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19いきなりのエンカウンター


翌日から、リュークとゼナルは召集がかかるまでリール達と別行動をとった。


『スーシャ』と『コゴリティ』の間の関所を通ったところで別れ、そこから真っ直ぐに『シストリアン』に向かう。




『コゴリティ』に入った途端、景色が一気に変わったような気がした。


建物も人も、いっそう輝いて見える。

細かい部分でクオリティが高い。

素材、加えられた技術、装飾品……。何年も過ごした『デリーパ』が、自分の家が霞む。


市場には外側では見たことがない、あるいは高価で手が出せない物が売られている。

しかし客は少ない。もちろん『コゴリティ』や『デリーパ』程ではないが、賑やかさというものがない。不況の影響は出ていると考えていいだろう。


周りを見渡しながら、二人はゆっくりと進んだ。


ついに『シストリアン』を囲む壁が見える。

近づくと、徐々に細部も明らかになる。


ただの白色だと思っていた壁は、沢山の細かい宝石が散りばめられていた。太陽に反射して七色に輝く。


美しい。


壁に手を添える。見とれながら、壁に沿って進んでいく。


自分の動きに合わせてきらきらと輝く壁。



ふと視線を感じた方を見ると、四、五人のおじさんと呼べる男がリューク達を見ていた。


リュークと目が合うと、一人が向かってくる。

目の前で足を止め、怪しむように聞いた。


「お前ら、名前は?」


「リューク・シュルツ・ペ・トラ です」


「ゼナル・バンドン・ペ・トラ」


そう言うと二人は身分証明書を見せた。

それをまじまじと見ると、目に見えて親しげになった。


「おぉ、そうか。悪いな、急に聞いたりして」


「いえいえ」


その男は簡単に雑談した後、さっさとどこかへ行ってしまった。


「やっぱ怪しまれんだな」


「リュークが壁を見ていたからですよ」


「あぁそうだな。でもよかった。さすがリール……か」


二人が見せた身分証明書。

リールが作らせた偽物だった。

かなり巧妙に作られており、簡単には見抜くことはできない。


『シストリアン』に入るまでは悪目立ちしないようにとリールが二人に渡したのだ。


「長い名前なんてめんどくさいだけだろーが」


「そうですね」


また壁に沿って歩く。

するととうとう『シストリアン』内部に入る場所へやって来た。



今までの関所とはえらく違う。


兵はいないが、しっかりと鉄の門で閉じられている。


内部はどうなっているかわからないが、外側の者を拒んでいるように思える。



なんだか動く気になれず、ぼーっと門を見上げていると、急に門の向こうで物音がしだした。


警戒したが、金属が擦れるような音はしない。武器を持っていたりはしないと見て、またぼーっとしていると、

門の真ん中あたりに小さな門があるようで、そこが勢いよく開き、中から人が飛び出してきた。


顔も含め、上半身を布で隠している。


何者かわからない人物はきょろきょろと頭を動かした後、こちらにかけてきて……


「え、うそ」


リュークはその人物に思いっきり抱きつかれた。頭ひとつぶん身長が低いその人物は、リュークの胸に顔を埋めてひたすら抱きついている。


「え、あ、えっと……?」


珍しくリュークは戸惑うことしかできず、ゼナルは驚いたが、すぐに怒りが勝ってそいつを引き剥がそうとした。


がその時、同じ小さな門の方から兵士と見られる者が数人出てきた。


思わずゼナルはリュークの前に立ち、リュークは引っ付いた人物ごと壁の方を向いた。


一応、かばっているつもりだ。


兵士達はちらりとこちらを見て近づこうとしたが、一人がそれを止めて何やら話し合い、行ってしまった。



「はぁぁぁぁあ」


リュークは安堵のため息をつき、ゼナルは無言でリュークの腹にくっついている奴を見る。


「お前、追われてたのか?もう行ったし大丈夫だぞ?」


リュークが声をかけると、恐る恐る門の方をちら見して確かめ、


「……っはぁ、ふぅぅぅ」


と言ってまた顔を埋める。


もうどうすればいいかわからずリュークは固まった。


とうとうゼナルが痺れを切らしたとき、そいつはぱっと顔を上げた。



顔が近い。


赤茶の布の下から覗く綺麗な金髪。

小顔のきめ細かい肌。

エメラルドグリーンの大きな瞳に長い睫毛。

いい香りがする。


女の子は徐々に赤くなったと思うと、急にさっと青くなり、リュークから飛び退いた。


「す、すいませんっ!あまりにも急いでいたもので咄嗟にだ、抱きついてしまって、いくら追っ手を巻く為とは言えこんなはしたないことを……あぁあごめんなさいっ私ったら見知らぬ人にこんなことを……あぁあごめんなさいっごめんなさ」


「い、いいっ。それより大丈夫か?」


その娘の肩に手を置くと、びくっと震えた。

怖がらせたかと手を離して見ると、その娘は手が置かれた自分の肩を見て、それからリュークの顔を見、俯いた。


「なぁ、本当に大丈……」


「だ、大丈夫……です」


ゆっくりと上げた顔は、抱きついていた時のように赤く染まっていた。


「あの、いきなりすみませんでした。」


「あぁ、別にいいけど……」


リュークの一つ二つ年下だと思われる女の子は赤い顔でにっこりと笑って告げた。


「私、ミーナ・エン・ドメスト・ト・ルモと申します」






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