表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

06話 魔女との遭遇

 大木吉塚は幻聴のため病院に入院することとなった。奏楽はお見舞いに行き面会室で調子はどうか聞いた。

「調子はいかがですか?」

「まあまあぼちぼちだな」

「幻聴の方は?」

「薬をもらって寝ているんだが、まだ幻聴はある」

 吉塚は疲れ切っていたようで薬を飲んで寝るだけの生活を病院内でしていた。いくつものクエストをこなし続けて心も体も疲労が溜まっていたようだ。

 それにしても魔女の声はどうやって届いているのか。それが不思議でしょうがなかった。


      〇


 魔女探しをすることが今の奏楽の役割だが、どうやって探せばよいか分からない。ギルドの窓口で魔女探しというと役職が魔法使いの女性を紹介される。間違ってはいないが、その魔女ではない。魔女といっても誰でもよいわけじゃない。人を異世界に誘拐する魔女を探しているのだ。

 その話をしてもギルドの職員にはよく分からないらしい。異世界遭難者の話をしたが異世界転生者と間違われてしまう。どうやら異世界では遭難者が知られていないらしい。

 とりあえず奏楽は異世界遭難者が襲われる可能性があるため、モンスターの討伐クエストを受けることにした。モンスターが減れば減る分異世界遭難者の安全が確保できる。


      〇


 モンスターが発生している霧の町へ歩いていく道の途中、いじめられている少年がいた。まるで異物を拒絶するように少年は仲間に入れずにいた。何か強い罵倒を受けている。

「おい何しているんだ!」

 奏楽が問いただすといじめをしていた少年たちは「こいつ嘘つくんだ」と言い出す。

「常に魔女が僕たちを見ているとか言うんだ。どこに魔女がいるっていうんだよ!」

 奏楽は驚いた。いじめられていた少年に問いかける。

「ねえ君。その魔女ってなんだい?」

 いじめられていた少年が答える。

「魔女が僕たちをずっと見ていて何かを判断しているんだ。勇者になる器かもしれない。勇者になる者は試練が与えられてモンスターを狩りに行かされる運命を背負う。時が来れば何かの役割が与えられるんだ。それが何なのか分からないけど」

 さらにこんなことも言い出す始末。

「お兄さんもそうでしょ? それで冒険者やっているんでしょ?」

 奏楽はそれを否定した。

「違うよ。俺は女神によって転生を受けてその力でできることをやっているんだ」

 いじめていた少年は「ね? 気持ち悪いでしょ?」と言ってくる。

 この少年も幻聴を聞いているということなのだろう。

 いじめられている少年が言うには女神によって転生を受けたとして、その様子を魔女が監視しているらしい。確かにその通りだとしたら気持ち悪い話だ。


      〇


 霧が発生した町へ到着した奏楽はペガサスの翼を使い飛翔した。町全体を観察するのだ。そのモンスターはすぐに見つかった。

 大きなくちばしの鶏のような巨大なモンスターが町の中をうろついていた。

 すぐさま急降下し一撃で仕留めようと企むも、気付かれてしまいそのまま躱す体勢をとられてしまう。まっすぐに降下して鶏のようなモンスターに躱されてしまい再び天に飛翔する奏楽。再び強襲するもまたもや躱されてしまう。

 この強襲的な戦い方を止めた奏楽は地面に足を着き、翼で迎え撃とうとする。翼を剣の代わりにするのだ。

「翼で打たせてもらう!」

 鶏のようなモンスターは一直線に向かってきて鋭いくちばしで突こうとするも奏楽は翼で弾き、さらにその翼で鶏のようなモンスターを切る動作をする。

 切られた箇所から出血し損傷を与えたことで叫び声をあげるモンスター。

 再び奏楽は走って追い打ちをかける。

「翼で打つ!」

 両方の翼でクロスするように鶏のようなモンスターを切るとさらに出血し逃げようとするも途中で倒れて力尽きたのであった。


      〇


 今回のクエストでは遭難者にも遭遇しなかった。だが不思議なことに霧はまだ晴れない。どういうことなのだろうか。まだ討伐されていないモンスターがいるのかもしれない。

 辺りを見回すも誰もいなければモンスターもいない。

 一度飛翔して上から様子を見ようとするも「あのー」と女性の声が奏楽を引き留めた。

 後ろを振り向くとそこにいたのは二十代くらいの女性が立っていた。後ろ髪は長く髪留めを付けて額を出し黒い服を着ている。

 奏楽は駆けつけて「大丈夫ですか?」と声をかけた。

「もしかして道に迷われてここまで?」

 女性は首を横に振るう。

「私はこの町に住んでいる者です」

「そうですかー。避難なされていないのですか?」

「はい、外に出なければ安全な部類のモンスターだと思いまして」

 なるほどと奏楽は思う。だがまだ霧が晴れていないため安全ではない。

「ですがまだ霧が出ています。危ないので家の中にいた方がいいですよ」

 女性は「そうですか」と呟き手を振って近場の家に戻っていった。


      〇


 再び奏楽は飛翔し上から霧の町の様子を見下ろした。霧が出ているためはっきりとは見えないが、巨大なモンスターや目立つ姿ならば見つけることができる。

 モンスターが見つからないと思ったその時だった。

「きゃあああああああああ」

 女性の悲鳴が聞こえてきた。先ほどの女性の声だ。

「いけない!」

 奏楽は急いで急降下し、女性の家の窓に突っ込んだ。ガラスが割れ窓の破片が部屋中に飛び散る。

 女性は巨大な羽虫に襲われているところであった。

 奏楽は翼で巨大な羽虫を叩き落とす。

 そして巨大な羽虫にとどめを刺そうとしたところ、エクスマキナの少女が現れ背中から拳銃を取り出し数発の弾丸を放ちとどめを刺した。

「任務完了。消息を絶った豊餅奏楽を発見。これより共に帰還する」

 さきほど襲われていた女性を探すがどこにもいない。奏楽は不思議な気持ちになりながらも窓の外を見ると霧が晴れていく光景があった。

 ほんとうは窓を壊してしまったことを謝りたかった奏楽。

 エクスマキナの少女は自らの右手を外し右脇に抱え右腕を前方へ構え、光の輪を発生させる。奏楽は光の輪の中へ入っていきその後ろを少女も跨いでいく。


      〇


 町はずれの森の中を歩く女性は何やら楽しそうに笑っていた。

 ――フフフ、フフフフフフフ。

「ああ、なんて楽しいのでしょう。私のために戦い、私のために異世界へとやってくる」

 長い髪を触り前髪の髪留めを付け直す。

 彼女の周りには霧が立ち込め、太陽の光を遮断している。

「ここにいるんですよ。でも、まだまだですよね。まだまだ」

 高笑いしながら霧に囲まれた道を伝って歩いていく。


      〇


 元の世界へと戻ってきた奏楽はさっそく持ち帰ってきた魔女の話を警察の異世界研究捜査部の大島輝幸警部と佐々木和則警部補に話したのであった。魔女が異世界への扉を開きこちらの世界の住人を誘拐していること。そして誘拐された人間がモンスターに襲われていること。

 大島警部は顎を触りながら述べた。

「つまりそのどこにいるか分からない魔女を探さなければならないと」

「そうなります」

 佐々木警部補は「こりゃ大変な仕事になる」と言い肩を落とした。

 だがとりあえずはエクスマキナの使い方にしても魔女を探すことが第一の課題となるのであった。


      〇


 入院中の吉塚は病院の個室でベッドに横たわり休息を取っていた。吉塚は夢を見ていた。泉が目の前に広がっていて、自分は陸でゆっくりその美しい水辺の光景を眺めていたのだ。

 2羽の白鳥が降りてきてデートをするように水の上に浮かんでいる。

「白い羽根、あいつの翼も綺麗なんだよな」

 仲間の奏楽のことを考えていると隣に一人の女性が現れた。ショートヘアでカチューシャを付けた十代後半くらいの黒い服を着た女性だ。

「何を考えていらっしゃるのですか?」

 知り合いでもない女性。でも不思議と吉塚は心を許して答えるのであった。

「最近できた友人のことを考えていた。突然やってきたやつでな。いつも空を飛んでいるんだ。名前もそんな感じの名前で」

 女性はうんと頷く。

「少しうらやましいなって思う。自由に空を飛べるってどんな感覚なんだろう」

 女性は「飛んでみたい?」と聞く。

「飛べるものなら飛んでみたいな」

 女性は「そう」と呟く。

「あなたにはあなたにできることがある。そんな自由をもっと感じてみて」

 吉塚はにかっと笑った。

「確かに。そうかもな」

 夢はそこで途絶えた。

 目を開けると深夜であった。再び目を閉じる吉塚。俺にしかない自由。確かに剣を使えたりスキルが使えたりするのはみんなができるわけじゃない。

 不思議な夢だと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ