#156 カスミの初依頼①
「えっ、お金かかるんですか?」
「あー、一応な」
ある日のこと。
カスミがリビングでのんびりしていると、クリスタが外出すると言い出し、なんとなくどこへ行くのかを聞いたところ、冒険者ギルドに行くと告げられた。
それ自体はなんの違和感もないが、依頼を受けるのかとカスミが聞いたところ、どうやら違うらしかった。
じゃあなんなんだろうとカスミが首を傾げると、気まずそうにしながらクリスタはカスミのギルドカードの更新料を払いに行くと教えてくれた。
「皆さん更新料とか払ってるんですか?」
「いや、依頼を半年以内に一件でも受けてれば発生しないよ」
「なるほど……」
カスミは身分証代わりになるので、冒険者ギルドに登録してギルドカードを受け取っているが、どうやら依頼を受けないと半年に一回更新料を払わないといけないらしい。
「私が払いますよっ」
「そう言うだろうから黙って行こうとしてんだが……」
「私のギルドカードですから当たり前ですっ。 ……でも、毎回更新料を払うのはちょっと損してる気分になりますね」
別にカスミは金銭には困ってない…… むしろ有り余ってるくらいなのだが、他の冒険者はほとんど払ってない更新料を払うのは、なんだかモヤっとした気分になってきた。
「何か一つでも依頼受ければいいんですよね?」
「そうだが…… だ、だめだぞカスミっ。 お前を危険な目に遭わせる訳には……」
「もちろん、魔物と戦ったりはしないです。 でも、冒険者の依頼って、子供でもできる簡単なものもあるって聞きましたよ」
「む…… まぁ、失せ物探しとか、家の掃除とかはあるな」
「じゃあ、私でもできそうなものを一つやらせてください」
「……まぁ、そうだな。 街の中の依頼なら良いだろう」
過保護なクリスタは、そもそも粗野な者も多くいる冒険者ギルドにカスミを近寄らせたく無いのだが、カスミの挑戦したいという気持ちを抑え込みたくは無いので、街の中の安全な依頼なら良いと言ってくれた。
なので、早速カスミは出かける準備をして、クリスタとガリュウと共に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの建物の前を通ることは多々あるが、何気に中に入るのはこの世界に来て間もない時に冒険者登録をした時以来で、中に入ると、ワイバーンの子供と思われているガリュウと、小さくて可愛らしいカスミは非常に目線を集めた。
ただ、傍にいるクリスタの姿や、この街に住む者ならワイバーンの子供を連れている少女について見たり聞いたりしたことがある者が大半なおかげで、そこまで注目されることもなかった。
「カスミ、クエストはここから受けるんだ」
そんなカスミは、クリスタに案内される形で依頼が貼ってある掲示板の前にやってきていた。
そこには手書きの依頼が沢山画鋲で留められており、難易度別に何個かの掲示板に分けられていた。
「カスミが受けられそうなのは、この辺だな」
そう言ってクリスタが示した掲示板には、薬草採取、失せ物探し、家や公共施設の掃除など、誰でもできそうな依頼が貼られていた。
「うーん、どれがいいですかね」
「薬草採取は魔物に出くわす可能性も0じゃないからやめておこう。 公共施設の掃除は報酬は良いがかなり広いから、時間がかかるな」
「となると…… これとかどうでしょう?」
カスミがそう言って背伸びしながら指さしたのは、魔道具店の居住スペースの掃除という依頼だった。
「店と一体化になってる居住スペースなら、そんなに広くないですよね」
「そうだな。 ただ…… こいつか……」
依頼書には依頼主の名前も書いてあるのだが、クリスタはその名前を見て苦笑いを浮かべた。
「知り合いの方の依頼ですか?」
「私は何度か話したことあるくらいだな。 まぁ、ちょっと変なところもあるが…… 害はないからいいだろう」
なにやら煮え切らない様子のクリスタだったが、他に手頃な依頼も無さそうだったので、今回はその依頼を受けることにした。
依頼を受けるには依頼書を受付まで持っていって受理してもらう必要があるので、背が若干足りないカスミの代わりにクリスタが掲示板からその依頼の紙をベリっと剥がし、カスミに渡してくれた。
「あら、クリスタさんに、カスミちゃんじゃないですか」
そんな依頼の紙を受付に持っていくと、そこには以前一緒にハンソンの街へ行った、ギルド職員のマリンがいた。
「こんにちは、マリンさん」
「こんにちは。 冒険者ギルドに来るなんて、珍しいですね」
「ギルドカードの更新料のために、依頼を受けようと思いまして」
「ああ、なるほど」
「これ、受ける依頼です」
そうしてカスミがマリンに依頼書を渡すと、マリンはサクッとそれを受理してくれた。
「はい、これで受理できました。 そうしたら、この依頼書も持って行って、依頼が完了したら依頼主からサインをもらってください。 それで依頼達成となります」
「分かりました」
「では、頑張ってくださいね!」
「はいっ」
笑顔で応援してくれるマリンに元気よくカスミも返事を返しつつ、初依頼を達成すべく依頼主のいる場所へ向かうのであった。
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