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覚悟

ちょっとUPする順番間違えた気がします^^;





 いろいろあった後、わたしはルイスに嫁入り道具の件で話があると言われた。

 改めて、父とわたしとルイスの三人で話をする。

 それは相談というより、決定事項の連絡だった。


「え?」


 わたしはルイスの言葉を聞き返す。

 ルイスはわたしの嫁入り道具は大公家が揃えると言った。

 わたしと父は顔を見合す。

 二人とも困った。

 正直なことを言えば、我が家に王子の妃に相応しい嫁入り道具を揃える財力はない。

 お祖父様が用意してくれるというのはとても助かった。

 しかし、いくら何でも甘えすぎだろう。


「いえいえ、そこまでしていただくわけには」


 思わず、断ってしまった。

 わたしの隣で父が苦笑している。


「別に新しいのを誂えるわけではありません」


 ルイスはそんなことを言った。


「どういうことですか?」


 わたしは尋ねる。


「叔母上が嫁入りの時に使うつもりで誂えていたものです」


 つまりは母が使わなかった花嫁道具ということらしい。


「どうしてそんなものが?」


 わたしは首を捻った。

 母は家を出るなら早い方がいいと、縁談などが決まる前に出てきたと言っていた。

 結婚が決まる前に嫁入り道具を誂えるのは可笑しい。


「叔母上が王都の華と言われていたことは知っていますか?」


 ルイスの質問に私は頷く。

 そんな母には当然、縁談がたくさん舞い込んでいたそうだ。

 その中の一つに現国王との話もあったらしい。

 第一王子の母である妃を娶った頃の話のようだ。

 秘密裏にその話は進んでいたらしい。

 本人にも知らされずに。

 祖父は来る時に備えて、花嫁道具を誂えていたそうだ。

 だがそんな王族との縁談が本人の耳に入る前に母は父を追いかけてランスローに行ってしまった。

 当然、縁談は破談になる。

 王家の格に合わせていた花嫁道具も無駄になってしまった。

 それらはずっと大公家の中で眠っていたらしい。


(それはお祖父様が怒るわけだわ)


 母を頑なに許さなかった気持ちがわかる気がした。

 大公家の面子は丸つぶれだ。

 内密に進められていた分、表立っては何事もなかっただろうけど。

 それは祖父にとって、大きな痛手であっただろう。


「新しいものではありませんが、王家に相応しい格の高いものばかりです。それを叔母上の代わりにマリアンヌが使うことを祖父は望んでいます」


 ルイスの言葉に、わたしは父を見た。

 父も頷く。

 母の嫁入り道具をもらえるなんて、母からの贈り物のようだ。

 新しい物かどうかなんて関係ない。

 わたしはそれを持ってお嫁入りしたいと思った。


「ありがたく使わせていただきます」


 ルイスに礼を言う。

 ルイスは黙って、頷いた。


「それともう一つ……」


 そこまで言って、黙り込む。

 少し言い難い顔をした。

 ルイスが遠慮するなんてらしくない。


「良くない話ですか?」


 わたしは尋ねた。


「あまりいい話ではありませんね」


 ルイスは頷く。


「それでも、大切な話なのでしょう?」


 わたしが聞くと、ルイスは頷いた。

 少し迷って、ルイスは切り出す。


「ラインハルト様は将来、国王になるでしょう。その妃が男爵家の令嬢ではいろいろ不味いことはわかりますよね?」


 わたしに問うた。


「大公家の養女になれということですか?」


 わたしは心のどこかで覚悟していたことを聞く。

 わたしにとって、貴族の階級制度はそれほど大きなことではない。

 だがそれはわたしに前世の記憶があるからだ。

 市民革命が起これば、階級など一晩で消えてなくなることをわたしは知っている。

 貴族はただ貴族に生まれたというだけのことで優遇されているのであって、特殊能力などを持っているわけではない。

 貴族を権力の座から引きずり落とすことなど、そう難しくないことを理解していた。

 だが、この国での記憶しか持たない人間には階級は大きな問題だ。 

 同じ貴族でも全く違う。

 貴族の中では最下位の男爵令嬢が王妃になるのは、後々、災いの種になるだろう。

 そしてそれを一番簡単に解決する手段があることにわたしは気づいていた。

 養女となり、位の高い家から王家に嫁げばいい。

 わたしはこの国の貴族の最高位である大公家の血を引いていた。

 大公家の娘として嫁ぐのが一番問題ないことはわかっている。

 だが、それはわたしと父の縁が切れることだ。

 公では父と呼ぶことが許されなくなる。

 それがわかっていたから、爵位の問題に気づかないふりをして目を背けてきた。


「そうです」


 ルイスは頷く。


「そうしてもらいなさい」


 父は言った。


「私の方から大公様にお願いしようと実は思っていたんだ」


 小さく笑う。


「お父様」


 わたしは複雑な顔をした。


「将来、国王陛下が辺境地の男爵を義父と呼ぶことはあってはならない。それはわかっていただろう?」


 父はわたしを諭す。


「わかってはいるけれど……」


 わかっていても寂しかった。

 でもそれを口に出来ないこともわかっている。

 だから、別の言葉を口にした。


「わたし、一年に一度、ここに帰ってきます。ユーリに、毎年新しい料理を一つ、ここで教える約束をしたので。王家に嫁いでも、年に一度の旅行くらい許されるでしよう?」


 ルイスに尋ねた。

 里帰りする先は大公家になるとしても、旅行なら許してもらえるだろうと迫る。


「……それくらいなら、許されるでしょう」


 ルイスは頷く。

 わたしも頷いた。


「わかりました。全て、お祖父様のおっしゃるとおりにします」


 約束する。

 ルイスは肩の荷が下りたような顔をした。

 ほっと息を吐く。

 ルイスにとっても気の重い役目だったらしい。


「嫁入り道具の話をするより、先に養女の話をした方が簡単でしたでしょうに」


 わたしは苦く笑った。

 養女になれば、嫁入り道具を大公家が用意するのは当然だ。

 その件について説明する必要は無い。


「そうすると、養女の件が断られた時に花嫁道具を使ってくれと言えなくなるでしょう? お祖父様はどうしてもあれを持って嫁入りするマリアンヌの姿を見たいようです」


 ルイスは説明した。

 養女の件は無くても、花嫁道具は貰えたらしい。


「貴族って、面倒ですね」


 わたしはぼやいた。


「その面倒な貴族の総本山に嫁ぐんですよ。覚悟はありますか?」


 ルイスは問う。

 わたしは苦く笑った。


「一月とは言いません。二週間、ここで過ごす時間をください」


 わたしは頼む。

 簡単に出来るとは言えなかった。

 簡単なことではないことはわかっている。

 わたしには時間が必要だと思った。


「いいでしょう」


 ルイスは頷く。


「それくらいなら、私がなんとかします。でも二週間後、少なくとも王都に戻り、大公家に入りますように」


 約束を求める。

 わたしは大きく頷いた。




この次にあげる予定の話と順番、間違えた気がします。

まだ書いていないので、差し替えも出来なかった^^;


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >私の方からお大公様にお願いしようと実は思っていたんだ この世界特有の表現でしたらすみませんが、「お」はいらないと思います。
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