#87 ハンソンの市場
ガリュウが着陸した地点から歩いて30分ほどした頃。
カスミ達はハンソンの街の入口まで辿り着いた。
どうやらこの街は入場料などは取っていないようで、門番はいるものの検問なども行われていないようだった。
「待て、その…… ワイバーンか? 従魔登録されていないようだが」
だが、流石に従魔登録されていない魔物はチェックが入るようで、門番の男に行く手を阻まれた。
「これから従魔登録するんだ」
そんな門番に対して、クリスタが落ち着いて対応をする。
「ふむ…… しっかり言うことは聞くんだな?」
「ああ。 ……ガリュウ、その場で回れ」
「クルゥ」
門番の男にちゃんと言うことを聞くことを示すべく、クリスタはガリュウをその場で回らせたり、腕に留まらせたりして見せた。
ガリュウも言われた通りに動き、理知的な目を門番の男の方に向けた。
「うむ、問題無さそうだな。 にしても、ワイバーンの子供の従魔など珍しい。 育ったらとても心強い従魔になるだろうな」
どうやらガリュウのことをワイバーンの子供だと門番の男は思っているようだが、真実はまるで異なり、ワイバーンなんかより遥かに強いドラゴンではある。
ただ、わざわざ訂正することでも無いし、ドラゴンと言ったらいくら言うことを聞くとはいえ危険視されるかもしれないので、ありがたくワイバーンの子供という設定を今後も使わせてもらうことにした。
そんな一悶着もあったが、ひとまず街には入れてもらえたので、カスミ達はこの街の冒険者ギルドに向かった。
そこではマリンの知り合いの職員がいたので、早速ガリュウを従魔登録し、足に着ける輪っか型の装身具を貰い、ガリュウにしっかり着けてもらった。
どうやらこの装身具にはサイズを自動調節する機能があるようで、ガリュウの足に通して魔力を込めると、締め付けたりはしないちょうど良い大きさになってくれた。
ちなみに、冒険者達のほとんどがクリスタ達の容姿を見て、Sランクパーティーのビフレストだと気付いていた。
当然そうなるとかなりの視線を向けられる訳だが、それは憧れによるものがほとんどで、下卑た視線を向けてくる者はほとんどいなかった。
いてもそういうのに敏感なアネッタがギロリと鋭い目線を送ると、そういう視線を向けた者達はビクッと体を震わせ、そそくさと冒険者ギルドから出ていった。
「よし、次は宿探しだな」
「あっ、でしたら、おすすめの宿がありますよ」
ガリュウの従魔登録も済ませたので、次は宿を探すことになったのだが、マリンがおすすめの宿があるということで、マリンの案内について行った。
「こちらですね」
そうして辿り着いたのは、海がすぐそこにある建物で、その奥には海の上に浮かぶログハウスのようなものがいくつも建っていた。
「海に浮かぶペンションというのを売りにしている宿です。 ああして建物が分かれているので、プライベートな空間が守られますし、キッチンなどもあるので自分で料理ができますよ」
「それは良いな。 カスミ、ここでいいか?」
「はいっ。 とっても良いと思いますっ」
カスミから見てもとても素敵な宿に思ったので、今回はここで寝泊まりをすることに決まった。
早速受付のある一番手前の建物に入り、とりあえず一週間は確実に滞在するので、一週間分の料金を払ってチェックインした。
それから鍵をもらって、海の上にある廊下を渡り、当てがわれた二階建てのログハウスに入ると、中はかなり広々とした作りになっていて、カスミ達全員でも余裕を持って過ごせそうだった。
しかも、一階にあるテラスから海にそのまま出て泳いだりもできるようだった。
そのテラスはそこそこスペースもあり、カスミとしてはバーベキューなんかもできそうだなと思ったり。
とりあえず素敵な宿であることは間違いないので、紹介してくれたマリンに礼を言い、その流れでカスミはマリンとレネ、ガリュウと一緒にこの街の市場に向かうことにした。
「カスミちゃん、元気だねー」
「美味しい海鮮が欲しいのでっ」
やはり海鮮は新鮮さが命だとカスミは思っているので、その新鮮な海鮮が目の前にあると思うと、居てもたっても居られなかったのだ。
ただ、マリン曰く本当に獲れたてのものは港のすぐ近くにある朝市で売られるらしく、この時間は売れ残りや店の水槽で生かしておいたものしかないとのこと。
それでもサミアンの街で買うよりは断然ものは良いはずなので、今日のところはサミアンの街でも手に入る無難どころの海鮮を買い、明日の朝市で真にものがいいものを買うことにした。
「ここがこの街の市場です。 あそこにデラフト商会もありますね」
それからのんびりと街の風景を見ながら歩いていると、宿から割とすぐの位置にこの街の市場があった。
その近くにはデラフト商会の建物もあり、滞在中に何か欲しくなったらここに来ればなんでも揃いそうだった。
「クルゥー」
そんな市場に足を踏み入れると、レネに抱っこされているガリュウがキョロキョロと周りを忙しなく視線を飛ばして楽しそうにしていた。
「ふふ、ガリュウさん、色んなものに興味津々ですね」
「まぁ、ガリュウからしたら見るもの全てが新鮮だろうからねー。 人間と同じ目線に立つのも初めてだろうし」
元々は頭から尻尾の先まで測ったら50m前後はあるガリュウなので、人間の暮らしというのはどこを切り取っても新鮮なものに見えるようだ。
「ガリュウさんともご飯一緒に食べられますね」
「クル!」
「良かったねガリュウー! カスミちゃんのご飯は美味しいよー!」
「クルゥ♪」
いかにも楽しみそうな感じで尻尾をブンブン振るガリュウに微笑ましい気持ちになりつつ、カスミは品揃えが良さそうな魚屋にやって来た。
「わぁ、どれも新鮮ですね……!」
そこに並ぶ魚は、サミアンの街で買うものとは全然ものが違く、瞳は輝いているし、よく肥えたものばかりだった。
「あっ、貝もこんなにっ」
その中でもカスミが気になったのは、水槽で生きた状態で売られている色んな種類の貝。
サザエに牡蠣にアワビ、アサリにハマグリといった、カスミからしても馴染み深い貝から、この世界特有の貝も色々ある。
「これとこれと、あとこれと…… これもくださいっ」
そんな貝達は数日以内に獲れたものを水槽で生かしているらしく、新鮮そのものなので、カスミはそれらを満遍なく購入した。
その後も、鰹節や海苔といった加工品も売っていたので購入し、忘れずに野菜と肉も購入していく。
いくら海沿いの街とはいえ、ずっと海鮮ばかり食べるのは流石に飽きがくるので、肉を使った料理もカスミはちゃんと作るつもりだ。
そんな買い物をしていたら、いつの間にか空が茜がかってきたので、買い物に付き合ってくれたマリンは実家で寝泊まりするということで市場の前で別れ、カスミ達はちょっと遠回りをして街並みを眺めながら宿へと帰るのであった。
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