女は強いものです
「最近、お嬢様は楽しそうにしていらっしゃいますね。」
「だって!外に出てもいいんだもの!」
あの日、お兄ちゃんから愁さんを紹介してもらって、数週間が経つ。お兄ちゃんはあの日から愁さんと会っていないらしい。というよりは避けられているらしくて心なしかしょんぼりして見える。その姿が可愛くて使用人達の胸を擽るだなんて流石はお兄ちゃん。
私は別に愁さんがどう思っていようが関係ないのでスルーです。むしろ、お兄ちゃんにあんな風に思われているのに少し腹が立つ。まあ、お兄ちゃんに元気になって欲しいから仲直りしてほしいけど。お兄ちゃんが、元気になるならだけど。
それよりも今の私は部屋での監禁から家から出られない今までの生活から、自由に外で遊べる権利をもぎ取った喜びで満ち溢れています。
SPとかいるだろうし、服にGPSとかつけられているんだろうけど。
コンビニでお菓子買えるんだよ?コンビニにいけるんだよ?私の大好きな「竹の子の森」とか「ジャガキリン」とか買えるんだよ?これ程の幸せはない!!
「しかし、よく旦那様や奥様がお許しになられましたね。」
「みーちゃん、女は強く生きるものなんでしょ?」
「ええ、そうですよ。使えるものは涙でも手でも何でも使います。…なんて、愛お嬢様に教えた事を一樹様に知られましたら怒られてしまいますね。」
ふふと微笑んで言うみーちゃん。私は伝えないし、その考えには同感だと伝えている。女は強く生きれる生き物ですからね!
何をしたのか?泣き落としです。実は初めてである大泣きでの泣き落としであっさり許可をもぎ取りました。教えてくれた琴さんに上手だと誉められました。
やっぱり女は強くなければ。
みーちゃんの旦那さんが新しい就職先が決まったとこの前嬉しそうにみーちゃん話してくれたけれど、私は知っている。みーちゃんがダンディなのに少しサボり癖のある旦那さんをいい加減仕事をしろと縄で結んでいた事を。
それは私の未知の世界。どんな事をしているのか興味を持ったら、お兄ちゃんに抱き上げられ、輝くような笑顔であれは尻に引かれるという事だよと教えてくれた。
みーちゃんみたいな人になるのが目標の私の現在の目標は使えるものは使えるようになる事。
涙を自由に使えるようになれば色々と楽だとみーちゃん以外の女性陣に教えられたから。この腐った両親に似たように腐った使用人はもうはいない。というか、みーちゃん含めた女性使用人のスパルタ教育に根を上げていくらしい。
聖母の笑顔でスパルタみーちゃんが代表で続いて、おっとり笑顔で毒を吐く菊さんや、細かい所までビシバシ鍛えますの友さんや、噂話はお手の物の演技派琴さんや、礼儀を知らぬ小娘要らない派の奈津さんがいる。
この5人が実質、この藤咲家の使用人達の上に立つものである。といっても男性陣を表に出させ、5人は裏で活躍しているらしいけど。男性陣の頭が上がらないのは言うまでもない。
「みーちゃん達はやっぱり凄い。」
「愛お嬢様と一樹様の為ですもの。今までの様に従って行動しないままでお二人が心を病まれたら私共一同苦しく思います。」
「みーちゃん達がいるかぎりだいじょうぶ!あ、たっくんとちーちゃんも凄いよ。」
たっくんとちーちゃん…みーちゃんの息子の2人。
本名は拓人と千景。
何度かお兄ちゃんと一緒に会わせてもらって可愛がってくれる人達。親戚のお兄ちゃんって感じかな。私にとって兄はお兄ちゃんだけだからね!
来年に就職活動する年になるらしいけれど、2人は既に就職先?が決まっている。
長男であるたっくんは有名で超お金持ち達が通う学校の教師。次男のちーちゃんはみーちゃん達、使用人の後を継ぐ。
まあ、みーちゃん達は死ぬまで現役ですからと笑顔で話しているけれど。
一見、たっくんの方がいい職業に見えるけれど…というか私も凄い職業に着いたと思うけれど、たっくんは使用人になるちーちゃんを恨めしそうに見ていたっけ。
ちーちゃんは凄いドヤ顔をしていたけれど、中高一貫の超お金持ち学校に私とお兄ちゃんが通うようになると知ったときには立場が逆転したんだよね。
「……あの子達は少し心配ですけどね。」
「だいじょーぶだよ、多分」
ちょっと私達に対して甘過ぎないかいと思うことはあるけど。
それはみーちゃん達も…使用人全員だから、なんというか慣れです。あれ、なんか意味わかんない。
お兄ちゃんは来年、例の超お金持ち学校…の小等部に入学する。その時にたっくんが暴走しない事を祈ろう。
「それじゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ。愛お嬢様」
……さて、どこに行こうかな!
なんか、一気に登場人物増えた。
殆どはあまり出ない…はずです。