第206話 一番偉い当主様じゃろ
ノーラさんの部屋に飛ぶと、ノーラさんがさっきまでと同じ位置で本を読んでいた。
「久しぶりね、ディーネ」
「そうだなー。ノーラ、いつも本を読んでるな。目が悪くなるぞ」
「あなたは生涯、目が悪くなりそうにないわね」
「健康に生きてるからな!」
ディーネさんがドヤ顔を浮かべる。
「そう……しかし、転移って本当にすごいわね。水の国にいるはずのディーネが目の前にいるんだもの」
俺達は世界すらも違うけどね。
「この前、火の国に行ったな。なんであそこは料理が赤いのかねー?」
「そういうお国柄でしょ。それよりもリヴァイアサンに乗ったんだって? 何してんの?」
「歴史に名を残したな。おかげで最近はお客さんも多い」
ディーネさんがまたもやドヤ顔を浮かべた。
「あんたはそういう看板巫女が向いてるかもね」
看板巫女……
「勉強や書類仕事よりそっちが良いわ。あ、お土産。ウチの魚」
ディーネさんがカバンをノーラさんに渡す。
「ありがとう。あなたのところの魚って美味しいのよね」
「それがウチの自慢だからな。サラの奴が持ってくるだろう赤いソースをかけて食べてくれ」
マグマね。
「合うのかしら……って、サラね」
ノーラさんが言うようにサラさんを連れたジュリアさんとタマヒメ様がやってきた。
「こんにちは。ノーラさんはお久しぶりです」
「久しぶりね。あなたも元気そうで何より」
「ノーラさんは相変わらずですね」
サラさんがデスクの方で積まれている本を見て、苦笑いを浮かべる。
「ちょっとね……」
「ほどほどがいいですよ。あと、掃除もしましょう」
そういえば、サラさんの執務室は綺麗だったな。
ディーネさんも綺麗だった。
多分、使ってないからだろうけど。
その後、巫女様3人が仕事なんかの話をし始めたので俺達も話をしながら時間を潰していく。
なお、やっぱりサラさんが赤いソースを渡していた。
そして、しばらくすると、日も沈み、窓の外が太陽の光ではなく、街灯の灯りで照らされている。
「そろそろ行きましょうか。一応聞くけど、あなた達はどこか希望はある?」
ノーラさんがサラさんとディーネさんに聞く。
「お任せしましょうか?」
「わからないしな」
2人が顔を見合わせた。
「じゃあ、ちょっと贅沢をして、月の導きに行きましょうか」
先週とは違う店のようだ。
「良いところなんですか?」
冒険者ギルドで聞かなかった名前なので聞いてみる。
「ウチが接待とかで使う店ね。こういう時に使わないと」
へー……
「期待できそうじゃの。では、行くか」
俺達は部屋を出ると、通路を通り、教会を出た。
教会を出る際に神父さんがぎょっとした顔でこちらをガン見していたがスルーだ。
さすがに巫女様3人はびっくりするだろうな。
「涼しいなー。これが昼間だとめっちゃ暑くなるんだろ?」
「夜はむしろ、こっちの方が涼しいくらいですよね」
ディーネさんとサラさんが顔を見合わせる。
「サラのところも夜は涼しいでしょ。温泉とか辛いものばっかり食べてるからじゃないの?」
「そうですかね? そんなこともない気がするんですけど」
「温泉に入りたいなー。サクヤ様、夜は火の国の方に泊まるから送ってー」
ディーネさんがサクヤ様に頼む。
「構わんぞ。ただ遅くまでは付き合わないからな」
「大丈夫。今日は温泉にお酒を浮かべて、3人で飲むから」
風情だなー。
「3人……私も頭数に入ってる?」
ノーラさんがサラさんに聞く。
「だと思いますよ。せっかくですし、いらしてくださいよ」
「あー、うん。じゃあ……」
この人達、仲が良いな。
俺達が話をしながら歩いていくと、徐々に人が増えだし、昼間のように明るい歓楽街にやってきた。
「すごいですね」
「なー? ウチの町にもこういうのができないかね? 飲み屋は多いけど、こういう賑わっているところは少ないんだよな」
水の国の聖都は静かなバーみたいなところが多かったな。
「ああいう雰囲気も良いじゃないですか。それぞれの顔があるんですよ」
「それもそうか。ノーラ、月の導きはどこだよ?」
「ちょっと行ったところ。案内するからついてきて。間違っても勝手にどこかに行かないでね」
「行かねーよ」
巫女様3人がアーケードをくぐって歩いていく。
「すんごい仲の良い3人だね」
「ええ。国が違うし、そんなに会うことないと思うんですけど」
旧友感がすごい。
「同じ苦労を抱えている同士なんじゃろ」
「苦労? あいつら、遊んでいるだけじゃないの?」
「我らが見てないところではちゃんと働いておるんじゃろ。ディーネ以外」
「そうね。ディーネ以外」
あの人だってちゃんと天気予報してるから……
「こらー。悪口は聞こえるんだぞー。いいから早く行こうぜー」
ディーネさんが急かしてきたので俺達も続く。
そして、歓楽街をキョロキョロと見渡しながら歩いていくと、先週行った砂の城を通り過ぎ、さらに奥へと進んでいった。
すると、綺麗な白い壁の2階建ての建物の前でノーラさんが立ち止まった。
「ここですか……」
扉の上には月の導きという文字と三日月の絵が描いてあるからそうだろう。
「一応、高級店だから変な酔っ払いとかはいないから安心して」
ノーラさんはそう言うと、扉を開け、中に入ったので俺達も続いて中に入った。
すると、綺麗な身なりをしたウェイターが出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ、ノーラ様」
「こんばんは。御覧のように大所帯だけど、空いているかしら?」
よく考えたら男は俺1人だな……
今さらだけど。
「もちろんでございます。どうぞ、こちらへ」
ウェイターがそう言って、近くにある階段を昇っていったので俺達も続く。
そして、2階に行くと、近くの扉を開け、バルコニーに出た。
外の喧騒や明るさはあるが、大きな丸テーブルがあるだけで俺達以外はいないし、2階なので外から俺達を見ることはできない。
「座ってちょうだい」
ノーラさんに促されたので皆が席につく。
「本日はようこそいらっしゃいました。当店はコースになります。何か飲まれますか?」
「私はお酒が飲めないからジュースにしてちょうだい。この人達は適当なお酒を」
「かしこまりました」
ウェイターは恭しく頭を下げると、下がっていく。
「上級だね」
「そうですね」
あれ?
あ、ジュリアさんから慣れているオーラを感じる。
神様方、巫女様方、お嬢様……
あれ? もしかして、本当にド庶民なのは俺だけ?
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