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#89 最高の朝市

「ん……」



 早朝、カスミが目を覚ますと、そこにはフィオの寝顔が広がっていた。


 旅先でも誰かと一緒に寝るのがもう当たり前になっており、昨日の夜はフィオと眠りについたのだ。



(相変わらず可愛いなぁ……)



「クー……」



 何度見ても可愛いフィオの寝顔をぼんやりと眺めていると、カスミの背中側から別の寝息が聞こえてきた。


 それはベッドの上で丸まって寝ているガリュウのもので、昨日眠りについた時にはいなかったはずだが、いつの間にかカスミのベッドに潜り込んできていたようだ。


 そんなガリュウの体がカスミの背中に当たっており、前からはフィオ、後ろからはガリュウの程よい温かさを与えられ、思わず二度寝しそうになってしまうが、グッと堪えてカスミはフィオのことを起こしにかかった。



「フィオさん、朝ですよ」


「んぅ〜……?」


「一緒に朝市行きましょう?」



 今日はこれから港の方で開かれる朝市に行く予定で、カスミは新鮮な海鮮目当てだが、フィオも魔道具作りなんかに使う魚の魔物の素材が欲しいらしく、一緒に朝市行く約束を昨日していた。



「むにゃ…… 明日じゃ、だめ〜……?」


「私は今日行きたいですっ」


「んぅ〜…… じゃあ、起こしてぇ〜……」


「もう、しょうがないですね……」



 自分じゃ起きれないと言うフィオを、カスミは自分の体に抱き付かせたまま、体を頑張って起こした。



「んっしょと……」


「お〜…… カスミちゃん力持ち〜……」


「フィオさんはまだ軽いですから」



 日頃運動して力を付けているカスミなので、小柄で細いフィオを引っ張り上げるくらいならなんとかできた。



「さっ、朝ご飯サクッと作りますから、それ食べて朝市行きましょう」


「は〜い……」


「クルゥ?」



 カスミとフィオのすぐ横で寝ていたガリュウも、カスミとフィオがあれこれしていた騒ぎを聞いて目を覚まし、寝ぼけているフィオとガリュウを横目に、カスミは朝食を手早く作っていった。


 そして、のろのろと起きてきたフィオと一緒にそれを食べ、準備をして朝市に向かっていく。



「まだ太陽出きってないよ〜…… 昼にやればいいのに〜……」


「漁は深夜に行われるみたいですから、一番新鮮なものはこの時間じゃないと手に入らないんですよ」



 もちろん獲る魚にもよるが、大抵の魚は夜の方が警戒心が薄れるため、獲りやすいのだ。



「クルルー♪」



 ぐでぇとしているフィオとは対照に、パッチリ目を覚ましたガリュウは元気そうにカスミの横でパタパタ飛んでいる。



「あっ、見えてきましたよ」



 カスミがそんなフィオとガリュウと歩くこと15分。


 開放的な造りをした港の前に、様々な出店が出ている朝市の姿が見えてきた。


 そこでは現在進行形で魚の競りも行われており、活気ある声がまだ少し距離があるカスミ達にも聞こえてくる。



「活気がありますねっ」


「クルゥ」



 ガリュウも興味津々で朝市の様子を眺めており、一応朝市の入口にいた従業員の人にガリュウも連れて入っていいかと聞いたのだが、ワイバーン(本当はドラゴン)なら毛が舞い散ったりはしないと思うので、商品に無闇に触らないなら大丈夫だと言ってもらえた。



「わぁ……!」



 そんな朝市に足を踏み入れると、一番手前にある出店の前にある商品がもう、カスミにとっては輝いて見えた。


 前世でもなかなかお目にかかれないような肥えた魚達は、どれもピカピカに輝いているし、しかも値段もびっくりするぐらい安かった。


 なので、カスミは一個一個の出店を見て、その店で一番輝いていたものをまずは買うことにした。


 どの店もかなり個性があって、マグロしか売ってない店や、エビやカニなどの甲殻類を中心に扱う店だったりと、時間に限りさえ無ければずっと見て回っていたいくらいどの店も魅力的だった。


 もちろん、一番輝いていたものとは別に良さげなものがあったらどんどん手に取り、カスミの収納ポーチにはしばらくは買い足さなくて良いくらいの海産物が溜まっていく。


 そうしていると、ワイバーンの子供を連れた可愛い女の子が凄い買ってくれるぞと朝市の間であっという間に噂になり、後半はカスミが何も言わずとも店の人がおすすめ商品を持ってきて見せてくれるようになった。



「嬢ちゃん、このランペイジバスなんかどうだい!」


「わぁ、魔物のお魚さんですか?」



 そんな中、魚の魔物であるランペイジバスというのを勧めてくる店があった。



「ああ。 こいつはこの時期になると群れで海を荒らす厄介者なんだが、味は確かで美味いぞ!」



 どうやらこのランペイジバスが、先日マリンから聞かされた海を群れで荒らす魔物らしい。


 そのサイズは7〜80センチくらいはあろうかというかなり大きなサイズで、形はカスミが知るところの魚でいうと、スズキに似ているが、スズキより頭部が大きく、鋭い牙がびっしりと口に生えていた。



「じゃあ、貰いますっ」


「毎度あり! 捌いた方がいいか?」


「お願いしますっ」



 一応カスミも魚は捌けるものの、どの店でも無料で捌いてくれるサービスがあり、その道のプロに任せた方が綺麗に素早く仕上げてくれるので、買ったほとんどの魚は切り身状にしてもらった。


 他にもいくつかの魚の魔物も買ってみたり、昨日買い損ねた貝や、干物などの加工品も大量に購入し、朝市が終わるギリギリまでカスミは存分に買い物を楽しんだ。



「凄い買ったね〜……」


「大満足ですっ」



 それから朝市を出たカスミは、フィオとのんびり会話を楽しみながら帰路についた。



「フィオさんは良いもの買えました?」


「ん、真珠とか、魚の魔物の牙とか鱗とか買ったよ〜……」



 カスミが爆買いする一方で、フィオもちゃっかり色々とお目当てのものを買っていたようで、ホクホク顔だった。


 そんな満足すぎる時間を過ごしたカスミ達は、朝市は日によって商品が結構変わるということで、暇な時は毎日行こうと約束を交わしつつ、宿の部屋へと戻るのであった。

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