ゴール
短いのですが……。
予選が三日、本戦が二日。
五日もかけたゲームの最後の問題は何故かなぞなぞだった。
「頭が二つ。外側の手は2本。足は三本。……それが何かわかったら、王の間に来てください。王の間でゴールのテープを切った人が優勝です」
ルイスの説明を聞いて、誰もがぽかんとする。
結局、森で夜を明かすことが出来たのはフローレンスとわたしたちの4人だけだった。
フローレンスことラインハルトは、小さな頃から森に慣れ親しんでいたのでいろいろ詳しかったらしい。
さほど苦労することもなく、夜を明かしたようだ。
わたしたちは生真面目に野宿したが、実は森の一番奥には小屋があり、そこに泊っても構わなかったらしい。
森から出たらアウトだと言われたが、森にある施設を利用してはいけないとは確かに言われていなかった。
(いやいや、それじゃあ森で一夜を明かしたにならないじゃん)
わたしは心の中で突っ込んだが、別にサバイバル能力を求められていたわけではない。
知力、体力、時の運と最初に言われていた。
小屋を見つける運とそこを使う発想という知恵と森の一番奥にある小屋まで行く体力が必要だったらしい。
(答えがわかれば納得できるけど、すっきりはしないな)
わたしはため息をつく。
だが、淑女の皆さんにルイスが野宿なんてさせるわけがなかった。
ちゃんと正解が用意されていると、考えるべきだったのだろう。
そもそも、王族が狩りに使うための森だ。
狩猟小屋くらいはあると考える方が自然だろう。
そんなことにも気づかなかったのは、寝不足で頭が回らなかったからかもしれない。
今にして思うと、フローレンスは小屋のことを教えようとしていたように思えた。
(全部、わたしがから回っていたことが敗因かも)
わたしは反省する。
ルティシアとクレアも巻き込んでしまった。
それを申し訳なく思う。
(結局、ルイスに負けた気がする)
敗北感が半端なかった。
その上、最終問題はどう見てもなぞなぞだ。
これをそのまま受け取っていいのか迷う。
(やることが壮大なわりに、用意されている答えがチープなんだよね)
簡単なのか難しいのか、わからなくなった。
ちなみになぞなぞの答えは一つ、思い浮かんでいる。
だがそれが正解なのかは自信がない。
引っ掛け問題である可能性は十分にあった。
「すいません」
わたしは手を挙げる。
意見がありますアピールをした。
「どうぞ」
ルイスは促す。
「答えが合っているかどうか、この場で判定が欲しいです。王の間まで行ってゴールを切ったのに、不正解で戻るとか失格になるのは効率が悪いと思います」
提案した。
「それはそうですね」
ルイスは頷く。
「では、正解がわかった人は私に見せてください。合っていれば、そのまま王の間に向かっていただきます」
わたしは注意深くルイスの返事を聞いた。
ニュアンス的にはわたしの思いついた答えは合っている気がする。
わたしは隣にいるアークをちょんちょんと引っ張った。
なぞなぞの答えは二人三脚だと思った。
この世界に二人三脚なんてあるのかは知らないが、ロープを出してもらい、それでわたしとアークの足を結ぶ。
アークは訝しい顔をした。
わたしが何をしているのかわからないらしい。
わたしは声に合わせて足を動かすようにアークに頼んだ。
一が右足で二が左足だと教える。
わたしは一と二を繰り返した。
二人三脚でルイスのとこに行く。
「頭が二つで外側の手は二本。足は三本です」
説明した。
「よろしい。ではそのまま、王の間に向かってください」
二人三脚で移動しろとルイスは無茶を言う。
だが、そのくらいは覚悟していた。
わたしは受けて立つ。
後ろを振り返り、クレアとルティシアを見た。
二人はわたしの様子を見ていたので、理解する。
同じように従者と足を縛った。
それを確認してから、わたしとアークと王の間に向かう。
勝たなければならないので、待つことはしなかった。
二人は直ぐに追いついてくると思ったが、初めての二人三脚に苦戦しているらしい。
わたしたちは一、二とリズミカルに足を動かし、無事に一着でゴールした。
2位と3位が欠番なので、飛ばして4位にルティシアが入る。
女性同士のペアで、身長差も歩幅の差も少ないので、コツを掴むのが早かったらしい。
その次にクレアがゴールした。
こちらは終始、ギルバートと身体が密着することを恥ずかしがる。
先にゴールして待っていたわたしとルティシアはそんな初々しい二人に笑みが洩れた。
フローレンスは棄権したらしい。
こうして、全員がゴールした。
ちゃんと答えは用意してありました。
淑女の皆さんを野宿させたら危ないですかね。
そしてゴールはあっさりと。
作戦なんてたてるまでもなく、実力でそのまま予定通りにゴールです。
そして大切なのはこの次です。




