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はい/いいえ勇者、母親が強すぎる。  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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24/24

第24話:勇者は、はじめて『帰る』と言った

――王都中央広場。

人。

人。

人。

どこを見ても人。

「勇者様ぁぁぁぁぁ!!!」 「ユウ様ぁぁぁぁぁ!!!」 「沈黙の英雄ォォォ!!!」 「しゃべれェェェェ!!!」

「最後の一行だけ矛盾してる!!」ケンジが叫ぶ。

空では魔導花火が炸裂し、楽団が“沈黙の聖歌”を爆音で奏でていた。

「タイトル詐欺だろその曲!!」ケンジ 「音量で沈黙を表現しています」セシル 「表現方法がおかしい!!」

――バルコニー。

ユウは、立っていた。

「……」

(多い) (怖い) (帰りたい)

いつもの三点セットである。

隣にはガルド、セシル、レティシア、ケンジ。 そして――

完璧な微笑みを浮かべた母・ミツキ。

「いいわね、ユウ」 静かに、しかし確定的に言う。 「マイクは軽めのものにしておいたわ。長時間の“はい”でも疲れない仕様よ」

「長時間の“はい”って何!?」ケンジ

「あと、引っ越し業者は待機済み。結納の品はすでに王城地下に保管。老後の介護プランは三案用意してあるわ」

「早い!! 人生の後半まで来てる!!」

ユウは固まっていた。

(老後……?) (まだ戦い終わったばっかりなんだけど)

国王が前に出る。

「静粛に!!」

歓声が、逆に大きくなった。

「静粛とは!!」ケンジ

「勇者ユウよ!!」

王の声が響く。

「汝は魔王を討ち、世界に光を取り戻した!!」

「「「おおおおおお!!!」」」

(倒してない) (勝手に倒れた)

「よって余は宣言する!!」

空気が張り詰める。

「王女レティシアと結ばれ!!」

「「「キャアアアア!!!」」」

レティシアが一歩前に出る。 ほんの少し頬が赤い。

「ユウ様……」

(いい人だ) (すごくいい人だ) (でも)

「次代の王として迎え!!」

「「「おおおおおお!!!」」」

(急に重い)

「そして永遠なる守護神として――」

「「「おおおおおおおお!!!」」」

(永遠!?)

「さあ!!」

国王が手を差し出す。

「答えよ、勇者!!」

――静寂。

全員が待つ。

民衆が。 騎士が。 貴族が。 仲間が。

「来るぞ……」 ガルドが震える。 「伝説の『はい』が……!!」

「来ない方がいい可能性あるからな!?」ケンジ

セシルが構える。 「最終記録。勇者語・完全版」

「だから閉じろそのノート!!」

そして――

ミツキが一歩前に出る。

「ええ、もちろん」

「まだ言ってない!!」ケンジ

「この子は『はい』と答えます」

「確定させるな!!」

ミツキはユウに微笑む。

「ねえ、ユウ?」

「……」

(来た)

(これだ)

(最後のやつだ)

ミツキが、優しく言う。

「じゃあ、お城に住むわね?」

――停止。

世界が止まる。

(質問じゃない)

(確定だ)

(ここで“はい”って言えば)

(全部終わる)

(丸く収まる)

(誰も困らない)

(俺も――)

ケンジが小さく言う。

「……好きにしろ」

ガルドが拳を握る。 「勇者殿……!」

セシルがペンを構える。 「“はい”待機」

レティシアが静かに見つめる。

「……」

ミツキが言う。

「大丈夫よ」

「あなたは、ちゃんとできるから」

――その言葉。

(ちゃんと)

(またそれだ)

(ちゃんとって何だ)

(俺は)

(俺は――)

ユウの中で、何かが崩れる。

「……は」

「はいね」 ミツキ、即補完。

「速すぎる!! 人の発話を予測変換するな!!」ケンジ

「……」

ユウの口が、もう一度動く。

(違う)

(それじゃない)

(“はい”じゃない)

(“いいえ”でもない)

(初めての言葉)

(俺の言葉)

「…………」

空気が凍る。

「…………か」

――その瞬間。

ミツキの思考が止まる。

「……え?」

(「か」?) (候補……) (感謝? 覚悟? 歓迎?) (……帰る?)

「…………帰る」

――完全停止。

音が消えた。

世界が“無音”になった。

「………………えっ」

国王、停止。

レティシア、ブーケ落下。

ガルド、剣落下。

セシル、ペン空中静止。

ケンジ「えっ」

民衆「えっ」

鳩「ポ?」

「鳩まで止まるな!!」

ざわざわざわざわ――!!

「帰る!?」 「どこに!?」 「今!?」 「守護神は!?」 「結婚は!?」 「鳩どうするの!?」 「鳩はもういい!!」

セシルが呟く。 「……解析不能。勇者語ではない」

「当たり前だ!!」

ガルドが震える。 「帰還……命令……?」

「違うわ!!」

レティシアが、静かに言う。

「……そうですのね」

ただ、それだけ。

深読みしなかった。

ミツキは――

止まっていた。

完全に。

「……帰る?」

演算不能。

上書き不能。

補完不能。

初めてのエラー。

「……ユウ」

「……はい?」

「帰るって……どこへ?」

「……」

ユウは答えなかった。

答えられなかった。

でも。

それでよかった。

ケンジが笑う。

「……言ったな」

「……はい」

「今の『はい』は!?」ガルド 「ただの返事だ!!」ケンジ

ユウは、前を向く。

(帰る)

(俺の家に)

(俺の布団に)

(俺の何もない日常に)

一歩、歩き出す。

「待ってください!!」 「式典が!!」 「まだ鳩が!!」

「鳩は置いてけ!!」

ユウは振り返らない。

そして、最後に一言。

「……いいえ」

(……もう、誰にも決めさせない)

その背中を、誰も止められなかった。

王都の空では、場違いな祝砲が鳴り続ける。

だが、その下で。

数十万の人間が、同じ言葉を漏らしていた。

「………………勇者が喋った?」

――

勇者は「はい」で始まり。

「帰る」で終わった。

――完――

ここまで『はい/いいえ勇者、母親が強すぎる。』全24話をお読みいただき、本当にありがとうございました。


最初は某ゲー厶由来のギャグでした。

「某ゲー厶の勇者じゃないなのに『はい』『いいえ』しか言えないってどうなるんだろう?」

そんな軽い思いつきから始まった物語が、気づけば24話。

ここまでお付き合いいただけたこと、心から嬉しく思っています。


振り返ってみると、この物語はずっと「ズレ続ける世界」の話でした。

周囲は勝手に盛り上がり、勝手に解釈し、勝手に人生を完成させていく。

なのに本人は、ただ「はい」「いいえ」としか言えない。


王様も、仲間も、民衆も、そして母親ですら——

誰もユウの“本当の声”を聞こうとしなかった。


でも最後の最後、

たった一言。


「帰る」


この一言で、全部がひっくり返りました。


ギャグとして始まったはずなのに、

気づけば「言葉とは何か」「選ぶとは何か」みたいなテーマに片足突っ込んでいた気がします。

……いや、たぶん気のせいです。ほぼ全部ギャグです。


正直に言うと、この作品は書いていてめちゃくちゃ楽しかったです。


ツッコミ役のケンジが毎回叫び続けるのも、

ミツキがすべてを上書きしていくのも、

民衆が勝手に深読みしていくのも、

全部「やりすぎかな?」と思いながら、毎回さらにやりすぎました。


でも結果、「やりすぎ」が正解だった気がします。


そして何より、

ユウが一言もまともに喋らないまま最終話まで行けるのか?

という謎の挑戦に付き合ってくださった皆様、本当にありがとうございます。


さて、ここからは少しだけ、読者の皆様にお聞きしたいです。


この後、ユウはどう動くと思いますか?


正解は決めていません。

むしろ、皆さんの想像の中にある「その後」が、この物語の続きだと思っています。


ぜひコメントで、あなたの考える“第25話”を教えてください。


そしてもしよろしければ、


・この作品の好きなシーン

・一番笑ったところ

・逆に「ここもっと見たかった」部分

・次回作に期待するテーマやジャンル


なども、気軽に書いていただけるととても嬉しいです。


作者はとにかくギャグ小説が大好きで、

「どうすればもっとくだらなく、でも妙に刺さるか」を考えながら書いていました。


なので次回作もきっと、


・また変な設定の主人公だったり

・会話が成立しなかったり

・世界が勝手に暴走したり


そんな方向になる気がします。


もし「こんなの読みたい!」というアイデアがあれば、ぜひ教えてください。

それ、普通に次回作になります。


---


最後にもう一度。


ここまで読んでくださったあなたへ。


この物語は、あなたが最後まで読んでくれたことで完成しました。


本当にありがとうございました。


それではまた、次の“くだらない世界”でお会いしましょう。

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