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#79 発売前日

 教国に赴いていたカスミは、一旦サミアンの街へと帰ってきていた。


 招いたイセトや教皇フォルネン、大聖女マリーエルはもっとカスミに教国に居てほしいと思っていたようだが、あんまり長いこと宿のスイートルームを独占するのも申し訳ないし、元々短期滞在の予定だったので、今回は日程通り帰ってきた。


 ただ、教国はとても綺麗で良い場所だったので、またそう遠くないうちに行くつもりだ。


 ちなみに、帰る間際にイセトには挨拶に行ったのだが、今度はすぐに連絡が取れるよう、レターポータルを渡された。


 マリーエルに引き続き2個目のレターポータルだが、今回のレターポータルはそこまで頻繁に使うことは無いだろう。


 ちなみにマリーエルとはあれから何度か手紙のやり取りをしており、お互いの近況だったり次会う時の計画を立てたりと、中々に微笑ましい手紙のやり取りが行われている。


 そんなこんなで教国から帰ってきて数日経ったある日のこと。


 カスミはサミアンの街の商業ギルドにクリスタとやってきていた。


 それから以前と同様、関係者しか入らない秘密の商談ルームに足を運ぶと、今回もデラフト商会長のシクウと、サミアンの街の商業ギルド長であるジリアムがいた。



「お久しぶりです、カスミ様」


「お久しぶりです、ジリアムさん。 王都の拠点の件ではお世話になりました」



 以前王都に滞在した際に用意されていた物件は、ジリアムが話を通しておいてくれたものだったので、カスミはそれに対してお礼を言った。



「お気に召していただけたのなら良かったです」



 それを受けたジリアムは、にこやかに笑いながらカスミ達を椅子に座るよう促した。



「さて、本日お呼びしたのは、カスミさんが携わった商品の発売が明日に迫っており、それの最終調整をするためです」



 カスミ達が椅子に座ると、早速シクウが今日の本題を切り出した。



「とは言っても、既に準備は万端と言って差し支えありません。 カスミさんは何か気になることなどございますか?」


「うーん…… あ、結局値段はどうなりました?」


「値段はほとんどカスミさんの希望価格に近い数値にしております」



 シクウはそう言うと、今回販売する商品の値段が書かれた紙をカスミに見せてきた。


 カスミがそれを確認すると、調味料系統はカスミの前世で売られていた値段とほぼ同じくらいで、レシピは一枚100ゴルドで売り、まとめて買うと少し安くなるといった手法で売るそうだ。



「うん、いい値段だと思います」


「原材料費や輸送費などを差し引いても十分利益が出せる価格設定かと。 正直、3倍くらいの値段にしても飛ぶように売れると思いますが」



 シクウ的には3倍とまではいかずとも、もう少し高い値段で売ろうかと思っていたようだが、元の価値を知っているカスミはあんまりそういうことはしたくなかったので、ある程度利益は出せつつ、平民でも気軽に手の届く値段設定にしてもらった。



「あとは特に私から言うことは無いですかね」


「分かりました。 ジリアム殿は何かありますか?」


「こうして欲しいなどの希望はございません。 ただ、報告を少し。 実は数日前から、カスミ様の調味料を使った料理を試食できるコーナーをギルドの一角に作りまして、それがまあ反響を呼んでおります」



 物を売るとなった際、当日にいきなり新商品を売っても、客は中々手を伸ばしてくれないので、事前にもうすぐこんな商品が出るよという宣伝活動をジリアムは行ってくれていたそうだ。



「噂で広まったのか、昨日の試食コーナーは行列ができてしまうくらい人気がありましたね」


「そんなにですかっ」


「はい。 もちろん、明日発売ということも宣伝して回っていますので、恐らく明日はかなりのお客様が殺到することが予想されます」


「そうなると、少し対策を考えなければいけませんね」


「それなら、個数制限を設けるのはどうですか?」



 客が集まりすぎた時の対策を考え始めたジリアムとシクウに、カスミはそう提案をした。



「個数制限を設ければ、在庫数と相談して何人まで売れるか大体予想が付きますし、もし人が集まり過ぎて売る分が無くなったら、ここまでの人にしか売れませんって言えます。 まぁ、買えなくて文句は多少出ちゃうかもしれませんけど、待たせた挙句買えないといったことは防げます」


「確かにそれは良いアイデアですね。 何個くらいが良いでしょうか?」


「調味料は二個くらいで良いと思います。 一家庭だったら一度に大量に使ったりしなければ一個で結構保ちますし」


「転売対策にもなりそうですね」


(あ、こっちの世界にも転売問題ってあるんだ……)



 ジリアムから出た転売という言葉に、世界を跨いでも転売は問題視されてるんだなとカスミはちょっと遠い目になった。


 その後もちょこちょこ細かいところの擦り合わせを行い、それを話し終える頃には2時間ほどが経過していた。



「おや、もうこんな時間ですか。 それでは今日はこの辺りで解散としましょう」


「はい。 ありがとうございましたっ」


「カスミ、アレのことはいいのか?」



 そうして、そろそろ解散しようとなったタイミングで、クリスタがカスミにそう聞いてきた。



「アレ? ……あー、トランプとかのことですか?」


「そうだ。 シクウと次会ったら話そうと言っていなかったか?」


「おや、また何か新しい商売のネタですか?」



 商人としての勘か、何か新しい商売のネタの雰囲気を感じ取ったシクウが、ワクワクした様子でカスミの方を見てきた。



「う、うーん、でも、シクウさん忙しそうですし、とりあえず調味料やレシピの販売が少し落ち着いたらにした方がいいかなって……」


「確かに、明日以降は凄まじく忙しくなる予想はしていますね」


「なら、それが落ち着いたらにしましょうっ」


「まぁ、確かにトランプとかが加わったら、シクウの負担は倍増するだろうからな」


「ほう、つまり、調味料やレシピ並に売れるものだと?」



 クリスタの言葉にシクウは興味深そうにそう返した。



「まぁ、確実に売れるな」


「それは楽しみですね。 頑張って負担を減らせるよう働きませんと」



 負担を減らすためにさらに頑張るという、半ば本末転倒なことを言うシクウだったが、その表情はとても明るく、心配よりも呆れが勝ったカスミは苦笑いを浮かべるのであった。

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