第204話 ノーラ先生
「大事に食べたいと思います」
「そうしてちょうだい。世界には色んな国があって、色んな風習があるけど、ここは出されたものを残してはいけないって風習がある」
「それはウチの国もです」
米粒一つ一つに神様がいるんだっけ?
「なら結構。じゃあ、話の続きをするわね。ここはそんな感じで文明が一度滅んだから遺跡がある。だから探検家や冒険者が集まっていたわけよ」
一攫千金か。
「部族の方はそれを許容しているんですか?」
「ダメなところを盗掘しなきゃね。さっき言ったお墓とかがそう。それ以外はもう2000年も前の遺跡だし、興味はないみたい。むしろ、賢い人は部族に発掘の手伝いをお願いしたりもするわね」
盗賊さん方に頼むのはハイリスクハイリターンだな。
「この聖都はいつ頃? 数百年前と見てますけど」
「それで合ってる。火の国や水の国と同時期ね」
それはこの教会を見ればわかる。
他の神殿とまったく同じ構造なんだもん。
「厳しい地に聖都があるって聞きました」
火山の火の国、水害の水の国。
「ええ。その通りよ。ここは厳しさで言えばトップね。こう言ったらなんだけど、このクソ暑い地に住む方がおかしいのよ」
リアクションしにくいな。
この人、ここの生まれだし。
「でも、夕日が綺麗だよね?」
「ええ。とても綺麗でした」
ジュリアさんとフォローする。
「ありがと。景色は人気ね。だからこそ、観光地になれたわけ。あなた達も列車で夕日を眺めながらチューでもしたでしょ」
したけど、ほっとけ。
夫婦なんだからいいだろ。
新婚なんだぞ。
「火の国もそうですけど、ここも町を作るのは大変じゃなかったですか?」
話を戻そう。
「そうね。川の治水に部族の懐柔、それにこれだけの規模の町を作るのは大変だったらしいわ。何しろ、ほとんど木がないからね」
この町は木材できた家はない。
「どうやったんです? 魔導帝国ですか?」
「ええ。技術はそこでお金は周辺国の援助。というか、北にあるダルト王国ね。今でも頭が上がらなくて、毎年、接待しているわ。先代の巫女様はその時に見初められたみたいね」
なるほどね。
「ノーラさんもチャンスでは?」
「私は嫌。ド庶民が王宮生活なんて無理よ」
まあ、わかるな。
身の丈に合った生活というものがある。
俺はかなり背伸びした生活をしているけど。
「あのー、お話を聞いてると、歴史って結構、解明されてませんか?」
ジュリアさんがノーラさんに聞く。
「そうね。合ってる確証はないけど、かなり解明されてるわ」
「他に気になることでもあるんでしょうか?」
ノーラさんがいまだに研究しているということはそういうことだろう。
「いっぱいあるわね。一番は祭壇の場所が不明なこと」
祭壇?
「あれ? 祭壇って生贄がどうちゃらこうちゃらって聞きましたけど?」
ディーネさんが土の国の祭壇は通称、生贄の祭壇って言っていた。
「確かに言ってましたね」
「ね?」
ジュリアさんと顔を見合わせる。
「ディーネだな……今ある祭壇は新しいやつなの。と言っても200年以上前だけどね。私が言ってるのはそれより前にあった祭壇。突如として消えたって本に書いてあるのよ」
一気にミステリーになったぞ。
「消えたって?」
「祭壇は砂漠の中のとある遺跡にあったんだけど、突如として消えたらしい。当時は女神様の怒りを買ったんではと大騒ぎだったらしいわ」
ノルン様の怒り?
「怒ったんですかね?」
サクヤ様に聞いてみる。
「あやつがか? 絶対にないじゃろ」
俺もそう思う。
ノーラさんの前では言えないけど、正直、あの人、そんなにこの世界の宗教に興味がないと思う。
「ノルン様は素晴らしい女神様なのでそんなことはないと思うんですけど……」
この前も何度目かわからない結婚祝いでゲームソフトをくれたし。
「もちろん、そんなことないわよ。でも、実際に祭壇があった遺跡はなくなった。代わりに近くにあった遺跡に作ったのが今の祭壇ね。生贄の祭壇ってディーネが言ってるのはそういう経緯があったから反省を込めて、ノルン様に巫女を捧げよう的な趣旨が含まれているわ」
えー……
「生贄ですか?」
教会の連中は何を考えているんだ。
「当時の巫女の前に女神様が現れて、違うからっていうお言葉を頂いたそうです」
とんだ風評被害だもんな。
清廉潔白で皆の理想の女神様……という営業活動に重きを置いているノルン様はそうするだろう。
「生贄の祭壇ってどんな感じなんですか?」
「見る? 何だったら遺跡とか案内するわよ?」
「いいんですか?」
願ってもないが……
「全然、いいわよ。どうせ3週間後に祈りに行かないといけないしね」
「ジュリアさんもいいよね?」
ジュリアさんに確認する。
「はい。せっかくですし、ご一緒したいです」
ジュリアさんも行きたいらしい。
「サクヤ様もいいですか?」
「ええぞ。タマちゃんは来ないと思うがな」
それは……うん。
暑いのも魔物が出るのも嫌がるだろう。
最悪は遺跡についてから転移で来てもらえばいい。
「ノーラさん、お願いしたいです」
「もちろんよ。遺跡も見る? 来週か再来週辺りに危なくないところを案内するわよ」
それはありがたい。
「ありがとうございます」
「行きたいです」
「我もちょっと気になる」
ピラミッドを見たいよね。
多分、ないけど。
「では、ご案内しましょう。来週と再来週ではどっちがいい?」
「あ、来週で」
再来週は東京に行く。
「では、そのように。次はこの国の畜産業がどうやって発展したかを説明するわね」
その後もノーラ先生の歴史の授業は続いていった。
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