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表現する理由はバランスの中に見える

気が付くと多量の本がある部屋にいた。

法律書…。

難しそうで分厚い本が壁を埋め尽くす。


中央には机があり

髪を後ろに撫でつけ

口ひげを蓄えた

スーツ姿の男がいた。

襟元には金色に輝くバッチがある。

そして壁には大きく天秤の刺繍が入った壁掛けがかかっていた。


おそらく男は弁護士だろう。


彼は僕を見るなり

こう切り出した。


「君の存在意義。君が書く理由。今回の焦点はそこだね」


僕は思わず

「はい」

と答えた。



その眼光はするどく…

いかなる嘘や虚飾も見破るような圧力があった。


「まず…。

作家の存在意義はいくつかある。

・救済

・記録

・使命

・冨

・名誉

などだ」


僕はなるほどという顔でうなずいた。


「ここで多くの者は…

ひっかかる。

それはすなわち

理由は一つではないといけないのでは

ないかという固定観念だ」


僕は息をのむ。


「私は弁護士だが

たとえばなんかの事故や事件にしても

一つの理由だけが問題であることは希で

逆に複数の事象が絡み合って

形成されていることが多いのだ」


つまり…。

緊張で額に汗が流れる。


「君の存在意義も。救済や記録、使命などの複数の事象がパラメータの

ように絡み合い、構成される。

そういうことがあるから、なにかこれ一つだとは言い切れないのだよ」


僕はしばし下を向き、考え込んでいた。

なるほど…

なにか一つの理由だと考えれば

それぞれが薄い

しかし

薄い理由も

集まれば

それなりの理由になるのか…。


「質問があります。

・救済

・記録

・使命

・冨

・名誉

と言われました。冨と名誉はわかるのですが、救済。記録、使命

というのがわかるようなわからないような…」


「いいだろう。質問するのは賢明だ。

まず救済についてだが

これは物語を見た人の気持ちを和らげたり、幸せな気持ちにする。

また知識をもって相手の悩みを解消したり、あとは自分自身を救うのも

救済だ」


なるほど…自分自身を救うのも救済なのか…


「次に記録は…

まー日記だったりとか

観察ルポなど…

そういうログ形式のものだな。

感情の記録というのもありうる」


「最後の使命は

ノブレス・オブリージュ

これは本来の意味は

”高貴なる者には義務がある”

だが…

作家に置き換えると

”想像する力を持ってしまった者には、それを使い、世に還元する義務がある”

という事になる」


「世に還元する義務…」


「そうだ。

たとえば軍師の力を持ったものがいたとする。

国が危機の時

その軍師の力を活かさなかったとしたら

それは罪だと言われても仕方ないのではないか?」


「たしかに…究極はそうかもしれませんね。

しかし

創作ですよ」


「よくよく考えてみたまえ

創作がなければ

君はここに存在しないではないか。

私も

このペンも

この机も

この法律書も

全ては創作・創造がなければ存在しないのだ。

君には与えられた力を使う責任があるのだよ」


「そっか…」


「ただ逆説的にいえば、存在意義―

そんなものは気にするな――

ただ吐き出す為に書けばいい―

表現とは所詮は美しき排泄物なのだから」


そういうと

また漆黒に包まれた。


美しき排泄物という言葉が

やけにひっかかった―――



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