43話 後編 酔っ払い
木も生えていない湖沿いの広場に出ると吉塚は遠慮なくドラゴンを呼ぶ笛を吹いた。すると黄土色の二本の角が生えたドラゴンが真っ逆さまに飛来してくる。
吉塚はすぐさま剣を構えて飛来してきた飛竜の角を受け止めた。
耳がキンキンするような声を飛竜が上げる。
――ギャアアアアアアア!
吉塚は「うるさいな」と言いながらも「今日のノワールみたいだ」と余計なことを言う。
ナナが詠唱しこの場の皆の防御を上げる。
「――皆を守って、リフレクトバリア!」
さらに吉塚は己の能力を上げていく。
「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス! ――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー! ――今我が剣の威力を上げよ、スラッシュナイフ!」
剣で飛竜の角を払いのけると胴に斬りかかる吉塚、そしてノワールは飛竜の動きを止めるべく植物のモンスターを召喚する。
「ローズウイップ!」
薔薇のモンスターが召喚され植物のつるで飛竜の動きを止める。
奏楽は勝利の剣を召喚し飛竜に向かって駆ける。
「――今我に勝利を約束したまえ! 勝利の剣!」
飛竜の胴を吉塚が斬りかかると同時に勝利の剣で飛竜の首を斬りかかった奏楽。
飛竜はこの攻撃で動かなくなるのだった。
〇
とある町で元レッドコートのメンバーであったかつて長髪であった短い髪の男とオールバックであった髪を下した男が王都から出張していた兵士たちに追われていた。髪形を変えたことがばれたのだ。
短い髪の男は両手で印を組んで追いかけてくる者に向かって炎を吐いた。
だがその炎も盾で塞がれてしまう。
走って逃げていた短い髪の男の足に矢が刺さり地面に頭から転んでしまった。
「くそ、もう終わりなのかよ!」
髪を下した男は仲間を助けようとするが遅かった。転んでいる短い髪の男は兵士たちによって槍で串刺しにされていたのだった。口から血液が漏れ動かなくなる。
髪を下した男は剣を抜き兵士たちに立ち向かう。
「ずっと追われるだけなら。……お前らごときNPCに負けるはずがねえ!」
立ち向かっていく彼の胸や腹に複数の矢が刺さる。
そして槍で胴を刺され動かなくなった。
一般市民をNPCとし殺戮を繰り広げていたレッドコートのメンバーはこれにて全員処刑されたのである。
〇
飛竜を狩りギルドへ戻ってくると奏楽たちはレッドコートのメンバーが全員処刑されたことを受け付けのお姉さんから聞いたのだった。
哀れだと思った。彼らは最後までただ生きようとしている一般市民をNPCだと思っていたのかもしれない。
一般市民を守ることを酔狂のように思っていた人たちだ。そう思うと可哀そうな最後だと奏楽は思うのであった。
〇
元の世界へ戻った後、警察署で報告としてレッドコートのことを伝えると佐々木警部補は「無差別テロだね」と答えた。大島警部も話を聞いて「それは厄介な問題だったね」と言っていた。
「なにがともあれ君が無事でよかったよ」
そして勝利の剣を与えられたことも報告として伝える。
大島警部は「今、出して見せることはできるかい?」と問うと、奏楽は詠唱をして試してみる。
「――今我に勝利を約束したまえ! 勝利の剣!」
……出ない。
どうやら魔女の呪いがこの世界で無効になるように聖なる力も同じことらしい。
佐々木警部補は微笑んで「見たかったなー」と呟いた。
〇
自宅に戻るとベッドにうつ伏せになって倒れた。
「あー疲れた」
このまま眠ろうとしていたがすぐに起き上がって寝間着に着替える奏楽。
着替え終わると明日は何をしようか仲間と会ってどんなことをするかわくわくしながら目を瞑った。奏楽は変な見識に捕らわれ悲しいことが起こらない良い仲間に恵まれている自分に感謝を覚えながら眠るのであった。




