第209話 ロマン
町を歩いていくと、西門にやってきた。
大きな門が開いており、先に砂漠が見えている。
どう見ても暑そうだ。
「歩くのは無理ですね……」
「無理じゃの」
「さすがにちょっと……」
馬でもラクダでも嫌だ。
冒険者ギルドのお姉さんに危険だからやめた方が良いと言われたが、それ以前である。
冒険者や探検家は大変だな。
「車だから大丈夫だって。ほら、あれよ」
ノーラさんが指差した先には白い車があった。
黒でなくて良かったって思った。
「運転できるんですか?」
「もちろんよ。乗って、乗って」
今日のノーラさんはちょっとテンションが高いなーと思いつつ、車に乗り込む。
ノーラさんが運転席、サクヤ様が助手席で俺とジュリアさんが後部座席だ。
ってか、暑い……
「ごめん、暑いわね。冷却石を……」
ノーラさんは運転席と助手席の間にある水晶に触れる。
すると、透明の水晶の色が青っぽくなり、一気に涼しくなった。
「おー、快適」
「ですね。やっぱり冷却石です」
ホントねー。
「これがなければ無理よ。じゃあ、出発ね」
ノーラさんがハンドルを動かしながらそう言うと、車が動き出し、門を抜けた。
「おー! 一面が砂漠だ」
「すごいですね! なんか蜃気楼が見えそうです!」
確かに遠くで湯気みたいなものが見えており、なんかぼやけているような気がする。
「反応の良い夫婦ですね」
「まあの」
俺とジュリアさんは砂漠を見渡していく。
「魔物とかいるかな?」
「砂の中じゃないですか? 魔物もこの暑さはしんどいでしょうし」
魔物も大変だ。
その後も車は広大な砂漠を進んでいき、時には砂丘を乗り越えたりする。
俺とジュリアさんはそんなことに一喜一憂しながら砂漠を楽しんでいった。
「そういえば、他の冒険者や探検家を見ませんね。ラクダを見たかったんですけど」
確かに……
「ノーラさん、いないんですか?」
「この暑い中で進んだら死ぬわよ。そういう人達は夜に移動するの」
あ、それもそうか。
「それはそれで怖いですね」
「魔物も活発になるからね。あなた達には関係ないけど、砂漠を歩く時は専用の靴がいるわよ。砂の中で寝ているヘビとかサソリを踏んだら危ないからね」
あ、サソリはいるんだ。
でも、デスワームはいないっと。
「この車は大丈夫です?」
「大丈夫、大丈夫。特製だから。怖くて値段を聞けなかったやつ」
軽く見積もっても金貨1000枚は超えてそうだ。
「怖いですね」
「まあね。それで今日は遺跡の案内をするけど、適当に回るわよ?」
「お願いします。お宝は? ウチの奥さんが期待してます」
「無茶言わないでよ……わかっている遺跡はすでに奪われた後だし、お宝を探そうと思ったらまだ発見されていない遺跡に行かないとないわよ」
そりゃそうだ。
「まだ発見されていない遺跡ってどうやって探すんですか? 砂でも掘るんです?」
大変じゃない?
「その辺で大事になってくるのが私みたいな学者よ……あ、巫女だけどね」
いや、学者さんでいいよ。
「と言いますと?」
「部族の人から聞き込みをしたり、歴史を研究してどこに何があるのかを想定したりするわけ。実際、私が発見した遺跡もあるのよ? お宝はなかったけどね」
へー……
「お宝がありそうな遺跡ってあるんですか?」
「昔の豪族のお城やお墓がそうね」
ピラミッドだ!
「そういう想定している場所はないんです?」
「まあ、ないこともないけど……でも、大変なのよ? どうやって発掘するのよ? とんでもない人力と専用の道具がいるのよ?」
ふーん……
「ジュリアさん、できる?」
「任せてください! めちゃくちゃ得意です!」
まあね……
「ん? 何が?」
ノーラさんが首を傾げる。
「ジュリアさんは穴掘り魔法が得意なんです」
「……何、その魔法?」
「そのまんまです。地面に穴を空ける魔法ですね」
ジュリアさんが自信満々に答えた。
「へ、へー……珍しい魔法ね。えーっと、じゃあ、行ってみる? 空振りでも知らないわよ?」
「行きましょう」
「ロマンです」
遺跡は再来週の祈りの時でいい。
「こう言ってますけど?」
ノーラさんが助手席のサクヤ様を見る。
「ウチの子達は好奇心が旺盛なんだ。行ってやってくれ」
「わかりました。では、そっちに行きましょう。えーっと……ちょっと待ってね」
ノーラさんは車を止めると、地図を確認しだした。
「遠いんですか?」
「うーん、ちょっとね。でも、夕方までには帰ってこれるか……じゃあ、行きましょう」
「お願いします」
ノーラさんは地図をしまうと、再び、車を動かし始めたのでジュリアさんと砂漠を眺めていく。
「さすがに飽きてくるのう……」
「そうですか? あの砂丘とかすごくないです?」
「何度も見たわい。ピラミッドが見たいのう。スフィンクスが見たいのう」
「ピラミッドはわかんないですけど、スフィンクスはないでしょ。それこそ神獣扱いですよ」
よくわかなんないけど、聖なるものだろう。
「まあのー……ノーラ、ピラミッドはあるか?」
「何ですか、それ?」
まあ、知らないわな。
「我らの世界の砂漠にある王家の墓じゃな。大きな石材を積み重ねた三角のやつじゃ」
「あ、絵がありますよ。漫画ですけど」
ジュリアさんがスマホを取り出し、運転しているノーラさんに見せる。
「ほー……へー……似たようなものがあるわね」
あれ?
「そうなんですか?」
「うん。それが通称、生贄の祭壇。私はその絵っぽい遺跡のてっぺんに作った祭壇で祈るの。クソ暑いし、なんか鳥に狙われているような気がして嫌なわけ」
確かに生贄っぽい。
でも、それ、ピラミッドでは?
「それがお墓じゃないですか?」
「定説では女神様に祈る祭壇なんだけど……」
「近くに同じものがあったのに?」
2個もあんの?
「うーん……あれ? お墓なの?」
知らんがな。
「どうでしょう? 発掘とかしてないんですか?」
「女神様への祈りの祭壇だし……発掘なんて誰も……」
畏れ多いのか。
「部族の方々は?」
「知らないって……あ、なんか祭壇じゃない気がしてきた」
どうなのかね?
「行ってみるか?」
サクヤ様がノーラさんに聞く。
「あ、いや、それは無理です。逆方向ですので夜になってしまいます」
「じゃあ、今度の祈りの時にちょっと見てみましょうよ」
「そうしようかしら? ちょっとそれまでに調べてみるわ……なんか帰りたくなってきたな」
そこは頑張ってよ。
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