#44 思ったより大事に
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ディケルトの尊大な物言いに対して、カスミは毅然とした態度での対応を続けていた。
「ね、姉様は関係ないだろ!?」
「いえ、そういうわけにはいきません。 ディケルト王子殿下の行いで、私は王族全体の信頼を失いました。 ですので、昨日出させてもらったような私の作った料理は、2度と食べられません」
「あ、あれがもう食えない……?」
「ディケルト殿下だけでなく、喜んでくださっていた国王陛下、第一、第二王妃殿下、ディケルト殿下以外の王子王女殿下もです」
「み、皆んな……?」
「はい、そうです」
「そ、そんなことになったら、怒られる……!」
「そうでしょうねぇ。 ディケルト殿下が、私が嫌がることをしたせいで、色んな人が悲しい思いをします」
カスミはディケルトからわざと目を逸らしながら、そんな風に口にする。
それをされているディケルトは目に見えて焦り出したが、逆に周りで話を聞いていた大人達は、カスミの思惑に少しずつ気付き始めていた。
「じ、じゃあ、さっきのは無しだ!」
「無し? つまり、王族ともあろう方が、嘘をついたということでしょうか」
「うぐっ……!」
「それに、無しにするなんてのは当たり前です。 私は拒んだのですから」
「ぐぬぬ……!」
「無しにしたところで、嘘をつくような方が王族にいるのなら、結局信用はできませんね」
「じ、じゃあ、どうすればいいんだよぉ……!」
そんな風に畳み掛けるようにカスミが厳しい言葉をディケルトにぶつけていると、ディケルトはついに涙目になってしまう。
(ちょっと言いすぎたかな)
「……では、謝りましょう」
そんなディケルトを見たカスミは、軽くため息を吐きながらそう口にした。
「謝る……?」
「悪いことをしたら謝る。 これは王族だろうが平民だろうが関係ない、人として当たり前のことです。 流石のディケルト殿下でも、それくらいはできますよね?」
「お、王族が、平民に謝る……?」
「……王族は平民から頂いたお金で暮らしているんですよ?」
良くない選民思考を口にしたディケルトに、流石のカスミもちょっと鋭い目を向けながらそう言う。
「そ、それは……」
「王族の皆さんは、平民を様々なことから守る。 その代わりに平民は王族や貴族の方々が暮らせるお金を払う。 そういう関係なんです」
「む、難しい……」
「そこはこれからちゃんと勉強しましょう。 ……ただ、今のディケルト殿下のような方に、果たして平民はお金をあげたくなるでしょうか」
「……っ」
「横暴な態度で他人を家来にしようとし、それを断られたら罰しようとし、挙げ句の果てには平民を見下すようなことまで。 ……もう一度言いますが、国は民がいないとだめなんです。 ディケルト殿下が良い服を着て、美味しいご飯を食べられるのも、平民の皆さんが日々働いてくれているおかげです」
「……考えたこと、なかった」
「自分が悪いことをしたって、少しは思えましたか?」
「……うん」
「じゃあ、謝りましょう」
「……ごめん、なさい」
「何に対して?」
「……カスミに、家来になれとか、平民だからとか言って」
ディケルトはそう言いながら、少し頭を下げるような素振りを見せた。
カスミは内心では「もっと頭下げんかい!」と思わなくもなかったが、恐らくディケルトはこうして謝るのも初めてなんだろうなと推測し、この辺りで許してあげることにした。
「分かりました。 謝罪は受け取ります」
「ゆ、許してくれるのか……?」
「はい。 ミーユイア王女殿下の誕生日パーティーの担当も、王族の皆さんの食事メニューの考案も続けます。 ……ただ、2度目はありませんよ」
「わ、分かった……!」
カスミが笑顔でそう圧をかけると、ディケルトはコクコクと首を縦に振って了承した。
「じ、じゃあ、俺はこれで……」
「カスミ様はまだいらっしゃりますか!?」
謝罪もし、話も一区切りついたので、ディケルトはいそいそと厨房から退散しようとした。
が、急いで来たのか、少し息を切らせながら血相を変えた第一王妃のアリレインが厨房に入ってきた。
その後ろには王城の料理人の一人がおり、どうやらカスミとディケルトが話している間に、ディケルトをなんとかしてくれそうなアリレインに報告しに行ったようだ。
「ああ良かった、まだいらっしゃいましたか…… カスミ様、申し訳ありません」
そして、アリレインはなんの躊躇いもなく厨房の床に膝をつき、何を聞くまでもなくカスミに頭を下げてきた。
厨房の床はかなり綺麗に掃除はされているものの、先程料理をしたのもあって少し湿ったりしており、そんな床に綺麗なドレスを巻き込みながら膝をつくアリレインに、カスミは慌てて駆け寄った。
「ああ、アリレイン様っ。 そんな、ドレスが汚れてしまいますからっ……」
「こんなドレスなど、どうでもいいです。 カスミ様の怒りがこの程度で収まるのなら」
「お、怒ってないですからっ。 立ってくださいっ……」
カスミが慌ててそう言うと、アリレインは申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、ゆっくりと立ち上がった。
「か、義母様……」
いつもは気高く、王族として完璧に執務をこなす義母が何の躊躇いもなくカスミに頭を下げた光景を見て、ディケルトは自分がしでかした事の大きさにようやく気が付き始めた。
「その、義母さ……」
「黙りなさい」
「……っ!」
「お前を全力で叩きたい気持ちをなんとか抑えているのです。 何も発さず、そこにいなさい」
厳しいながらも、優しいところは優しい義母の自分に対する本気の怒りがもこもった言葉を受け、ディケルトはもう何も言えなくなってしまう。
「カスミ様、重ね重ね申し訳ありません。 罰なら如何様にも受けますので、どうか我が国への支援だけは続けてくださいますと……」
「も、もちろんですっ。 先程ディケルト様にもお伝えしましたが、本人からの謝罪もしてもらいましたので、ミーユイア様の誕生日パーティーの担当も、その他のことも引き続き協力させていただきます」
「カスミ様の寛大な御心に感謝致します。 ですが、今回の失礼は本来、首が飛んでもおかしくないレベルです」
「……!?」
アリレインの後ろで身を縮めているディケルトは、その言葉に体をビクッと跳ねさせた。
「わ、私は気にしてませんから……」
「カスミ様のその優しさには感謝致しますが、王族としてそれに甘える訳にはいかないのです。 カスミ様がもしお怒りになって、我が国への支援を打ち切ったら、損害は計り知れません。 ……ですよね、シクウ様?」
そういった商売勘定に詳しいシクウに、アリレインは話を振った。
「そうですね。 カスミ様の調味料や、料理のレシピ、特に甘味の価値を考慮すると、一年で星金貨100枚は確実に利益が出せると思います」
星金貨というのは、王族や商人がとてつもなく大きい取引に使う金貨の単位で、1枚で日本円にして1億円の価値がある。
つまり星金貨というのは、日本円にして100億円であり、シクウはカスミの携わる事業であれば、わずか一年でそれ程の利益が最低でも出ると確信していた。
「ディケルト。 お前は一年で星金貨100枚を生み出せますか?」
「そ、そんなの、無理……」
「でしょうね。 ですから、カスミ様の怒りを収めるために、お前の首は簡単に差し出されてもおかしくないのです」
「お、王族、なのに……?」
「王族なんて、そんなものです。 責任を取るために、首を飛ばすなんてことは、ザラにあります。 ……それに、もしお前がそうなったら、きっとシャラが身代わりになります」
「か、母様が……!?」
「シャラはお前を愛していますからね。 お前が死ぬとなったら、身代わり、もしくは共に死ぬと言い出すでしょう」
「お、俺のせいで……?」
「そう。 お前の仕出かしは、王族全体に責任が降りかかる。 まだその首が繋がっていることを、カスミ様に感謝をしなさい」
アリレインが鋭い目線を向けながらそう言うと、ディケルトは呆然とした様子でその場に立ち尽くした。
「あ、あの、アリレイン様。 私は本当に気にしていないので、あまり厳しくはしないであげてください……」
一応ディケルトに聞こえないようにカスミが小声でそう伝えると、アリレインは苦笑いを浮かべながら少し屈んでカスミの手を取った。
「カスミ様は本当にお優しいですね…… ですが、これを機に厳しく礼儀を教えませんと、またこういったことが起きかねません」
「そう、ですか……」
「カスミ様は、もし良ければ今後のディケルトの成長を見守っていてください」
「……分かりました」
「では、私達はこれで。 ムッダ、改めて起きたことを聞きたいから、着いてきなさい」
「承知しました。 ……カスミ殿、本日はありがとうございました。 またご指導の程、よろしくお願いいたします」
ムッダはカスミにそう手短に礼を伝えてきた。
「もちろんです」
カスミもそれに対して笑顔で答え、悪い感情は持ってないことを示した。
「ディケルトも、いきますわよ」
「うん……」
「うん、じゃなくてはい、です」
「は、はい……」
それからアリレインはディケルトを連れ、ムッダと共に厨房を後にした。
その流れで今日はこれで解散となり、残った料理はアネッタが全部あっという間に平らげてくれたので、カスミも王城の料理人達とシクウに挨拶をして、王城を後にするので合った。
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