええっと。・・・・・・只今パパさんはお取込み中です。
皆さん。そ~っとしてあげて下さいませ。
滂沱の滴がその手を握ったパパさんだけじゃなく、繋いだママさんの指も濡らしています。
だってパパさんはサツキちゃんの中に異物な幽霊が入っているなんて知りませんもん。アツ娘さんのように霊感があるわけじゃないんですから。
これって、私の所為じゃないですよね。
ところでパパさんの膝に座ったサツキちゃんがパパさんの顔を窺うように覗いている気がします。そう。今までと違って、何処となく感情が表面に現れていると思うんです。そんな気がするんです。
はい、私。この頃、サツキちゃんの様子が以前(憑りついちゃった当初!?)とは違ってきたと思っています。
・・・・・・何と言いますか、これまでになくちゃんとした反応があると言いますか。微妙に何かが変化してきた? って感じで。
今まで『無表情・無反応』がデフォで当然! だったサツキちゃんですがこのところ多少なり表情が見える気が、してきたんですよ。
私の気のせいじゃない。と思うんですけど、ね??
うーん。どうかなぁ~。
サツキちゃんが笑ってくれると、私も嬉しいんだけど。
パパさんが帰ってきたことで表情も感情もほら、事故に遭う前のように?? と、期待しちゃうんです。
――違うかなぁ?
ねぇ、サツキちゃん。タスクくんやユキちゃんにここで出会って、確かに変わったモノがあるよね。
・・・・・・私が憑りついた意味はやっぱり解らないけど。っていうか私が知りたい! ものすごく!!
まぁ、すべて私の気の所為で意味なんて本当にないのかもしれません。
でも、でもサツキちゃんが笑ってくれるのなら。何か私が幽霊としてココに居る意味があるのかもしれないと思うんです。
あっ、パパさんがママさんにキスしていますよ!
ここは目を瞑りましょうよ、サツキちゃんの情操教育にいいのかはわかりませんが。
今は目を閉じておきますね。パパさん♪
『みんなで幸せに成りましょう』
これだけはお願いします。それが私の願いであり、祈りです。




